天皇てんのう陛下へいか「国民こくみんに感謝かんしゃ」85歳さいの誕生たんじょう日びで天皇てんのうとして最後さいごの会見かいけん

この中なかで天皇てんのう陛下へいかは、象徴しょうちょうとして歩あゆんだ歳月さいげつや退位たいいまでの残のこされた日々ひびについて「即位そくい以来いらい、日本にっぽん国こく憲法けんぽうの下したで象徴しょうちょうと位置いちづけられた天皇てんのうの望のぞましい在り方ありかたを求もとめながらその務つとめを行おこない、今日きょうまでを過すごしてきました。譲位じょういの日ひを迎むかえるまで、引き続ひきつづきその在り方ありかたを求もとめながら、日々ひびの務つとめを行おこなっていきたいと思おもいます」と述のべられました。

続つづいて、戦後せんごの日本にっぽんを振り返ふりかえる中なかで沖縄おきなわの戦争せんそうや苦難くなんの歴史れきしに触ふれ「沖縄おきなわの人々ひとびとが耐たえ続つづけた犠牲ぎせいに心こころを寄よせていくとの私わたしどもの思おもいは、これからも変かわることはありません」と話はなされました。

そして、時折ときおり声ごえを震ふるわせながら「先さきの大戦たいせんで多おおくの人命じんめいが失うしなわれ、また、我が国わがくにの戦後せんごの平和へいわと繁栄はんえいが、このような多おおくの犠牲ぎせいと国民こくみんのたゆみない努力どりょくによって築きずかれたものであることを忘わすれず、戦後せんご生うまれの人々ひとびとにもこのことを正ただしく伝つたえていくことが大切たいせつであると思おもってきました。平成へいせいが戦争せんそうのない時代じだいとして終おわろうとしていることに、心こころから安堵あんどしています」と述のべられました。

続つづいて、天皇てんのう陛下へいかは、阪神はんしん・淡路あわじ大震災だいしんさいや東日本ひがしにっぽん大震災だいしんさいなど平成へいせいに起おきた数すう多おおくの災害さいがいを挙あげ「多おおくの人命じんめいが失うしなわれ、数かず知しれぬ人々ひとびとが被害ひがいを受うけたことに言葉ことばに尽つくせぬ悲かなしみを覚おぼえます。ただ、その中なかで、人々ひとびとの間まにボランティア活動かつどうを始はじめ様々さまざまな助け合たすけあいの気持きもちが育はぐくまれ、防災ぼうさいに対にたいする意識いしきと対応たいおうが高たかまってきたことには勇気ゆうき付つけられます」と話はなされました。

会見かいけんの終盤しゅうばん、天皇てんのう陛下へいかは、来年らいねん４月しがつで結婚けっこんして60年ねんになる皇后こうごうさまについて「結婚けっこん以来いらい、常つねに私わたしと歩あゆみを共ともにし、私わたしの考かんがえを理解りかいし、私わたしの立場たちばと務つとめを支ささえてきてくれました」と思おもいを述のべられました。

そして、ひときわ声こえを震ふるわせながら「天皇てんのうとしての旅たびを終おえようとしている今いま、私わたしはこれまで、象徴しょうちょうとしての私わたしの立場たちばを受け入うけいれ、私わたしを支ささえ続つづけてくれた多おおくの国民こくみんに衷心ちゅうしんより感謝かんしゃするとともに、自みずからも国民こくみんの一いち人にんであった皇后こうごうが、私わたしの人生じんせいの旅たびに加くわわり、60年ねんという長ながい年月としつき、皇室こうしつと国民こくみんの双方そうほうへの献身けんしんを、真心まごころを持もって果はたしてきたことを、心こころから労ねぎらいたく思おもいます」と述のべられました。

天皇てんのう陛下へいかは、最後さいごに、来年らいねんの春はる、新あたらしい時代じだいが始はじまるとしたうえで「天皇てんのうとなる皇太子こうたいしとそれを支ささえる秋篠宮あきしののみやは共ともに多おおくの経験けいけんを積み重つみかさねてきており、皇室こうしつの伝統でんとうを引き継ひきつぎながら、日々ひび変かわりゆく社会しゃかいに応おうじつつ道みちを歩あゆんでいくことと思おもいます」と話はなされました。

皇居こうきょでは、23日にち、さまざまな祝賀しゅくが行事ぎょうじとともに一般いっぱん参賀さんがが行おこなわれ、天皇てんのう陛下へいかは、皇族こうぞく方かたとともに、午前ごぜん中ちゅう３さん回かい、宮殿きゅうでんのベランダに立たちお祝おいわいを受うけられます。

声こえを震ふるわせ思おもいを語かたる

今回こんかいの記者きしゃ会見かいけんは、天皇てんのう陛下へいかの思おもいがこれまでにないほど強つよく表あらわれたものとなりました。天皇てんのう陛下へいかは誕生たんじょう日びを前まえにした今月こんげつ20日にち、皇居こうきょ・宮殿きゅうでんの一室いっしつで会見かいけんに臨のぞまれました。

記者きしゃの代表だいひょうから退位たいいを前まえにした心境しんきょうや、国民こくみんに伝つたえたいことを尋たずねられた天皇てんのう陛下へいか。象徴しょうちょうの務つとめとして大切たいせつにしてきた事柄ことがらを１ひとつずつ取り上とりあげ、話題わだいが沖縄おきなわの苦難くなんの歴史れきしや先さきの大戦たいせんによる犠牲ぎせい者しゃに及およぶと、声こえを震ふるわせながら思おもいを語かたられました。

天皇てんのう陛下へいかは、戦後せんごの平和へいわと繁栄はんえいが多おおくの犠牲ぎせいと国民こくみんの努力どりょくによって築きずかれてきたことを正ただしく伝つたえていくことが大切たいせつだとする部分ぶぶんでは、「正まさしく」ということばを強つよく述のべられました。

会見かいけんの終盤しゅうばん、国民こくみんへの感謝かんしゃや、ともに歩あゆんできた皇后こうごうさまをねぎらう気持きもちを語かたる時ときには、込み上こみあげる思おもいにひときわ声こえを震ふるわせられました。

これについて、両りょう陛下へいかの側近そっきんの１いち人にんは「その時々ときどきのさまざまな出来事できごとが脳裏のうりに去来きょらいし、感じ取かんじとられたものを踏ふまえて、心こころを込こめてお気持きもちを話はなされたのだと思おもう。国民こくみんに伝つたえるべきことを余あますことなく伝つたえられた会見かいけんだったと思おもう」と話はなしています。

天皇てんのう陛下へいかの歩あゆみ

昭和しょうわ天皇てんのうの長男ちょうなんで、皇太子こうたいしとして生うまれた天皇てんのう陛下へいかは、戦争せんそうが続つづく中なかで子こどもの時期じきを過すごし、11歳さいで終戦しゅうせんを迎むかえられました。

戦後せんごの復興ふっこう期きに青春せいしゅん時代じだいを送おくり、大学だいがく生活せいかつを終おえた翌年よくねん、軽井沢かるいざわのテニスコートで皇后こうごう・美智子みちこさまと出会であい、25歳さいで結婚けっこんされました。一般いっぱんの家庭かていからお妃ひが選えらばれたのは初はじめてで、祝賀しゅくがパレードに50万まん人にんを超こえる人ひとたちが詰つめかけるなど、多おおくの国民こくみんから祝福しゅくふくを受うけられました。皇后こうごうさまと国内こくない外がいで公務こうむに励はげむとともに、３さん人にんのお子おこさまを手元てもとで育そだて、新あらたな皇室こうしつ像ぞうを示しめされました。

昭和しょうわ天皇てんのうの崩御ほうぎょに伴ともない、55歳さいで、今いまの憲法けんぽうのもと、初はじめて「象徴しょうちょう天皇てんのう」として即位そくいされました。

天皇てんのう陛下へいかは、翌年よくねんの記者きしゃ会見かいけんで「日本にっぽん国こくの象徴しょうちょうであり、日本にっぽん国民こくみん統合とうごうの象徴しょうちょうとして現代げんだいにふさわしく天皇てんのうの務つとめを果はたしていきたいと思おもっています」と述のべられました。

天皇てんのう陛下へいかは、皇后こうごうさまとともに一貫いっかんして戦争せんそうの歴史れきしと向き合むきあわれてきました。戦後せんご50年ねんを迎むかえた平成へいせい７なな年ねんには、「慰霊いれいの旅たび」に出でかけ、被爆ひばく地ち広島ひろしまと長崎ながさき、そして沖縄おきなわを訪たずねられました。先さきの大戦たいせんで激はげしい地上ちじょう戦せんが行おこなわれ20万まん人にん以上いじょうが犠牲ぎせいになった沖縄おきなわへの訪問ほうもんは、合あわせて11回かいに及およびます。

戦後せんご60年ねんには、太平洋たいへいようの激戦げきせん地ちサイパンを訪問ほうもんされました。天皇てんのう陛下へいかの強つよい希望きぼうで実現じつげんした異例いれいの外国がいこく訪問ほうもんでした。そして戦後せんご70年ねんには、悲願ひがんだったパラオのペリリュー島とうでの慰霊いれいも果はたされました。

天皇てんのう陛下へいかは毎年まいとし、８月はちがつ15日にちの終戦しゅうせんの日ひに「全国ぜんこく戦没せんぼつ者しゃ追悼ついとう式しき」に臨のぞみ、戦争せんそうが再ふたたび繰り返くりかえされないよう願ねがうおことばを述のべられてきました。

天皇てんのう陛下へいかは、また、皇后こうごうさまとともに全国ぜんこく各地かくちの福祉ふくし施設しせつを訪おとずれるなどして、社会しゃかいで弱よわい立場たちばにある人ひとたちを思おもいやられてきました。障害しょうがい者しゃスポーツにも強つよい関心かんしんを持もち、「全国ぜんこく身体しんたい障害しょうがい者しゃスポーツ大会たいかい」が開ひらかれるきっかけを作つくるとともに、平成へいせいに入はいって皇太子こうたいしご夫妻ふさいに引き継ひきつぐまで、大会たいかいに足あしを運はこんで選手せんしゅらを励はげまされました。

大おおきな災害さいがいが相次あいついだ平成へいせいの時代じだい。両りょう陛下へいかは被災ひさい地ちに心こころを寄よせ続つづけられました。始はじまりは平成へいせい３さん年ねん。雲仙うんぜん普賢岳ふげんだけの噴火ふんか災害さいがいで43人にんが犠牲ぎせいになった長崎ながさき県けん島原しまばら市しを訪おとずれ、体育館たいいくかんでひざをついて被災ひさい者しゃにことばをかけられました。

その後そのごも、平成へいせい７なな年ねんの阪神はんしん・淡路あわじ大震災だいしんさいなど大おおきな災害さいがいが起おきるたび現地げんちに出向でむき、被災ひさいした人ひとたちを見舞みまわれてきました。

東日本ひがしにっぽん大震災だいしんさいでは、天皇てんのう陛下へいかが異例いれいのビデオメッセージで国民こくみんに語かたりかけられるとともに、７なな週しゅう連続れんぞくで東北とうほく３さん県けんなどを回まわり、その後そのごも折おりに触ふれて被災ひさい地ちを訪たずねられました。

国民こくみんに寄り添よりそい、世界せかいの平和へいわと人々ひとびとの幸しあわせを願ねがわれてきた天皇てんのう陛下へいか。来年らいねん４月しがつの退位たいいが決きまったあとも、「象徴しょうちょう」としての務つとめを果はたし続つづけられています。

世界せかい地図ちずをご覧ごらんになる両りょう陛下へいか

天皇てんのう陛下へいかの誕生たんじょう日びに合あわせて、天皇てんのう皇后こうごう両りょう陛下へいかがお住すまいの御所ごしょで世界せかい地図ちずをご覧ごらんになる映像えいぞうが公開こうかいされました。

この世界せかい地図ちずは、両りょう陛下へいかがこれまで訪おとずれた場所ばしょにピンで目印めじるしをつけているもので、皇太子こうたいし夫妻ふさいとして訪おとずれた都市としには青色あおいろのピンが、天皇てんのう皇后こうごうとして訪問ほうもんされた都市としには赤色あかいろのピンが、天皇てんのう陛下へいかが皇太子こうたいしとして１いち人にんで訪問ほうもんされた都市としには緑色りょくしょくのピンが立たてられています。

天皇てんのう陛下へいかは、これまでに58か国かこくを訪おとずれて国際こくさい親善しんぜんなどに努つとめられてきました。