この噴火をめぐり、一部の遺族など、合わせて32人は「気象庁が事前に噴火警戒レベルを1から2に引き上げるのを怠り、被災した」などとして、国などに合わせて3億7600万円の賠償を求めていました。
これに対し、国は「当時の判断の過程が合理性を欠いていたとはいえない」などとして、訴えを退けるよう求めました。
13日の判決で、長野地方裁判所松本支部の山城司裁判長は「火山性地震が増えていた2週間余り前の段階では、気象庁に、直ちに噴火警戒レベルを引き上げる注意義務があったとは言えない。しかし、噴火2日前に地殻変動の可能性が指摘された際、十分検討をせず、レベルを漫然と据え置いた判断は合理性に欠け違法だ」と指摘しました。
一方で、「その段階から気象庁が対応していたとしても、立ち入り規制などが間に合ったとは言えず、被害を防ぐことができたとは言えない」として、賠償を求める訴えを退けました。
当時、一緒に登っていた友人が亡くなり、自身も大けがをした田幸秀敏さんは、「気象庁の職員の違法性が認められているのに、われわれの訴えが認められないというのでは、安全を守る義務や責任の所在はどこにあるのかと疑問に思った。控訴してこれからも闘っていきたい」と話しました。 当時小学5年生だった娘の照利さんを亡くした長山幸嗣さんは、「火山予知は難しいと国は主張していたが、それなら異常がある時点で、なぜレベルを上げなかったのか。国や気象庁は違法性が指摘された今回の判決を今後の防災に役立てて欲しい」と、国への対応を求めました。 また、長男の英樹さんを亡くした堀口純一さんは、「いい判決を期待して息子と一緒に判決を聞きたいとの思いで息子のネクタイ締めて来た。しかし、賠償が認められなかったので、控訴して最後まで闘いたい」と述べました。
長野県と岐阜県にまたがる御嶽山が噴火し、死者・行方不明者が63人に上り、戦後最悪の噴火災害となりました。 噴火から2年余りがたった平成29年1月、噴火で亡くなった5人の遺族の11人が、噴火前に噴火警戒レベルを引き上げなかったほか、山頂付近にある地震計の故障を放置していたとして、損害賠償を求める訴えを起こしました。 裁判は同じ年の3月に始まり、その後、けがをした人や、他の遺族も追加で提訴。 遺族30人と、けがをした2人の合わせて32人が原告となっています。 裁判では、気象庁で御嶽山の噴火警戒レベルの判断に関わった当時の火山課長や、観測を行っていた職員、専門家など、書面を含めると11人の証人尋問が行われました。 また、遺族や大けがをした人がそれぞれ証言し、警戒レベルを引き上げなかった責任と、この噴火災害の検証を求めてきました。 一方、国と県は「噴火警戒レベルの据え置きは総合的に検討した結果で、法的な違反はない」などとして訴えを退けるよう求めてきました。 およそ5年間に合わせて23回の審理が開かれことし2月に結審していました。
原告側は、噴火の2週間余り前に気象庁が引き上げ基準の目安の1つとしていた、一日の火山性地震の回数が50回を超えたとき、もしくは、山体の膨張を示すデータが観測されたと評価できる噴火の2日前までに警戒レベルを引き上げるべきだったと主張しています。 これに対し国側は、火山性地震の回数はレベル判断の目安の1つにすぎないほか、山体の膨張を示す確実なデータはなく「判断は、ほかの観測データも考慮して総合的に行ったもので、著しく合理性を欠くものではない」として訴えを退けるよう求めています。 一方、県に対して原告は、故障した2つの地震計を放置していたのは違法だと主張しています。 これに対し県は、砂防のために設置していたもので火山活動を観測する法的義務がないとして訴えを退けるよう求めています。
原告 控訴の意向示す
訴訟の経過
裁判の主な争点
専門家「気象庁は予測技術の限界伝えるべき」