被告の弁護士は1審で「当時、被告には責任能力はなく無罪だ」と主張しましたが、横浜地方裁判所は今月16日、被告の責任能力を認め「19人もの命を奪った結果は、ほかの事例と比較できないほどはなはだしく重大だ」として検察の求刑どおり死刑を言い渡しました。
被告の弁護士は判決を不服として今月27日に東京高等裁判所に控訴していましたが、裁判所によりますと30日、植松被告本人が控訴を取り下げたということです。
これによって植松被告の死刑は、控訴できる期限を過ぎる31日午前0時に確定することになります。
殺害された美帆さんの母親「国や社会全体で考えて」
植松被告が控訴を取り下げたことについて、殺害された19歳の美帆さんの母親は代理人の弁護士を通じて「死刑が確定しても、被告の考えが変わったわけではありません。被告には自分の考えが間違っていたことを反省し、命を奪った19人に謝ってほしかった。このような悲しい事件が二度と起きないように国や社会全体で考えてほしいと思います」とコメントしています。
犠牲になった60歳女性の弟「私にとってすべては済んだ」
植松被告が、弁護士が行った控訴を取り下げたことについて、事件で犠牲になり、法廷で「甲Eさん」と呼ばれた60歳の女性の弟は「事件からきょうまで、長いようであっという間でした。裁判が終わるまで、被告のひと言ひと言に惑わされてきましたが、刑が確定することで、そういった日がなくなります。過ぎた日は戻ってきません。私にとってすべては済んだと思います」とコメントしました。
尾野剛志さん「これで本当に一段落ついた」
事件で一時、意識不明の重体となった尾野一矢さん(47)の父親の剛志さんは、植松被告が控訴を取り下げたことについて、「控訴の取り下げは死刑を受け止めたのだと思っていて、判決のときと同様に少しほっとしました。これで本当に一段落ついたと思います」とコメントしました。
また今後については「被告には遺族や私たちのような被害者家族のことばを受け止めて反省して過ごしてほしいです。これからは前を向いて、二度とこうした事件が起きないように話をしていきたいし、重い障害のある人が暮らしやすい世の中になればと思います」としています。