「死しんでいたかも」ＥＣＭＯで回復かいふくの新型しんがたコロナ患者かんじゃが証言しょうげん

男性だんせいは肺炎はいえんの悪化あっかで体内たいないに取り込とりこむ酸素さんその量りょうが一般いっぱんの人ひとの５ご分ぶんの１いち以下いかに低下ていかしていたということです。センターは、新型しんがたコロナウイルスに感染かんせんした患者かんじゃを受け入うけいれる専用せんようの病床びょうしょうにＥＣＭＯを４よん台だい用意よういしていて、このうち１いち台だいで血液けつえきに酸素さんそを送り込おくりこみ肺はいを休やすませる高度こうどな治療ちりょうをへて、肺はいの機能きのうが回復かいふくしたということです。

男性だんせいは２に度どのウイルス検査けんさでいずれも陰性いんせいとなったことから、１いち日にち、医師いしや看護かんご師しの見送みおくりを受うけて車くるまに乗り込のりこみ、さらなる回復かいふくのため別べつの病院びょういんに向むかいました。

男性だんせいは転院てんいん前まえにＮＨＫえぬえいちけいの取材しゅざいに応おうじ「朝あさはなんともなかった自宅じたくの階段かいだんが、昼ひるにのぼると息切いきぎれした。病院びょういんで肺炎はいえんと診断しんだんされてからは一瞬いっしゅんで悪わるくなった」と、症状しょうじょうが急激きゅうげきに悪化あっかした様子ようすを証言しょうげんしました。

またＥＣＭＯの治療ちりょうを行おこなった医師いしらに対にたいし「先生せんせいがいなかったら死しんでいたかもしれない。感謝かんしゃしかない」と話はなしました。

「悪わるくなるのは一瞬いっしゅんだった」

ＥＣＭＯを使つかった高度こうどな治療ちりょうを受うけて回復かいふくした男性だんせい患者かんじゃの証言しょうげんの詳くわしい内容ないようです。

男性だんせいの話はなしでは、先月せんげつ13日にちごろ、朝あさ、なんともなかった自宅じたくの階段かいだんの上のぼり下くだりが、昼ひるになると息切いきぎれするようになり、初はじめて「おかしい」と感かんじたということです。

当時とうじ、37度ど前後ぜんごの発熱はつねつがあったほかは、特とくに自覚じかく症状しょうじょうはなかったものの病院びょういんを受診じゅしんしたところ肺炎はいえんと診断しんだんされ、新型しんがたコロナウイルスへの感染かんせんも確認かくにんされたということです。

福岡ふくおか大学だいがく病院びょういん救命きゅうめい救急きゅうきゅうセンターによりますと、男性だんせいは先月せんげつ18日にちに別べつの病院びょういんで人工じんこう呼吸こきゅう器きに続つづいてＥＣＭＯを装着そうちゃくされ、20日にち、センターに転院てんいんしました。

この間このかんの経緯けいいについて男性だんせいは、人工じんこう呼吸こきゅう器きの装着そうちゃく前まえとみられるころに医師いしや家族かぞくから「目めが覚さめるか、死しぬかのどちらかだ」と言いわれたことのほか、ほとんど記憶きおくがないとしていて「目めが覚さめたら今いまの病院びょういんだった」と話はなしました。

男性だんせいは「悪わるくなるのは一瞬いっしゅんだった。こんなに簡単かんたんに悪わるくなるとは思おもっていなかった」と話はなしました。

ＥＣＭＯによる治療ちりょうを受うけたことについて男性だんせいは、自分じぶんの親おやから「ＥＣＭＯをちゃんと使つかえる人ひとは少すくない。ここの先生せんせいがＥＣＭＯを使つかえるから病院びょういんを移うつったと思おもう」と説明せつめいされたといい、「先生せんせいには感謝かんしゃしかない。自分じぶん１いち人にんを助たすけるために、この病院びょういんで20人にんぐらいが動うごいてくれていたのはすごいことで、先生せんせいがいなかったら死しんでいたかもしれない」と話はなしました。

また男性だんせいは、みずからの闘病とうびょう経験けいけんから「息切いきぎれはやばいと思おもったほうがいい。悪わるくなるのが一瞬いっしゅんで気きをつけようがないけれども、誰だれか頼たよれる人ひとがいるなら頼たよったほうがよい」と話はなしました。

人工じんこう心肺しんぱい装置そうち「ＥＣＭＯ」とは…

「ＥＣＭＯ」と呼よばれる人工じんこう心肺しんぱい装置そうちは、新型しんがたコロナウイルスによる肺炎はいえんが悪化あっかして、人工じんこう呼吸こきゅう器きでは対応たいおうが難むずかしい重おも篤あつな患者かんじゃの治療ちりょうに使つかわれています。

体からだに２に本ほんの管かんを付つけて血液けつえきを取り出とりだし、人工じんこう的てきに酸素さんそを溶け込とけこませたり二に酸化さんか炭素たんそを取り除とりのぞいたりしてから体内たいないに戻もどす仕組しくみで、肺はいの機能きのうを一時いちじ的てきに代行だいこうして、肺はいを休やすませるねらいがあります。この間このかんに、患者かんじゃ自身じしんの免疫めんえきでウイルスが排除はいじょされて回復かいふくするのを待まちます。

福岡ふくおか県けんによりますと、先月せんげつ９きゅう日にちの時点じてんで県内けんないの病院びょういんに少すくなくとも61台だいがあるということです。

日本にっぽん集中しゅうちゅう治療ちりょう医い学会がっかいや日本にっぽん救急きゅうきゅう医い学会がっかいなどが全国ぜんこくの医療いりょう機関きかんを対象たいしょうに調しらべたところ、先月せんげつ20日にちの時点じてんで少すくなくとも90人にんがこの治療ちりょうを受うけたということです。このうち35人にんはＥＣＭＯの治療ちりょうを終おえて回復かいふくに向むかっていましたが、17人にんは亡なくなったということです。

効果こうかと課題かだいは…

今回こんかいの治療ちりょうの責任せきにん者しゃである福岡ふくおか大学だいがく病院びょういん救命きゅうめい救急きゅうきゅうセンターの石倉いしくら宏ひろし恭きょうセンター長ちょうは「ＥＣＭＯ」はあらゆる重おも篤あつし患者かんじゃに使つかえるわけではないとしたうえで、重じゅう篤あつし化かした患者かんじゃの治療ちりょうに効果こうか的てきに使つかうための体制たいせい作づくりが求もとめられるとしています。

センターによりますと、今回こんかいの患者かんじゃは受け入うけいれ当時とうじ、肺炎はいえんの悪化あっかで重じゅう篤あつしになり、体内たいないに取り込とりこむ酸素さんその量りょうが一般いっぱんの人ひとの５ご分ぶんの１いち以下いかに低下ていかして、命いのちにかかわる深刻しんこくな病状びょうじょうだったということです。

石倉いしくらセンター長ちょうは「転院てんいん直前ちょくぜんのわずか数すう時間じかんで肺はいの状況じょうきょうがさらに悪化あっかしていて、あと１いち日にち遅おそければ搬送はんそうもできない状態じょうたいだった。ほかの患者かんじゃも含ふくめて、進行しんこうのスピードが非常ひじょうに早はやい」と指摘してきしました。

そして患者かんじゃが退院たいいんしたことについて「責任せきにんを果はたすことができたが、また次つぎの患者かんじゃの受け入うけいれを考かんがえている」と話はなしました。

一方いっぽうで石倉いしくらセンター長ちょうは「ＥＣＭＯの装着そうちゃくには一定いっていの条件じょうけんがあるため、回復かいふくの見込みこみがないと判断はんだんした患者かんじゃには、残念ざんねんながら装着そうちゃくできない」と述のべ、あらゆる重おも篤あつし患者かんじゃに使つかえるわけではないと指摘してきしました。

またＥＣＯＭＯを使つかった治療ちりょうにはタイミングが重要じゅうようだとして「人工じんこう呼吸こきゅう器きの装着そうちゃくが長引ながびくと、ＥＣＭＯ装着そうちゃくの最もっともよいタイミングを逃のがすことがある。ＥＣＭＯが必要ひつような患者かんじゃを早期そうきに発見はっけんして、タイミングを逃のがさないことが非常ひじょうに重要じゅうようだ。救命きゅうめい率りつの向上こうじょうには、取り扱とりあつかいにたけた施設しせつへの患者かんじゃの集約しゅうやくが必要ひつようだ」と述のべ、ＥＣＭＯを効果こうか的てきに使つかうための体制たいせいづくりが求もとめられるとしています。

センターでは、2009年ねんの新型しんがたインフルエンザの流行りゅうこうで海外かいがいでＥＣＭＯによる治療ちりょうが効果こうかを上あげたことから、水準すいじゅんが高たかいとされるスウェーデンでの研修けんしゅうに医師いしらを派遣はけんするなどしてＥＣＭＯによる治療ちりょうに取り組とりくんできたということです。

石倉いしくらセンター長ちょうは「ＥＣＭＯが必要ひつようになる事態じたいが必かならず起おきると備そなえてきたことが、いま実みを結むすんでいる。さらに医師いしなどのレベルアップをはかっていきたい」と話はなしました。