自虐的にこう語るのは経済データの分析・予測にあたるあるエコノミスト。
経済環境が大きく変わるなかでも、的確に将来を予測できるかどうかがエコノミストの腕の見せどころですが、急ピッチで進む世界的なインフレに経済のプロたちも手を焼いているようです。
そもそもエコノミストの予測は本当に外れているのか。
最近発表された欧米やアジアでの物価上昇率について、市場の予測中央値と実績とを比較してみました。すると、確かに実績が予測を上回るケースが相次いでいることがわかりました。
まず、コロナ禍からの回復過程で世界経済の前提条件が大きく変わったことです。
2つ目は、ロシアによるウクライナ侵攻の影響です。 世界的なエネルギー価格と食料価格の高騰を引き起こしました。これも先行きが全く見えない状況です。
エコノミストが経済予測を行う場合、2000年以降の経済状況や市場の動きのデータをもとにした計算モデルが使われるケースが多く、これより前のデータをもとに試算することは簡単ではないそうです。
これまでインフレの根拠となっていた「旺盛なペントアップ需要」(コロナ禍で抑制されていた消費や需要が一気に回復すること)の減速を示唆する経済統計が、相次いで発表されているのです。 6月23日に発表されたユーロ圏の消費動向を示す6月のPMI(購買担当者景気指数)が市場の予想を大きく下回ったほか、FRBのパウエル議長が経済状況を「力強い」と自負するアメリカでも6月の消費者信頼感指数が市場の予想より低い水準にとどまりました。 7月5日にはユーロ圏経済の先行きへの厳しい見方を背景にユーロがドルに対して急落。2002年12月以来、およそ19年半ぶりの水準まで値下がりしました。 マーケットでは、欧米の景気がこの先減速、さらには後退の局面に入るのではないかという懸念が急速に強まっています。 その場合、インフレに収束の動きが出てくるのか、あるいは物価上昇は止まらず、インフレと景気後退が同時に進む「スタグフレーション」に陥るおそれもあるのか。 どちらのシナリオでも経済条件の不確実性が増し、当面「インフレ・サプライズ」がなくなることはなさそうです。
今回もさらなる物価上昇を予想する市場関係者が多いですが、仮に上昇にブレーキがかかった場合は景気の減速が一段と意識され、リスクを避けようという動きが強まるかもしれません。 このほか、中国の4月から6月のGDPが発表され、市場では大きな落ち込みも予想されています。一時の厳しい外出制限の影響がどの程度現れるかが焦点です。
なぜ外す? 3つの理由が
景気減速懸念強まる インフレも新局面か
注目予定