3日、佐藤さんの母親や代理人の弁護士が東京都内で記者会見しました。
それによりますと、佐藤さんは東京のソフトウエア開発会社の社員で、JAXAの業務を請け負うグループ会社に平成27年から出向していましたが、1年後の平成28年10月、自宅で自殺しました。
大分県に住む母親からの申し立てを受けて労働基準監督署が勤務の状況を調べたところ、佐藤さんは、夜勤を含む管制業務と同時にソフトウエアの開発にも従事し、達成困難なノルマが課されていたということです。
さらに時間外労働が月70時間を超えていたことなども確認され、2日、労災と認定されました。
会見によりますと、佐藤さんは、会社の上司に残業を申請したところ叱責を受け、サービス残業を強いられていたということです。
佐藤さんの母親の久恵さんは、「今でも息子がこの世からいなくなってしまったことを受け入れられない。息子の身に起きたすべてのことを明らかにしたい」と話していました。
管制業務で月7回ほど夜勤 常に緊張強いられる業務
「いぶき」はJAXAと環境省などが開発した温室効果ガスを専門に観測する世界初の人工衛星で、10年前に打ち上げられました。
これまで把握が難しかったアフリカや南米なども含めた地球全体の二酸化炭素のきめ細かい観測に成功していて、そのデータは世界各国の政府機関や科学者も利用しています。
会見によりますと、佐藤さんは、JAXAの筑波宇宙センターで24時間体制で行われる「いぶき」の管制業務に当たっていて、月7回程度、夜勤に入っていたということです。
「いぶき」が日本列島の上空を飛行する間にあらかじめ用意した指令を送って制御するほか、それ以外の時間も膨大なデータの処理を行うなど常に緊張が強いられる業務だということです。
佐藤さんが亡くなったあとの去年10月には、後継機の「いぶき2号」が打ち上げられています。
代理人の川人博弁護士は、「宇宙という希望にあふれた世界を対象にする職場にも過酷な労働環境があることが明らかになった」として、会社だけでなくJAXAに対しても再発防止を求めています。
所属していた会社は
佐藤さんが所属していたソフトウエア開発会社「エスシーシー」は「厳粛に受け止めています。二度とこのようなことが起きないよう再発防止に努めて参ります」と話しています。
また、出向先のグループ会社でJAXAの業務を請け負う「宇宙技術開発」は「労災認定を受けたと聞いたばかりなので詳しい内容は差し控えますが、厳しく受け止めており、丁寧に対応させていただきます」と話しています。