この新たな法律ではアイヌ民族を「先住民族」と初めて明記し、「アイヌの人々が民族としての誇りを持って生活することができ、その誇りが尊重される社会の実現を図る」としています。
また国や自治体が、アイヌ政策を実施していく責務を負っているとしたうえで、地域の活性化を目指してアイヌ文化を生かした事業を計画する自治体を対象に、新たな交付金を創設することも盛り込まれています。
さらに、アイヌの人たちが独自の文化を継承するのを後押しするため、国有林で樹木を採取したり、川でサケを捕獲したりできるよう手続きを簡素化し、規制緩和を行うなどとしています。
法律を担当する石井国土交通大臣は閣議のあとの記者会見で「アイヌの人々が民族としての名誉と尊厳を保持し、これを次世代に継承していくことは活力ある共生社会を実現するために重要だ。国会審議での意見などを踏まえ確実な施行に努めたい」と述べました。
紋別アイヌ協会会長「国はアイヌの歴史を調べ国民に説明を」
紋別アイヌ協会の畠山敏会長は、先住民族の権利を訴え、去年9月、北海道紋別市でアイヌの伝統儀式に使うサケを、川を管理する自治体の許可なしに獲ろうとしましたが、警察から法律違反になるとして止められ、漁を行うことができませんでした。
新たな法律について畠山さんは「先住民族であるアイヌの土地や資源に対する権利を保障しておらず、国際的な基準を満たしていない。過去にアイヌは住んでいた土地を追いやられて、過酷な労働を強いられた。国はそうした歴史を調べて国民が理解できるよう説明すべきだ」と国の対応を批判しました。
北海道アイヌ協会理事長「歴史の大きな1ページ」
アイヌ民族を先住民族として初めて位置づけた新たな法律が可決・成立したことを受けて、「北海道アイヌ協会」の加藤忠理事長は、「涙が出てきます。これまで抱え切れない苦しみと悲しみの歴史がありましたが、ようやくこの法律で認めてもらいました」と話していました。
そのうえで、「きょうからが出発、歴史の大きな1ページです。ここから、地域の振興を一歩一歩進めていきたい」と述べました。