AP通信などによりますと、アメリカ軍の制服組トップ、ダンフォード統合参謀本部議長は9日、記者団に「ホルムズ海峡と周辺の海域で航行の自由を確保するため、連合を結成できるかどうか多くの国と連絡をとっている」と述べました。
ホルムズ海峡では先月、日本の会社が運航するタンカーなど2隻が攻撃されて安全への懸念が高まっていて、これに対応するためアメリカ軍として、同盟国などとの有志連合の結成を検討していることを明らかにしたものです。
ダンフォード議長は今後、2週間程度で参加国を見極めたうえで、各国の軍と活動の具体的な内容について協議したいとしています。
ホルムズ海峡を巡っては、先月のタンカー攻撃事件のあと、トランプ大統領がツイッターに「なぜわれわれが他の国々のために報酬も得られないのにこの輸送路を守るのか。すべての国々は自国の船を自分で守るべきだ」と投稿し、石油を輸送する日本などの国々がみずから自国の船を守るべきだという考えを示していました。
トランプ政権としては、有志連合の結成で関係国に応分の負担を求めるねらいもあるとみられ、今後、各国にどのような要請をするかが焦点になります。
官房副長官「日米で緊密にやり取り」
野上官房副長官は記者会見で、「報道に対するコメントは差し控えたい」としたうえで、「中東地域の緊張の高まりを深刻に懸念しており、ホルムズ海峡の航行の安全を確保することは、わが国のエネルギー安全保障上、死活的に重要で、国際社会の平和と繁栄にとっても極めて重要だ。アメリカをはじめとする関係国と連携しつつ、中東の緊張緩和と情勢の安定化に向けて外交努力を継続したい」と述べました。
また、記者団が「仮にアメリカから打診があった場合に自衛隊が参加する可能性はあるか」と質問したのに対し、野上副長官は、「イラン情勢をめぐり日米間で緊密にやり取りしているが、詳細は差し控えたい」と述べました。
防衛省幹部「防衛省への打診や連絡はない」
これについて、防衛省の幹部の1人は「報道は承知しているが、現段階で少なくとも防衛省への打診や連絡はなく、自衛隊派遣の具体的な検討はしていない。引き続き中東情勢を注視していく」と話しています。
別の幹部は「仮に自衛隊を派遣する場合の法的根拠として、今の中東情勢を、日本にとって集団的自衛権を行使できる『存立危機事態』と認定するのは難しいのではないか」との見方を示しました。
一方で、この幹部は「海上警備行動の発令で護衛艦による警備を行うことや、重要影響事態の認定で、アメリカ軍への後方支援などが考えられるが、現時点では、あくまで頭の体操の段階だ」と話しています。
立民 枝野代表「軍事的な形の貢献はできない」
立憲民主党の枝野代表は、滋賀県彦根市で記者団に対し「少なくとも、軍事行動を想定するようなものであるならば、安倍政権下でつくられた違憲の安全保障法制のもとでもできることではない。日本は、中東の安全保障には、一定の重要な利害関係を持っているが、軍事的な形で貢献するということは、わが国の国是として、あってはいけないことだ」と述べました。
原油の供給脅かす事件 海峡周辺で相次ぐ
ホルムズ海峡の周辺では、原油の供給を脅かす事件が相次いでいます。
ことし5月には、ホルムズ海峡に近い、UAE=アラブ首長国連邦のフジャイラ港の沖合でサウジアラビアなどのタンカー4隻が何者かによる攻撃を受けました。
また、先月13日にはオマーン湾を航行中のタンカー「フロント・アルタイル」と「コクカ・カレイジャス」の2隻が攻撃を受け、船体に穴が空くなどの被害が出ました。
アメリカ軍はこのうち、日本の海運会社、国華産業が運航する「コクカ・カレイジャス」について、「リムペット・マイン」と呼ばれる、船体に取り付けて爆発させるタイプの爆弾が見つかったと発表し、イランによる仕業だと主張しています。
これに対しイランは全面的に関与を否定しています。
攻撃を受けて国華産業は、事件のあと、みずからが運航する船舶に対し、できるだけイラン側から離れて航行するように指示しているほか、日本の海運会社の中には危険海域にいるあいだは全速力で走り抜けるといった対策を取っているところもあります。
また、国土交通省は日本の海運会社に対して、現場海域を航行する際には最新の情報を入手したり、レーダー監視や見張りを厳重に行ったりするなど、安全に最大限注意するよう呼びかけています。