尖閣せんかく諸島しょとう沖おきの中国ちゅうごく当局とうきょく船せん 詳細しょうさいな動うごき判明はんめい 複雑ふくざつ化かで海保かいほの負担ふたん増ぞう

尖閣せんかく諸島しょとうの沖合おきあいで、ことし、中国ちゅうごく海うみ警局きょくの船ふねが、日本にっぽんの領海りょうかいや接続せつぞく水域すいいきを航行こうこうした日数にっすうは、今月こんげつに入はいって統計とうけい開始かいし以来いらい、最多さいたを更新こうしんし、19日にちで300日にちに達たっしました。

NHKはこのうち、領海りょうかい内ないで操業そうぎょう中ちゅうの日本にっぽんの漁船ぎょせんが中国ちゅうごく船せんに追尾ついびされたことし7月つきと10月つきのケースについて中国ちゅうごく船せんの詳細しょうさいな動うごきを記録きろくした資料しりょうを独自どくじに入手にゅうしゅし、分析ぶんせきしました。

それによりますと、まず、7月つきのケースでは、2隻せきの船ふねが漁船ぎょせんを追おうように領海りょうかいに侵入しんにゅうし、中国ちゅうごく船せんが領海りょうかい内ないを航行こうこうした時間じかんは、4日間にちかんの合計ごうけいでおよそ70時間じかんに達たっしました。

この際さい、接続せつぞく水域すいいきには別べつの2隻せきの中国ちゅうごく船せんがいて当初とうしょ、同おなじように漁船ぎょせんを追尾ついびするかに見みえましたが、突然とつぜん、引き返ひきかえして往復おうふくを繰り返くりかえし、海上かいじょう保安庁ほあんちょうは二に手てに分わかれての対応たいおうを余儀よぎなくされました。

また、10月つきのケースでは、2隻せきの中国ちゅうごく船せんが日本にっぽんの漁船ぎょせんを追おってほぼ同時どうじに領海りょうかいに侵入しんにゅうし、連続れんぞくの航行こうこう時間じかんとしては過去かこ最長さいちょうとなる57時間じかん余あまりにわたって領海りょうかいにとどまりましたが、このときも別べつの2隻せきが接続せつぞく水域すいいきで往復おうふくを繰り返くりかえすなどの動うごきを見みせていました。

中国ちゅうごく船せんはこれまで4隻せきが隊列たいれつを組くんで航行こうこうするケースが多おおかったということで海上かいじょう保安庁ほあんちょうの複数ふくすうの関係かんけい者しゃは、NHKの取材しゅざいに対にたいし、「最近さいきん、複数ふくすう箇所かしょでの対応たいおうが必要ひつようになるケースが増ふえ、負担ふたんが増ましている」とか、「中国ちゅうごく側がわの動うごきが読よめず、日本にっぽんを試ためしているのではないかと思おもう」などと話はなしています。

中国ちゅうごく船せんの動うごきが複雑ふくざつになる中なか、海上かいじょう保安庁ほあんちょうが難むずかしい対応たいおうを強しいられている実態じったいが浮き彫うきぼりになっています。

7月つきの領海りょうかい侵入しんにゅうのケース

NHKが入手にゅうしゅした資料しりょうを詳くわしく分析ぶんせきしたところ、7月つき2日にちの夕方ゆうがた、中国ちゅうごく海うみ警局きょくの2隻せきの船ふねが領海りょうかい内ないで操業そうぎょうしていた日本にっぽんの漁船ぎょせんを追おうように、魚釣島うおつりしまの西側にしがわから日本にっぽんの領海りょうかいに侵入しんにゅうしていました。

その直後ちょくご、漁船ぎょせんから撮影さつえいされた映像えいぞうには、高たかさ10メートルほどとみられる中国ちゅうごく船せんが漁船ぎょせんのすぐ後うしろに迫せまり、海上かいじょう保安庁ほあんちょうの巡視じゅんし船せんが間まに入はいって漁船ぎょせんへの接近せっきんを防ふせごうとしているのがわかります。

漁船ぎょせんの船長せんちょうによりますと、2隻せきは、漁船ぎょせんに繰り返くりかえし接近せっきんしたということで、資料しりょうからは、針路しんろ変更へんこうを繰り返くりかえしていたことが見て取みてとれます。

漁船ぎょせんはその後そのご、東ひがしにおよそ100キロ離はなれた大正たいしょう島とう付近ふきんに移動いどうしましたが、2隻せきの中国ちゅうごく船せんは、7月つき5日にちまでの4日間にちかんにわたって漁船ぎょせんのあとを追おうような動うごきを見みせ、領海りょうかい内ないを航行こうこうした時間じかんは、4日間にちかんの合計ごうけいで69時間じかん40分ふんに達たっしました。

また、この2隻せきが魚釣島うおつりしま周辺しゅうへんの領海りょうかいを出でて、大正たいしょう島とう付近ふきんに向むかう際さい、接続せつぞく水域すいいきには中国ちゅうごく海うみ警局きょくの別べつの2隻せきの船ふねがいました。

この2隻せきは当初とうしょ、領海りょうかい内ないにいた2隻せきと同おなじように漁船ぎょせんを追尾ついびするような動うごきを見みせていましたが、突然とつぜん、引き返ひきかえしたあと、同おなじような場所ばしょを繰り返くりかえし往復おうふくしていました。

これによって、海上かいじょう保安庁ほあんちょうは二に手てに分わかれての対応たいおうを余儀よぎなくされました。

10月つきの領海りょうかい侵入しんにゅうのケース

NHKが入手にゅうしゅした資料しりょうを詳くわしく分析ぶんせきしたところ、先月せんげつ10日にちから11日にちにかけて、中国ちゅうごく海うみ警局きょくの2隻せきの船ふねが領海りょうかいの縁えんをたどるようにして魚釣島うおつりしまや久場くば島とうの西側にしがわから大正たいしょう島とうの東ひがしの海域かいいきに移動いどうしていました。

海上かいじょう保安庁ほあんちょうは、大正たいしょう島とうの東側ひがしがわから尖閣せんかく諸島しょとう沖おきに向むかっていた日本にっぽんの漁船ぎょせんを待ち構まちかまえていたとみています。

そして、11日にちの午前ごぜん11時じ前まえ、2隻せきは漁船ぎょせんを追おいかけるようにほぼ同時どうじに領海りょうかいに侵入しんにゅう。

操業そうぎょうする漁船ぎょせんを取り囲とりかこむようにほとんど移動いどうすることなく、領海りょうかい内ないにとどまり続つづけました。

その時間じかんは、連続れんぞくの航行こうこう時間じかんとしては過去かこ最長さいちょうとなる57時間じかん39分ふんに達たっしました。

また、このとき、領海りょうかい侵入しんにゅうした2隻せきとは別べつの中国ちゅうごく船せん2隻せきが、周辺しゅうへんの接続せつぞく水域すいいきで不規則ふきそくな動うごきを見みせていました。

まず、今月こんげつ11日にちの未明みめいに1隻せきが久場くば島とうの北きたから接続せつぞく水域すいいきに入はいり、その21時間じかん余あまりあとに別べつの船ふねが同おなじような場所ばしょから接続せつぞく水域すいいきに入はいります。

2隻せきは、大正たいしょう島とうの東側ひがしがわで合流ごうりゅうしたあと、接続せつぞく水域すいいき内ないを並ならぶようにして移動いどうしていました。

海上かいじょう保安庁ほあんちょうの関係かんけい者しゃによりますと2隻せきは、周辺しゅうへんで操業そうぎょうしていた別べつの日本にっぽんの漁船ぎょせんを追尾ついびするなどしていたとみられるということです。

当時とうじ、尖閣せんかく諸島しょとうの沖合おきあいでは、領海りょうかい内ないの同おなじような場所ばしょにとどまり続つづける2隻せきと、接続せつぞく水域すいいき内ないで漁船ぎょせんを追おうように移動いどうを続つづける2隻せきの2つの船団せんだんに対にたいし、海上かいじょう保安庁ほあんちょうが同時どうじに対応たいおうしなければならなかったことが見て取みてとれます。

日本にっぽん政府せいふ「中国ちゅうごく船せんの動うごき 複雑ふくざつ化か」

政府せいふは、尖閣せんかく諸島しょとうの周辺しゅうへん海域かいいきでの中国ちゅうごく海うみ警局きょくの船ふねの動うごきは近年きんねん、複雑ふくざつ化かしていると分析ぶんせきしています。

そのきっかけとみているのが、おととし7月つき、それまで政府せいふ組織そしきだった中国ちゅうごく海うみ警局きょくが、軍ぐんの指揮しき下かにある「武装ぶそう警察けいさつ」に編入へんにゅうされたことです。

それまで、中国ちゅうごく海うみ警局きょくの船ふねは4隻せきが隊列たいれつを組くみ、領海りょうかいの縁えんをたどるように接続せつぞく水域すいいきを周回しゅうかいするケースがほとんどでしたが、最近さいきんは複数ふくすうのグループに分わかれて航行こうこうするケースが目立めだつようになっているということです。

さらに、他国たこくの軍艦ぐんかんが近ちかくを通過つうかする際さいにはほぼ毎回まいかい、追尾ついびしたり、無線むせんで呼よびかけたりするようになっているということで、「みずからの主権しゅけんが及およぶ海域かいいきだ」と訴うったえるねらいがあるとみられています。

また、海うみがしけている時ときでも現場げんば海域かいいきにとどまるようになっているほか、船団せんだんが交代こうたいする際さいに接続せつぞく水域すいいき内ないに常つねに4隻せきいる状態じょうたいをつくるようにしているとみられるということで、日本にっぽん政府せいふは、「この海域かいいきに常つねに船ふねを配備はいびすることを目指めざす」という中国ちゅうごく側がわの意思いしが働はたらいている可能かのう性せいがあると分析ぶんせきしています。

海上かいじょう保安庁ほあんちょうOB「負担ふたんや緊張きんちょうは増大ぞうだい」

海上かいじょう保安ほあん官かんとして尖閣せんかく諸島しょとう沖おきで警備けいびにあたった経験けいけんを持もち、3年ねん前まえまで2年間ねんかん、沖縄おきなわ県けんの石垣いしがき海上かいじょう保安ほあん部長ぶちょうを務つとめた宮崎みやざき一巳かずみさんは、「隊列たいれつを組くんで航行こうこうするのは統制とうせいが取とれた形かたちで国くにの意思いしを表あらわすデモンストレーション、示威じい行動こうどうとしてのアピールになる」と指摘してきします。

そのうえで、近年きんねん、中国ちゅうごく海うみ警局きょくの船ふねが複数ふくすうのグループに分わかれ、日本にっぽんの漁船ぎょせんを追おうケースが出でていることについて、「『自分じぶんたちの意思いしで、任務にんむに基もとづいて航行こうこうし、主権しゅけんを行使こうしする』という構図こうずをつくり、『中国ちゅうごくの海うみだ』と主張しゅちょうしたいのだろう。日本にっぽん、そして同盟どうめい国こくのアメリカがどう反応はんのうするかをうかがっていることは間違まちがいない」と話はなしています。

そして、現場げんばで対応たいおうにあたる海上かいじょう保安庁ほあんちょうについて、「隊列たいれつを組くんでいる場合ばあいに比くらべると、連絡れんらくの回数かいすうが増ふえ、指揮しきする船ふねの仕事しごとも増ふえる。それに、中国ちゅうごくのねらいが何なになのかなどさまざまなこと考かんがえて対応たいおうしなければならず、負担ふたんや緊張きんちょうは増大ぞうだいしているだろう」と指摘してきしています。

専門せんもん家か「挑発ちょうはつに乗のらないことが重要じゅうよう」

中国ちゅうごくの対外たいがい政策せいさくに詳くわしい九州きゅうしゅう大学だいがくの益えき尾お知佐子ちさこ准じゅん教授きょうじゅは、「中国ちゅうごくは政治せいじ・経済けいざいや安全あんぜん保障ほしょうの分野ぶんやでアメリカの脅威きょういにさらされているという『被害ひがい者しゃ意識いしき』が高たかまり、最大限さいだいげんの予防よぼう措置そちをとろうとしていて、そのあらわれとして、みずからの主権しゅけんが及およぶと主張しゅちょうしているエリアを統治とうちしようという姿勢しせいを強つよめている。尖閣せんかく諸島しょとう沖おきで海うみ警局きょくの船ふねを航行こうこうさせ続つづけるのは、この海域かいいきをすべて自国じこくのものとみなし、実効じっこう支配しはいを着々ちゃくちゃくと進すすめていくための準備じゅんびではないか」と分析ぶんせきしています。

そして、益えき尾お准じゅん教授きょうじゅは、「中国ちゅうごくは、相手あいてを挑発ちょうはつし、その相手あいてが対抗たいこう措置そちを打ち出うちだすと、それを理由りゆうに攻せめるという傾向けいこうがある。現場げんばは大変たいへんだと思おもうが挑発ちょうはつに乗のらないことが非常ひじょうに重要じゅうようだ」と述のべ、海上かいじょう保安庁ほあんちょうが冷静れいせいに対応たいおうし続つづけることが大切たいせつだという認識にんしきを示しめしました。

加藤かとう官房かんぼう長官ちょうかん「極きわめて深刻しんこく」

加藤かとう官房かんぼう長官ちょうかんは午後ごごの記者きしゃ会見かいけんで「ことし1月つきからきょうまで、接続せつぞく水域すいいき内ないで、海上かいじょう保安庁ほあんちょうの巡視じゅんし船せんが中国ちゅうごく公おおやけ船せんの航行こうこうを確認かくにんした日数にっすうは、合計ごうけいで300日にちとなっている。接続せつぞく水域すいいき内ないでの航行こうこうや領海りょうかい侵入しんにゅうなどの活動かつどうが、相次あいついでいることは極きわめて深刻しんこくだ」と述のべました。

そのうえで「中国ちゅうごく側がわに対にたいしては現場げんば海域かいいきで、巡視じゅんし船せんによる警告けいこくを実施じっしするとともに、外交がいこうルートを通つうじ厳重げんじゅうに抗議こうぎしており、きょうの接続せつぞく水域すいいきの航行こうこうについて、東京とうきょうと北京ぺきん双方そうほうで申し入もうしいれを行おこなった」と述のべました。