在宅避難者は東日本大震災など過去の災害でも行政の支援を十分に受けられず問題となっていて、東北のボランティア団体の代表はいち早く状況把握を進めるべきだと訴えています。
輪島市鳳至町の山崎達司さん(66)は、地震のあと、応急危険度判定で「危険」と判定された自宅に現在も住み続けています。
山崎さんは避難所に身を寄せることも考えましたが、高齢で体が不自由な父親の徹司朗さん(91)の体調を考慮して自宅に残りました。
また、隣接する建物が大きく壊れ、渡り廊下でつながる自宅も「危険」と判定されたものの、自宅じたいは住み続けられると判断したこともあると言います。
山崎さんによりますと「危険」と判定された自宅に住み続けている人は地域に多くいて、NHKの取材でも被災地の各地で確認されています。
石川県はこうした避難所以外で避難している人に専用の窓口で氏名や連絡先、避難先などを登録するよう呼びかけていて、登録によって把握できた「在宅避難者」は1月30日の時点で2867人にのぼりますが、山崎さんは現時点では登録していません。
山崎さんは「歩行に不自由がある高齢の父親にとって、自宅の方が学校の体育館などの一時的な避難所よりもリスクが小さいと考え、とどまっている。しかし、再びの強い揺れで家が潰れる可能性もゼロではなく、何か月もこのままでよいとは思っていない。今後、父親も暮らせるアパートや施設を探そうと考えているが、家族にとってどの選択が一番よいのか正直よくわからない」と話していました。
ボランティア団体代表 「被害を訴えられない傾向がある」
在宅避難者の支援を続けてきた宮城県のボランティア団体「チーム王冠」の伊藤健哉代表によりますと、自宅で避難生活を続ける人は東日本大震災のあと行政などの情報が届かないまま適切な支援を受けられず、問題となりました。
中でも建物が大きく壊れていた家では時間がたつにつれて劣化も進み、不自由な暮らしの中で体調を崩すケースも相次いだということです。
伊藤代表は在宅避難者について「自分は大丈夫だと思う『正常性バイアス』がかかり、自分の苦しさや被害を訴えられない傾向がある」と指摘します。
その上で「在宅避難者はまずは把握しなければ存在しないことになってしまう。避難者の支援はスピードが要求されるので、今後、災害関連死を出さないためにも広く被災者の情報を集めることが今一番必要なことだ」と訴えていました。
輪島市長 「避難所での生活強く呼びかけていきたい」
輪島市の坂口茂市長は、1日の記者会見で「危険度判定で『赤』と判断されたところは、強い余震の影響を払拭できない点では非常に危険だと思っている。ある程度落ち着くまでは避難所で生活するよう、社会福祉協議会とも連携して強く呼びかけていきたい」と話しています。