これまで金融政策決定会合のあと、記者の質疑に応じてきた本店9階の大会議室が会場です。
2013年に就任した黒田総裁。
最初の金融政策決定会合で異次元の金融緩和を打ち出し、その時の記者会見で「戦力の逐次投入をせずに、現時点で必要な政策を全て講じた。量的にみても、質的にみても、これまでとは全く次元の違う金融緩和を行う」と宣言しました。
そして先月まで98回、金融政策決定会合を重ねてきました。
10年間を振り返り、「長きにわたるデフレの経験から賃金や物価が上がらないことを前提とした考え方や慣行、いわゆるノルムが根強く残っていたことが影響し、2%の物価安定の目標の持続的、安定的な実現までは至らなかった点は残念だ」と述べました。 そして足元の動きについて「労働需給の面では賃金が上がりやすい状況になりつつある。また、物価上昇を賃金に反映させる動きが広がりを見せている。物価安定の目標の持続的安定的な実現に向けて着実に歩みを進めたということは言えると思う。大規模な金融緩和はさまざまな効果をあげてきている。これまでの政策運営は適切なものだったと考えている」と述べました。
その上で「経済の改善は労働需給のタイト化をもたらし、女性や高齢者を中心に400万人を超える雇用の増加が見られたほか若年層の雇用環境も改善した。またベアが復活し、雇用者報酬も増加した。この間、経済はさまざまなショックに直面し、特に2020年春以降は感染症の影響への対応が大きな課題となったが、日本銀行は機動的な政策運営により企業などの資金繰り支援と金融市場の安定維持に努めてきた」と述べました。 一方、副作用について、「政策には常に効果と副作用があり、量的質的金融緩和も例外ではない。この点、日本銀行は2016年の総括的検証や2021年の点検などを踏まえて、さまざまな工夫を凝らしその時々の経済物価金融情勢に応じて、副作用に対処しつつ、効果的かつ持続的な金融緩和を継続してきたと考えている」と述べました。
現時点では2%の物価安定目標の持続的・安定的な実現には至っておらず課題として残っているが、賃金が上がりやすい状況になりつつある。先行きの経済・物価動向は、さまざまな不確実性があるのは事実だが、賃金の上昇を伴う形で物価安定の目標が持続的安定的に実現することを期待している」と述べ、新体制での目標を達成に期待を示しました。
その上で物価安定目標の達成がいつ展望できるのか問われ、「そういった状況に近づいたというふうに評価している。ただ具体的な時期などについては、よくデータを見ていく必要があるだろうと思う」と述べるにとどめました。
最後の質疑を終え、黒田総裁は「どうも長いこと、いろいろありがとうございました」と述べ、会場をあとにしました。
「2%の物価安定目標 実現至らず残念」
「物価が持続的に下落するデフレではなくなった」
「金融緩和なければ成長もっと低迷」
「新体制 手腕の発揮に期待」
植田新総裁で何が変わる?日銀元幹部に聞く
「非伝統的金融政策は十分効果」
「春闘は順調 来年も継続が重要」
「金融システム安定しながら出口戦略は進められる」
今後の物価「恒常的に2%割ることない」
退任後「どこか大学で教えたい」
「長いこと ありがとう」