今月26日、東京・杉並区下井草のアパートで、近くの乳児院で働く保育士の照井津久美さん(32)が刃物で背中を刺されて殺害されました。
現場からは黒っぽい色のロングコートを着た、身長1メートル60センチくらいの30代とみられる男が逃げる姿が目撃されていて、警視庁は付近の防犯カメラの映像を回収し捜査を進めていました。
その結果、30日、現場から逃走していた松岡容疑者を見つけ、殺人の疑いで逮捕しました。
捜査関係者によりますと、松岡容疑者は照井さんの職場の同僚だということです。
調べに対し「私は刺していません」と供述し、容疑を否認しているということです。
これまでの調べで、アパートの屋根とベランダの手すりから複数の足跡が見つかったほか、ベランダの窓ガラスはクレセント錠がある部分だけ工具で突き破ったように割られていたということです。
警視庁は女性を狙った詳しいいきさつを調べています。
事件の経緯は
照井さんは東京・杉並区の乳児院で保育士として働いていて、事件が起きた今月26日は夜勤明けだったということです。
午前9時半までの勤務でしたが、残業をしたあと近くにあるカレー店に立ち寄ったということで、午前11時半前に昼食を購入したレシートが見つかっているということです。
そして防犯カメラの映像から2キロほど離れたアパートに自転車で帰ったとみられています。
その後、正午すぎに照井さんがベランダから助けを求める姿をアパートの大家が目撃していて、このころ犯人に刺されたとみられています。
現場となったアパートは西武新宿線の下井草駅近くの閑静な住宅街にあり、付近には小学校や中学校もあります。
照井さんの部屋は2階建てのアパートの2階にある25平方メートルほどのワンルームで、7畳ほどの洋室にベッドや棚、洋服をかけるラックなどが置かれていたということです。
室内は棚が倒れるなど争ったような形跡が残されていて、照井さんはベランダに近い床の上でコートを着たままあおむけに倒れていたということです。
照井さんは背中の左肩のあたりを包丁で刺されていて、柄の部分は近くに落ちていたということです。
警察官が駆けつけた際には、玄関もベランダの窓も鍵が開けられた状態で、これまでの調べで、アパートの屋根とベランダの手すりから複数の足跡が見つかったほか、ベランダの窓ガラスはクレセント錠がある部分だけ工具で突き破ったように割られていたということです。
これは窃盗事件でよく使われる侵入手口だということです。
現場からは黒っぽい色のロングコートを着た、身長1メートル60センチくらいの30代とみられる男が逃げる姿が目撃されていて、警視庁は付近の防犯カメラの映像を回収し捜査を進めていました。
照井津久美さんとは
照井津久美さんは(32)は岩手県花巻市の出身で、仙台市の大学で福祉について学び保育士の資格を取って、東京・杉並区にある乳児院で働いていました。
親族によりますと、照井さんは子どもが好きで保育士を志したということで、事件が起きたアパートは、勤め先の乳児院からも近いことから選んでいたということです。
勤め先の乳児院は、さまざまな事情から家庭で育てられない0歳から2歳までの子どもたち、およそ50人が暮らすことができるということです。
照井さんは、ここでおよそ10年間働いていて、責任感が強く主任をつとめていたということです。
岩手県花巻市に住む86歳の祖母は、照井さんについて「本当にかわいい子でした。最初は全く信じることができませんでした。津久美は、人に恨まれるようなことをするような子ではないので、なぜ殺されたのか、本当にわかりません。悲しくて何も考えられません」と涙をこらえながら話していました。
また、東日本大震災の犠牲者を悼むため毎年3月11日に東京の日比谷公園で開かれるイベントにも参加していたということです。
大震災から8年となる、2週間前に開かれたイベントでは、訪れた理由について「たくさんの人の想いが集まる場に来たかった」とボードに記して、被災地への思いを寄せていました。
照井さんの祖母「津久美が帰ってくるわけではない」
岩手県花巻市に住む照井津久美さん(32)の86歳の祖母は「犯人が逮捕されてよかったですが、津久美が帰ってくるわけではありません。犯人はどういう気持ちで殺したのか、なぜ津久美を狙ったのか、詳細はわからず、気持ちは判然としません。津久美はどれだけおそろしい思いをして殺されたかと思うと、本当にかわいそうです」と話していました。