大阪おおさかで「キタ」「ミナミ」って呼よぶの なんでなん？

大阪おおさかを代表だいひょうする大だい繁華はんか街がい「ミナミ」。難波なんば駅えきを中心ちゅうしんとしたエリアで、若者わかものたち、そして今いまでは外国がいこく人じん観光かんこう客きゃくでにぎわう界かいわいです。

大阪おおさかの「南みなみ」にあるから「ミナミ」？

もう1つの繁華はんか街がい「キタ」は北きたにあるから？

しかし、そうだとしたら、どこが基準きじゅんに？ そしてどこのエリアを指さすのか？

呼び名よびなの由来ゆらいやエリアの謎なぞを追おいました。

（大阪おおさか放送ほうそう局きょく ディレクター 國くに村むら恵めぐみ／記者きしゃ 廣瀬ひろせ奈々美ななみ）

「キタ」「ミナミ」はどこ！？ 十じゅう人にん十じゅう色しょく

大阪おおさかの二に大だい繁華はんか街がい、「キタ」と「ミナミ」は、どこからどこの範囲はんいなのか。

行政ぎょうせいに確認かくにんしようと、大阪おおさか府ふのホームページを見みてみると、「キタ」や「ミナミ」の記載きさいが。

担当たんとう部署ぶしょに問い合といあわせてみましたが、明確めいかくな定義ていぎはないとの回答かいとう。

それならばということで、街まちゆく人ひとたちに大阪おおさか市し中心ちゅうしん部ぶの地図ちずを手渡てわたし、該当がいとうすると思おもうエリアを記しるしてもらうことにしました。

まず出会であった3人組にんぐみ。

「ミナミ」のエリアについて、代表だいひょうして1人にんが通天閣つうてんかく周辺しゅうへんまで丸まるで囲かこったところ、ほかの2人にんがすかさず異論いろんを唱となえます。

「（ミナミの境界きょうかいは）大国たいこく町まちまでじゃない？」

「キタは本町ほんちょうまで…」

「えーえ-、本町ほんちょうまでミナミかは微妙びみょうじゃない？」

続つづいて出会であった2人組にんぐみ。

男性だんせいがミナミを天王寺てんのうじまで含ふくめたところ、隣となりの女性じょせいが「私わたしは天王寺てんのうじは入はいらないと思おもう」とぴしゃり。

男性だんせい

「私わたしは入いれる。この人ひとは入いれない。それぞれ感覚かんかく的てきなものですね」

天王寺てんのうじを含ふくむかどうか、これも論点ろんてんなのでしょうか。

次つぎは女性じょせい2人組にんぐみ。1人にんがすっと前まえに出でてきてくれました。

「細こまかいこといわんでも、ここらへんにしといたらいいねん。では失礼しつれい致いたします」

そう言い残いいのこして、足早あしばやに去さって行いきました。インタビューを続つづけられないほどの切れ味きれあじでした。

30人にんあまりに調査ちょうさした結果けっか、「キタ」についてはほとんどの人ひとが大阪おおさか駅えきや梅田うめだ駅えき周辺しゅうへんと回答かいとうしました。

ただ、こんな意見いけんもありました。

「キタはいわないっすね、言いってもミナミだけですね」

「言いっても、梅田うめだっていう」

若わかい世代せだいを中心ちゅうしんに同様どうようの声こえが聞きかれました。

キタと聞きくと、ネオンが光ひかる大人おとなの街まちのイメージでしたが、最近さいきんはキタが指さすエリアを「梅田うめだ」などとピンポイントの地名ちめいで呼よぶ人ひとが増ふえてきているようです。

対たいする「ミナミ」。

こちらは人ひとによって回答かいとうしたエリアに大おおきな差さが出でました。

難波なんば周辺しゅうへんだけと答こたえた人ひともいれば、通天閣つうてんかくや天王寺てんのうじまでを含ふくむ広ひろいエリアを答こたえた人ひとも。

大おおきく異ことなるミナミ「どこやねん！」

人ひとによって大おおきく異ことなる「ミナミ」のエリアを確定かくていすべく、取材しゅざい班はんはお店みせや会社かいしゃの人ひとを訪たずねる「ミナミ、どこやねん作戦さくせん」を決行けっこうすることに。

まずは道頓堀どうとんぼり川がわのすぐそば、千せん日にち前まえで「ミナミ」という看板かんばんを発見はっけん。

店員てんいんさんが、お酒さけが入はいっていい感かんじのお客おきゃくさんと確認かくにんしながら、教おしえてくれました。

「ここはミナミの1等地とうちで～す！」

さすがに千せん日にち前まえはミナミ…。

続つづいて向むかったのは通天閣つうてんかくのふもと。

店みせののれんに「ミナミ」の文字もじが。

お店みせの人ひとにうかがうと、もともとお店みせがミナミにあって、移転いてんしたあとも屋号やごうをそのまま使つかっているとのこと。

店員てんいんの女性じょせい

「新しん世界せかいは、新しん世界せかいっていうじゃないですか？」

新しん世界せかいは新しん世界せかい…。

かみしめながら取材しゅざい班はんが向むかったのは、インタビューで意見いけんが割われた、天王寺てんのうじ。

天王寺てんのうじにはミナミの看板かんばんはないか…と思おもった、その時とき。

「ミナミ貿易ぼうえき」の文字もじが。

早速さっそく、社内しゃないにお邪魔じゃますると、「ラスボス」のようなオーラをまとった社長しゃちょうが待ち受まちうけていました。

この社長しゃちょうが優やさしい口調くちょうで語かたってくれたのは…。

ミナミ貿易ぼうえき社長しゃちょう

「（ミナミという名前なまえに）非常ひじょうに愛着あいちゃくがあります。わたしの車くるまの番号ばんごうもミナミ、『373』にしています」

そこまでミナミに愛着あいちゃくが！！これで天王寺てんのうじもミナミということでいいんですか？

ミナミ貿易ぼうえき社長しゃちょう

「全然ぜんぜん、関係かんけいございません」

どうやら、以前いぜん勤つとめていた会社かいしゃの名前なまえからとったそうで、社長しゃちょう自身じしんは、会社かいしゃがある天王寺てんのうじはミナミではないと考かんがえているそうです。

「ミナミの帝王ていおう」作者さくしゃはどう考かんがえる

なかなかエリアも広ひろいので、ミナミと言いえば、こちらのマンガ。

30年ねん以上いじょう連載れんさいされている「ミナミの帝王ていおう」の作者さくしゃの2人にんにも尋たずねてみました。

結果けっか、原作げんさくの天王寺てんのうじ大だいさん、作画さくがの郷ごう力也りきやさんが記しるしたエリアは、ほぼ同おなじ。

さすがのコンビプレーです。

郷ごうさんは「昔むかしからそういう感覚かんかくで育そだってきたよ」というコメントを添そえてくれました。

名なづけられた由来ゆらいは 長ながく使つかわれる理由りゆうは

なぜミナミと呼よぶのか、どこを指さすのか。

謎なぞを解とくため、大阪おおさかの都市とし文化ぶんかを研究けんきゅうしてきた大阪おおさか大学だいがく総合そうごう学術がくじゅつ博物館はくぶつかんの船越ふなこし幹央みきお教授きょうじゅを訪たずねました。

船越ふなこし教授きょうじゅによると、およそ400年ねん前まえの江戸えど時代じだい初期しょき、現在げんざいの道頓堀どうとんぼり川がわ周辺しゅうへんにあった「南みなみ地ち五ご花街はなまち（なんちごかがい）」という花街はなまちができたことが名前なまえの由来ゆらいで、当初とうしょ、ミナミは非常ひじょうに狭せまい地域ちいきを指さす呼び名よびなだったといいます。

その後そのご、現在げんざいの北新地きたしんち周辺しゅうへんにも花街はなまちが生うまれ、南みなみ地ちに対にたいして北きたにあることから、「キタ」と呼よばれるようになったそうです。

船越ふなこし教授きょうじゅは、「ミナミ」は歴史れきしとともに、そのエリアを拡大かくだいしてきたと指摘してきします。

明治めいじ18年ねんに難波なんばに鉄道てつどうの駅えきが開業かいぎょうすると、多おおくの人ひとが行き交いきかうようになりました。

その後そのご、昭和しょうわに入はいると百貨店ひゃっかてんや大阪おおさか球場きゅうじょうなどが誕生たんじょうし、難波なんば周辺しゅうへんは大阪おおさかを代表だいひょうする繁華はんか街がいへと発展はってん。

それに合あわせて「ミナミ」が指さすエリアも広ひろがっていったというのです。

船越ふなこし教授きょうじゅ

「『ミナミ』ということばが指さすエリアは広ひろがってきました。住所じゅうしょとして公おおやけに決きまっているものであれば、地名ちめい変更へんこうなどで古ふるい地名ちめいが失うしなわれていきますが、『キタ』や『ミナミ』は自然しぜん発生はっせい的てきな呼よび方かたで、長ながく愛あいされて使つかわれているもので、なくならない。大阪おおさからしいという気きもします。もうわれわれの体からだにしみ込しみこんでいる感かんじですね」

ちなみに、船越ふなこし教授きょうじゅは、ミナミの歴史れきし的てきな経緯けいいなどを踏ふまえると、大阪おおさか 中央ちゅうおう区くの島之内しまのうちを中心ちゅうしんに、北きたの端はじは心斎橋しんさいばし、南みなみの端はじは難波なんばあたりではないかと話はなしていました。

「ヒガシ」もあった！？

今回こんかいは「キタ」と「ミナミ」の由来ゆらいやエリアを調しらべる取材しゅざいでしたが、実じつは、取材しゅざいの過程かていで見みつけたのが「ヒガシ」という地名ちめい。

大手おおて私鉄してつの京阪けいはん電鉄でんてつが1990年ねんに発行はっこうした当時とうじの社しゃ史しで「ヒガシの中心ちゅうしんは京橋きょうばしである」という記載きさいがありました。

同おなじ年としに鶴見つるみ緑地りょくちでいわゆる「花はな博はく」が開ひらかれていたこともあり、京橋きょうばしが新あらたなにぎわいの拠点きょてんとなっていたようでした。

ただ、京橋きょうばしの商店しょうてん街がいなど地元じもとで聞きくと、今いまは「ヒガシ」という呼び名よびなを使つかう人ひとはほとんどいないようです。

そのうち「ニシ」も出でてきそうですが、大阪おおさかの地名ちめいをめぐる謎なぞはまだまだ尽つきそうにありません。

（11月つき15日にち 「ほっと関西かんさい」で放送ほうそう）