試合開始直後はお互いに様子を見るように手数の少ない展開となりましたが、その後は井上選手がバトラー選手をロープ際に追い込み左右の連打を見せるなど試合の主導権を握りました。
徹底して守るバトラー選手に対し井上選手はふだんとは逆の右足を前にしたサウスポースタイルにスイッチしたり、時折ガードを外したりして相手を誘うようなこれまでとは違うボクシングスタイルを見せました。
そして第11ラウンド、井上選手の強烈な左のボディーが決まり、そのまま連打を仕掛けたところでバトラー選手が倒れ込みました。
そして11ラウンドノックアウト勝ちで井上選手が4団体王座統一を果たしました。
主要4団体統一はバンタム級では世界で初めてで、日本選手としてはすべての階級を通じて初めてです。
井上選手はバトラー選手との長期戦も見据え、スタミナ強化を図って臨んだ試合で、11ラウンドを戦い抜き偉業を成し遂げました。
そして「4団体統一を成し遂げられたいまスーパーバンタム級への転向を考えている。スーパーバンタム級には強豪がひしめいていて、来年はそのトップに入っていきたい」と早くも次を見据えていました。
終盤の第11ラウンドに相手をノックアウトして試合を決めたことについて「この試合は必ずノックアウトで勝つと準備していたので、判定勝ちだったらやりきれない気持ちになっていたと思う。第11ラウンドでギアを上げられることができたのは収穫だった」と話していました。 対戦したバトラー選手については「思った以上にしっかり対策をしてきているというのはうかがえた。自分も戦い方を変えていかないといけないと思い誘い出したり強引にいったりした」と振り返りました。 また、徹底して守りに入るバトラー選手に対し、ガードを下げて攻撃を誘った場面について「勝つ気があるのかと思った。あまりにも手を出してこないのは自分の中ではどうなんだと思う場面もあった。バトラーを引き出すためにもああいう形で挑発をした」と狙いを明かしました。 勝負を分けたポイントについては「左のジャブだ。これだけは絶対に勝つと練習して、ダメージを与えられていたので勝敗のキーになったと思う」と述べました。 そして、今後については「バンタム級で4団体統一という目標を成し遂げたのでやり残したことはない。少しゆっくりして会長たちときちんと話し合って決めていきたい。ここはゴールではないし、通過点だと思っている」と話していました。
その上で、「第10ラウンドを過ぎたあたりは判定勝ちだと思っていたが、井上選手がインターバル中に『第11ラウンドで倒すぞ』という雰囲気を出した。まさかいくのかなと思ったらそのまま倒したのでびっくりした」と心境を話しました。 その上で「この試合で判定勝ちとノックアウト勝ちというのは200%ぐらい違うので本当に大きく価値のある試合だった。きょうはすごい1日だった」と話していました。
井上選手については「ビデオで見ていたとおりの動きをしてきたが、思っていたよりも強かった。パンチもスピードも正確だ。それがパワーとなってかえってきているのだと思った」と分析しました。 自身の戦いぶりについては「守りを固めていこうとは思っていなくて、観客に臆病だと思われないよう積極的に戦っていきたいと思っていたが、結果的にダウンさせられた」と振り返りました。
アメリカで権威のあるボクシング専門誌が選んだすべての階級を通じた最も強い選手を決めるランキング、「パウンド・フォー・パウンド」で日本選手として初めて1位になるなどこれまでも歴史に名を刻んできましたが、今回またしてもボクシング史を塗り替えました。 圧倒的なパンチ力でノックアウト勝ちを重ねプロデビューから判定までもつれたのは3戦だけ。高いノックアウト率が示すとおりこれまで試合序盤から積極的に攻め、数々のチャンピオンをマットに沈めてきました。 2018年、バンタム級で自身初の世界戦となった当時のWBAチャンピオン、ジェイミー・マクドネル選手との試合では、体格で上回る相手をわずか1ラウンドで破り、チャンピオンの座を奪いました。 その翌年、2団体王座統一戦ではIBFチャンピオンでプエルトリコのエマヌエル・ロドリゲス選手に2ラウンドテクニカルノックアウト勝ちで圧倒しました。 そして3団体統一をかけたことし6月の試合ではかつて5階級を制覇したノニト・ドネア選手を相手に第1ラウンドでダウンを奪うと、第2ラウンドも攻め続けて最後は得意の左フックでマットに沈めました。 今回の対戦相手、ポール・バトラー選手はフットワークを生かして距離を取りながら確実にポイントを重ねていくボクシングスタイル。 井上選手も長期戦を覚悟し、スタミナ強化に取り組みました。試合まで1か月余りに迫った時期には合宿を行い、走り込みや下半身を中心としたトレーニングで肉体を徹底的に鍛えました。 さらにジムでのスパーリングにも変化がありました。父親の井上真吾トレーナーが「バンタム級に転向してからは最も多いのではないか」と話すほどスパーリング数をこなし、多い日には1日10ラウンド行ったこともありました。 井上真吾トレーナーは「パートナーを2人入れて5ラウンドずつやったが、最後まで落ちることはなかった。交代した2人目の選手の方が失速するぐらいだった。スタミナは何の問題も、心配もない」と仕上がりに太鼓判を押していました。 また、ことし9月にはアメリカで合宿を行い海外選手とのスパーリングを重ねて実戦感覚を磨きました。 所属するジムの大橋秀行会長は「気分転換になればいい」という思いでアメリカに送り出したということですが「6月のドネア戦と比べて1.5倍くらい強くなった」と話し、さらなる進化に驚きを隠せませんでした。 試合を3日後に控えた記者会見では「日本で4団体統一王者が誕生するところを目に焼き付けてもらいたい」と語った井上選手。宣言通りにバンタム級の頂点に登り詰めました。 その勝利に酔いしれることなく、1つ上の階級であるスーパーバンタム級を見据える「モンスター」。 4団体統一をも通過点とし、今後もボクシングの歴史を塗り替えていく気概を見せました。
試合直後「最高の日になりました」
4本のベルト携え会見「ここはゴールではないし通過点」
父・真吾さん「すごいことをしてくれた」
所属ジムの大橋会長「ブラボーでした」
バトラー選手「チャンスが少なかった」
圧倒的なパンチ力でノックアウト勝ち重ねる