ホンダへのサイバー攻撃こうげき 社内しゃないネット中枢ちゅうすうを狙ねらった新あらたな手口てぐち

この攻撃こうげきに関係かんけいしたとみられるマルウェアを、情報じょうほうセキュリティー会社かいしゃの「三井みつい物産ぶっさんセキュアディレクション」が解析かいせきしました。

その結果けっか、このマルウェアはデータを勝手かってに暗号あんごう化かして、元もとに戻もどすために金銭きんせんを要求ようきゅうする「ランサムウェア」と呼よばれるもので、ホンダの社内しゃないネットワークにあるコンピューターだけで動うごく特殊とくしゅなものだったことが分わかりました。

従来じゅうらいのランサムウェアと違ちがって、社内しゃないネットワークを管理かんりする中枢ちゅうすうのサーバーをピンポイントで狙ねらって、セキュリティーの設定せっていを変更へんこうすることで外部がいぶとの通信つうしんを遮断しゃだんして一気いっきにデータを暗号あんごう化かする新あたらしい手口てぐちが使つかわれていたということです。

金銭きんせんを要求ようきゅうする脅迫きょうはく文ぶんも中枢ちゅうすうのサーバーだけにしか表示ひょうじされないようになっていたということです。

解析かいせきを行おこなった三井みつい物産ぶっさんセキュアディレクションの吉川よしかわ孝志たかしさんは、「通常つうじょうは、中枢ちゅうすうのサーバーほどセキュリティーが厳きびしいため侵入しんにゅうするのが難むずかしいが、今回こんかいはホンダを狙ねらって偵察ていさつを繰り返くりかえしたのではないか。新あたらしい手口てぐちが出でてきたことでほかの組織そしきも警戒けいかいが必要ひつようだ」と話はなしています。

ホンダ「手口てぐちの公表こうひょう控ひかえる」

これについてホンダは「サイバー攻撃こうげきの原因げんいんの究明きゅうめいなどを進すすめているが詳くわしい攻撃こうげきの手口てぐちについてはセキュリティー上じょうの観点かんてんから公表こうひょうを控ひかえる」とコメントしています。

ホンダ生産せいさんなどに大おおきな影響えいきょう

今回こんかいのホンダに対にたいするサイバー攻撃こうげきでは、社員しゃいんのパソコンが一時いちじ、使つかえなくなったほか、海外かいがいの9つの工場こうじょうで生産せいさんを一時いちじ停止ていしするなど、大おおきな影響えいきょうが出でました。

ホンダによりますと、外部がいぶからのサイバー攻撃こうげきの影響えいきょうで今月こんげつ8日にちの午前ごぜん9時じごろから社内しゃないのネットワークを通つうじたメールのやり取やりとりなどができなくなり、ウイルスに感染かんせんしたとみられるパソコンの画面がめんが真っ暗まっくらになるといった異常いじょうが出でたということです。

会社かいしゃは、原因げんいんを調しらべるために社内しゃないのネットワークへのアクセスを制限せいげんすることを決きめ、災害さいがいの際さいに利用りようする緊急きんきゅう連絡れんらく網もうを通をつうじて、業務ぎょうむ用ようや私用しようのスマホなどにメールや自動じどう音声おんせいで一斉いっせいに連絡れんらくしました。

新型しんがたコロナウイルス対策たいさくとして、多おおくの社員しゃいんが在宅ざいたく勤務きんむをする中なかでパソコンが利用りようできなくなったことから、今月こんげつ9日にちは従業じゅうぎょう員いんに有給ゆうきゅう休暇きゅうかの取得しゅとくを呼よびかける異例いれいの対応たいおうを取とりました。

また、国内こくないの工場こうじょうでは出荷しゅっか前まえの車くるまを検査けんさした際さいの情報じょうほうを登録とうろくするシステムにも影響えいきょうが出でて、車くるまを生産せいさんする3工場こうじょうの一部いちぶで出荷しゅっかが一時いちじ停止ていししました。

さらに、海外かいがいの工場こうじょうでも、システムの安全あんぜん確認かくにんやシステムの不ふ具合ぐあいの復旧ふっきゅうのため9つの工場こうじょうで生産せいさんを一時いちじ停止ていしし、このうちアメリカのオハイオ州しゅうにある主力しゅりょく工場こうじょうでは、今月こんげつ10日にちまで、3日間にちかん、生産せいさんを停止ていししました。

ホンダの社内しゃない調査ちょうさによりますと、サーバーが外部がいぶから攻撃こうげきを受うけたことで、社内しゃないのネットワークにウイルスが拡散かくさんしたとみられ、特定とくていの時間じかんにサーバーにアクセスした社員しゃいんのパソコンでウイルスへの大だい規模きぼな感染かんせんが確認かくにんされているということです。

一方いっぽう、これまでのところ、従業じゅうぎょう員いんや顧客こきゃくの個人こじん情報じょうほうや開発かいはつ情報じょうほうなどの漏ろうえいは確認かくにんされていないとしています。

「マルウェア」とは

「マルウェア」とは、英語えいごで「悪意あくいのある」を意味いみする「malicious（マリシャス）」と「ソフトウェア」を組み合くみあわせた造語ぞうごで、コンピューターウイルスだけでなく、スパイウェアなどさまざまな種類しゅるいがあるということです。

難むずかしい解析かいせき わかったことは

このマルウェアは、ホンダへのサイバー攻撃こうげきが明あきらかになったのと同おなじ今月こんげつ8日にちに、セキュリティー関係かんけい者しゃが参加さんかするウェブサイトに匿名とくめいで投稿とうこうされたもので、ホンダへの攻撃こうげきに関連かんれんしていることを示唆しさする内容ないようが含ふくまれているということです。

世界中せかいじゅうで解析かいせきが進すすめられていますが、セキュリティ－の専門せんもん家かでも解析かいせきが難むずかしいものだということです。

「三井みつい物産ぶっさんセキュアディレクション」の吉川よしかわ孝志たかしさんによりますと、このマルウェアは解析かいせきしづらいコンピューター言語げんごで作成さくせいされ、ホンダの社内しゃないネットワークに接続せつぞくされているかどうかを判別はんべつして、それ以外いがいのコンピューターでは動うごかないようになっていたということです。

社外しゃがいからの調査ちょうさを妨害ぼうがいするのが狙ねらいとみられ、吉川よしかわさんは、ホンダの社内しゃないネットワークを再現さいげんした特殊とくしゅな環境かんきょうを用意よういすることで解析かいせきに成功せいこうしたということです。

このマルウェアは「ＳＮＡＫＥ（スネーク）」と呼よばれる、ランサムウェアの一種いっしゅで、データを勝手かってに暗合あんごう化かした際さいにファイル名めいの末尾まつびに「ＳＮＡＫＥ」を逆さかさから読よんだ、「ＥＫＡＮＳ（イーカンズ）」という文字もじを付け足つけたすなどの特徴とくちょうが一致いっちしたということです。

一方いっぽうで、ホンダへの攻撃こうげきに特とく化かするためとみられる改造かいぞうが複数ふくすう施ほどこされていて、中枢ちゅうすうのサーバーを狙ねらって侵入しんにゅうし、セキュリティーの設定せっていを勝手かってに変かえたり、攻撃こうげき中ちゅう、外部がいぶから邪魔じゃまされないように通信つうしんを絶たち切きったりする新あたらしい機能きのうを持もっていたということです。

また、従来じゅうらいのランサムウェアでは、データを復元ふくげんするために金銭きんせんを要求ようきゅうする脅迫きょうはく文ぶんが端末たんまつごとに表示ひょうじされていましたが、今回こんかいは、認証にんしょう情報じょうほうなどを扱あつかう中枢ちゅうすうのサーバーだけに脅迫きょうはく文ぶんが表示ひょうじされるようになっていました。

脅迫きょうはく文ぶんには、「書類しょるいやデータベース、写真しゃしんなどに軍事ぐんじレベルの暗号あんごうをかけた。鍵かぎを購入こうにゅうすれば暗号あんごうを解とくことができる」などと英語えいごで書かかれていました。

このため、今回こんかいのマルウェアは中枢ちゅうすうのサーバーに侵入しんにゅうできる前提ぜんていで設計せっけいされたとみられるということで、吉川よしかわさんは、「事前じぜんに内部ないぶに侵入しんにゅうするなどして周到しゅうとうに準備じゅんびを進すすめたのではないか」と指摘してきしています。

進化しんかする「ランサムウェア」攻撃こうげき

「ランサムウェア」とは、サイバー攻撃こうげきに使つかわれるマルウェアの一種いっしゅで、「ランサム」は英語えいごで身代金みのしろきんを表あらわすことばです。

パソコンの中なかに保存ほぞんしているデータを勝手かってに暗号あんごう化かするなどして、復元ふくげんと引き換ひきかえに金銭きんせんを要求ようきゅうします。

通常つうじょうは、送おくりつけたメールの添付てんぷファイルなどを通をつうじて相手あいてのコンピューターに侵入しんにゅうし、画面がめんに金銭きんせんを要求ようきゅうするメッセージを表示ひょうじする手口てぐちで、日本にっぽんでも平成へいせい27年ねん以降いこう、被害ひがいが目立めだち始はじめました。

平成へいせい29年ねんには「ワナクライ」と呼よばれるランサムウェアが世界中せかいじゅうで猛威もういを振ふるい、日産にっさん自動車じどうしゃや日立ひたち製作せいさく所しょのほか、ホンダなどでも被害ひがいが出でました。

最近さいきんはセキュリティー対策たいさくが進すすんだことなどから不ふ特定とくてい多数たすうを狙ねらった「ばらまき型がた」が減へり、事前じぜんに相手あいてのシステムを調しらべ上あげてピンポイントで攻撃こうげきする「標的ひょうてき型がた」が増ふえていると指摘してきされていて、今後こんご、日本にっぽんの企業きぎょうでも大だい規模きぼな被害ひがいが広ひろがるおそれがあるということです。

新型しんがたコロナでサイバーリスクが増加ぞうか

新型しんがたコロナウイルスの影響えいきょうでテレワークなど社外しゃがいから職場しょくばのネットワークにアクセスする機会きかいが増ふえていることから、企業きぎょうを狙ねらうサイバー攻撃こうげきへの脅威きょういが高たかまっています。

狙ねらわれやすいのは、テレワークの際さいによく使つかわれる、自宅じたくから会社かいしゃのパソコンを操作そうさする「リモートデスクトップ」と呼よばれるシステムや、ファイルを共有きょうゆうするクラウドシステムのサーバーなどです。

インターネット上じょうには、システムにアクセスするためのログイン画面がめんが公開こうかいされているケースが複数ふくすう確認かくにんされていて、日本にっぽんの企業きぎょうのものもあるということです。

こうした画面がめんが公開こうかいされているとＩＤあいでぃ-やパスワードを総そう当あたりで入力にゅうりょくする攻撃こうげきが可能かのうになるということで、仮かりに不正ふせいにアクセスされると内部ないぶの情報じょうほうを盗ぬすんだり、マルウェアを仕掛しかけたりすることが出来できます。

三井みつい物産ぶっさんセキュアディレクションの吉川よしかわ孝志たかしさんは、「今回こんかいのホンダへの攻撃こうげきのきっかけが何なにだったかは不明ふめいだが、新型しんがたコロナウイルスによって急きゅうきょテレワークを始はじめた企業きぎょうなどには、サーバーの管理かんりがぜい弱ぜいじゃくなケースもあるものとみられ、対策たいさくが必要ひつようだ」と話はなしています。