河井前ぜん法相・案あん里議員ぎいんを逮捕たいほ 参院選での買収の疑い 東京地検

東京地検特捜部ぶなどの調しらべによりますと、河井前ぜん大臣だいじんは去年きょねん7月つきの参議院さんぎいん選挙せんきょをめぐり、妻つまの案あん里議員ぎいんが立候補を表明した去年きょねん3月つき下旬げじゅんから8月つき上旬じょうじゅんにかけて票ひょうの取りまとめを依頼いらいした報酬ほうしゅうとして、地元じもと議員ぎいんや後援会かい幹部かんぶら91人にんに合あわせておよそ2400万まん円えんを配くばったとして公職選挙せんきょ法ほう違反いはんの買収の疑いが持もたれています。

また、案あん里議員ぎいんも河井前ぜん大臣だいじんと共謀し5人にんに対して170万まん円えんを配くばった疑いが持もたれています。

案あん里議員ぎいんは去年きょねん3月つき、参議院さんぎいん広島選挙せんきょ区くで自民党本部ほんぶの支援を受うけて、党とうの2人にん目めの候補こうほとして擁立され、地元じもとの県連組織そしきが推す当時とうじの現職と保守ほしゅ分裂ぶんれつの激はげしい選挙せんきょ戦せんの末すえに初はつ当選とうせんしました。

一方いっぽう、法務副ふく大臣だいじんや総理大臣だいじん補佐官を歴任した河井前ぜん大臣だいじんは参議院さんぎいん選挙せんきょの後のち、法務大臣に就任しゅうにんしましたが、去年きょねん10月つきに選挙せんきょ違反いはんの疑いが週刊誌に報ほうじられ辞任しました。

案あん里議員ぎいんの陣営が、いわゆるウグイス嬢じょうに違法な報酬ほうしゅうを支払しはらった疑惑ぎわくをきっかけに始はじまった一連いちれんの事件じけんは、法務行政ぎょうせいのトップだった前ぜん法務大臣の夫妻ふさいによる、地元じもと政界を巻き込まきこんだ前例ぜんれいのない買収事件じけんに発展はってんしました。

河井夫妻ふさいは17日にち、自民党を離党しましたが、関係かんけい者しゃによりますと、夫妻ふさいは違法な行為こういはしていないなどとして、議員ぎいん辞職じしょくはしない意向いこうを示しめしているということです。

自民党本部ほんぶ 地元じもと県連の反発はんぱつ振り切ふりきり擁立

定員ていいん2の参議院さんぎいん広島選挙せんきょ区くでは、平成16年ねんの参議院さんぎいん選挙せんきょ以降いこう、自民党じみんとうと旧きゅう民主みんしゅ党とう系けいで議席を分け合わけあってきましたが、去年きょねん7月つきの選挙せんきょでは自民党じみんとうが、高たかい支持しじ率りつなどを背景はいけいに、当時とうじの現職だった溝手顕正氏しに加くわえて、2人にん目めの候補こうほとして新人しんじんの河井案あん里議員ぎいんを擁立ようりつしました。

自民党の広島県連は、2人にん目めの擁立は組織そしきが割われて、将来しょうらいに禍根を残のこしかねないとして、反対はんたいしましたが、党とう本部ほんぶは、これを振り切る形かたちで擁立ようりつを決定けっていしました。

これによって地元じもとの県連からは強つよい反発はんぱつがあがり、溝手氏しを応援おうえんする地元じもとの県連けんれんと案あん里議員ぎいんを推す党とう本部ほんぶに分わかれ、事実じじつ上じょう、保守ほしゅ分裂ぶんれつの激はげしい選挙せんきょ戦せんになりました。

その結果けっか、トップで当選とうせんした野党やとう系けいの候補こうほに次ついで、案あん里議員ぎいんが2議席目めで初はつ当選とうせんし、溝手氏しは落選しました。

疑惑ぎわく浮上から逮捕たいほまでの経緯けいいは

およそ8か月前まえまで法務行政ぎょうせいのトップだった前ぜん法務大臣の夫妻ふさいによる前例ぜんれいのない選挙せんきょ違反いはん事件じけん。一連いちれんの経緯けいいをまとめました。

河井案あん里参議院さんぎいん議員ぎいんの陣営の選挙せんきょ違反いはん疑惑ぎわくが最初さいしょに浮上したのは去年きょねん10月つき。去年きょねん7月つきの参議院さんぎいん選挙せんきょでいわゆるウグイス嬢じょうに法律ほうりつの規定きていを上回うわまわる報酬ほうしゅうを支払しはらっていた疑惑ぎわくなどが週刊誌で報ほうじられ、選挙せんきょ後ごの内閣ないかく改造かいぞうで、法務大臣だいじんに就任しゅうにんしたばかりだった夫おっとの河井克行前ぜん大臣だいじんは就任しゅうにんからわずか50日にち後ごに辞任しました。

事件じけんが動うごいたのはことし1月つき15日にち。広島地方ちほう検察庁はウグイス嬢じょうに違法な報酬ほうしゅうを支払しはらった公職選挙せんきょ法ほう違反いはんの疑いで広島ひろしま市内にある河井夫妻ふさいの事務所じむしょや自宅マンションの捜索そうさくに乗り出のりだしました。

河井夫妻ふさいはこの日ひの夜よる、ぞれぞれ取材しゅざいに応おうじましたが、捜査そうさ中ちゅうであることを理由りゆうに疑惑ぎわくには答こたえず、離党や議員ぎいん辞職じしょくは否定ひていしました。

およそ1か月半はん後ごの3月つき3日にち、広島地検はウグイス嬢じょうに違法な報酬ほうしゅうを支払しはらったとして夫妻ふさいの公設秘書ひしょらを公職選挙せんきょ法ほう違反いはんの運うん動員どういん買収の疑いで逮捕たいほ。

河井夫妻ふさいの議員ぎいん会館かいかんの事務所じむしょも捜索そうさくし、その後、夫妻ふさいから任意で事情じじょう聴取しました。

検察当局は一連いちれんの捜査そうさの過程かていで現金げんきんの配布はいふ先さきとみられる広島県内の市長や町長、地元じもと議員ぎいん、それに後援会かい幹部かんぶなど合あわせて100人にん以上いじょうの名前なまえや金額きんがくが記載きさいされた複数ふくすうのリストを押収。

河井夫妻ふさいが保守ほしゅ分裂ぶんれつの激はげしい選挙せんきょ戦せんのさなかに票ひょうの取りまとめを依頼いらいする目的もくてきで、幅広い関係かんけい者しゃに現金げんきんを配くばっていた大規模きぼな現金げんきん買収の疑いが浮上しました。

検察当局は東京地検特捜部ぶなどの検事けんじを広島に派遣はけんして捜査そうさ態勢たいせいを拡充かくじゅう。ウグイス嬢じょうに対する運うん動員どういん買収の罪つみで夫妻ふさいの公設秘書ひしょ2人にんを起訴したあとの3月つき下旬げじゅんからはリストに記載きさいされた地元じもと議員ぎいんなどの一斉いっせい聴取に乗り出のりだします。

その結果けっか、現金げんきんが配くばられた疑いがある地元じもと議員ぎいんら100人にん近ちかくの大半たいはんが河井夫妻ふさいから現金げんきんを受け取うけとったことを認みとめました。

このうち、安芸太田町まちの小坂真治町長は報道陣の取材しゅざいに河井前ぜん大臣だいじんから現金げんきん20万まん円えんを受け取うけとったことを認みとめ、4月つき9日にち、道義的てき責任せきにんを取とるとして辞任。

小坂前ぜん町長は、河井前ぜん大臣だいじんから「保守ほしゅ系けいの票ひょうを分わけることができれば、自民党じみんとうの2人にんが当選とうせんできる」などと話はなしをされ、帰り際に現金げんきんが入はいった白しろい封筒ふうとうを渡わたされたと説明せつめいしました。

検察は地元じもと政界を巻き込まきこんだ大規模きぼな買収が行おこなわれた疑いがあるとみて、その後も複数ふくすうの県議会議員ぎいんや市議会議員ぎいんの自宅や事務所じむしょなどを次々つぎつぎに捜索そうさく。

4月つき28日にちには、広島県けん議会ぎかいの自民党系けいの3つの会派の控え室を捜索そうさくし、広島ひろしま県けんの湯崎知事ちじは記者きしゃ団に対して「議会ぎかいという神聖しんせいな場ばに強制きょうせい捜査そうさが入はいる深刻しんこくで重大じゅうだいな事態じたいだ。関係かんけい者しゃには必要ひつような説明せつめい責任せきにんを果はたしてもらいたい」と述のべました。

ＮＨＫえぬえいちけいの取材しゅざいに対しても、少すくなくとも10人にんを超こえる地方ちほう議員ぎいんや後援会かい幹部かんぶらが去年きょねん3月つき以降いこう、河井前ぜん大臣だいじんや案あん里議員ぎいんから「陣中見舞みまい」や「当選とうせん祝いわい」などの名目で数すう万まん円えんから数すう十じゅう万まん円えんの現金げんきんを受け取うけとったと証言しょうげん。

そのうち複数ふくすうは違法性せいの認識にんしきを認みとめましたが、「後日、返金した」などと説明せつめいする人ひともいました。

検察当局は、大型連休れんきゅうの後半に改あらためて河井夫妻ふさいを任意で事情じじょう聴取しました。

そして、検察当局は一連いちれんの捜査そうさの結果けっか、河井前ぜん大臣だいじんが票ひょうの取りまとめを依頼いらいする目的もくてきで、地元じもと議員ぎいんや後援会かい幹部かんぶら100人にん近ちかくに現金げんきんおよそ2400万まん円えんを配くばり、案あん里議員ぎいん自身じしんも現金げんきん百ひゃく数すう十じゅう万まん円えんを配くばっていた疑いがあると判断はんだん。

新型コロナウイルスの感染かんせん拡大かくだいや定年ていねんが延長えんちょうされた東京高等こうとう検察庁の黒川検事けんじ長ちょうが賭かけマージャンで辞職じしょくした問題もんだいなども踏ふまえ、国会こっかいの閉会へいかいを待まって河井夫妻ふさいの逮捕たいほに踏み切ふみきったとみられます。

河井前ぜん大臣だいじんと案あん里議員ぎいんは17日にち、これ以上いじょう党とうに迷惑めいわくをかけたくないなどとして自民党に離党届を提出ていしゅつし、受理されました。

関係かんけい者しゃによりますと、河井夫妻ふさいは、違法な行為こういはしていないなどとして、議員ぎいん辞職じしょくはしない意向いこうを示しめしているということです。

夫婦ふうふ二に人にん三脚で政治せいじ活動かつどう

河井克行前ぜん法務大臣だいじんと、妻つまの案あん里参議院さんぎいん議員ぎいんは、夫婦ふうふそろって政治せいじ家かとして、長ながく同おなじ事務所じむしょに拠点を構かまえ、二に人にん三脚さんきゃくで活動かつどうを続つづけてきました。

克行氏しは、衆議院しゅうぎいん広島3区く選出の当選とうせん7回かい。安倍総理大臣だいじんや菅官房長官ちょうかんに近ちかいとされ、総理そうり大臣だいじん補佐官かんや、自民党の総裁外交がいこう特別とくべつ補佐ほさなどを歴任してきました。

妻つまの案あん里議員ぎいんは、この間このかん、同おなじ地域ちいきを地盤じばんとする県議会議員ぎいんを務つとめながら、夫おっとの国政活動かつどうをサポートしてきました。

去年きょねん7月つきの参議院さんぎいん選挙せんきょで、案あん里議員ぎいんは、定員ていいん2人にんの広島選挙せんきょ区くに、自民党の2人にん目めの候補こうほとして擁立されて、みずからも国政進出しんしゅつを目指めざすことになり、夫おっとの克行氏しが選挙せんきょ運動うんどうを支ささえました。

案あん里議員ぎいんは、党とう本部ほんぶをあげた支援を受うけて、地元じもとの県連組織そしきが推おした当時とうじの現職だった溝手顕正氏しを、保守ほしゅ分裂ぶんれつさながらの激はげしい選挙せんきょ戦せんの末すえに破やぶって初はつ当選とうせん。

参議院さんぎいん選挙せんきょを終おえて、去年きょねん9月つき。克行氏しは、法務大臣だいじんとして初はつ入閣を果はたした一方いっぽう、案あん里氏しは、自民党の二に階かい幹事長ちょうが率ひきいる派閥、二に階かい派はに入会し、国政活動かつどうを本格ほんかく化させました。

しかし、これからわずか2か月たらずの去年きょねん10月つき。案あん里氏しの参議院さんぎいん選挙せんきょの際さい、陣営がウグイス嬢じょうに違法な報酬ほうしゅうを支払しはらっていた疑惑ぎわくが週刊誌で報ほうじられました。

克行氏しは、週刊誌の発売はつばい当日とうじつに法務大臣だいじんを辞任。その後、検察当局による捜査そうさが始はじまり、河井夫婦ふうふ2人にんがみずから地元じもとの地方ちほう議員ぎいんや後援会かい幹部かんぶなどに、現金げんきんを渡わたしていた買収の疑いも浮上しました。

夫婦ふうふともに買収行為こういを否定ひていしていますが、いずれも一連いちれんの疑惑ぎわくについて詳くわしい事実じじつ関係かんけいの説明せつめい責任せきにんを果はたしていません。