日本の女子選手としてこの競技で初めてとなるメダルを獲得した梶原悠未選手、24歳。世界トップレベルの身体能力だけでなく、ライバルや戦術、さらにはみずからの心の動きまで研究した結果が最高の形で実を結びました。
梶原選手は小学生のときは競泳に打ち込み全国大会にも出場するなど当時から身体能力の高さを見せ、高校入学とともに自転車競技を始めました。そして、競技を初めて2年もたたない高校2年生のときにジュニアの全日本選手権で優勝を果たすなど瞬く間に才能を開花させました。
身長は1メートル55センチ、パワフルにペダルをこぐ欧米の選手に比べるとひときわ小柄ですが、日本代表の中距離担当、グリフィンヘッドコーチは「悠未は世界トップレベルの驚くべき瞬発力と持久力を兼ね備えたすばらしい選手だ」と話し、その世界レベルの身体能力を高く評価しています。
一方で、梶原選手の強さを支えたのがその「研究心」です。去年、筑波大学を卒業し、大学院に進学しましたが、卒業論文のテーマがオムニアムの種目の1つ「エリミネイションレース」でした。
オムニアムは1日で4つの種目を行い、合計ポイントで順位を競いますが3種目目に行われる「エリミネイションレース」は2周ごとに最下位の選手が脱落していく種目です。梶原選手は戦略性の高いこの種目が勝負の鍵になると考えて大学で研究を続けました。
必ずしも常にトップをねらう必要はない中、最下位を回避しながらレースを進めていくための戦術の組み立て、レース中や最終種目に向けた体力の温存などみずからの経験を含めて研究を続けました。生活のすべてをオムニアムにささげてきた梶原選手は、去年3月の世界選手権で日本人女子選手として初めて優勝を果たし、一躍金メダル候補に名乗りを上げました。
しかしその直後、東京オリンピックの延期が決定します。世界の選手から追いかけられる存在となった一方で、新型コロナで国際大会での実戦の機会がなくなった1年という期間。梶原選手はあくまで前向きに捉えていました。
「強くなる時間が1年増えたと思えばいい。金メダルを確実にするメンタルを鍛える」と今度は精神面の成長を目指しました。
毎日、練習や朝晩の食事を支える母親、有里さんや、グリフィンヘッドコーチとの対話を重ねてみずからの気付きや不安などをノートに書き出すように。
「寝ても覚めても金メダルを取ることを考えている」と金メダルへのモチベーションを保ち続けました。
男子選手を世界トップレベルの女子選手と見立てて練習を重ね、男子と混合で走るレースにも積極的に出場して実戦感覚も維持しました。そしてコロナ禍のなか、オリンピックに向けた最後の国際大会となったことし5月のネーションズカップ。
オリンピックの前哨戦でひとまわり大きくなった姿を見せ金メダルを獲得し「強くなった1年だった」という手応えをつかんで本番の舞台を迎えました。
そして8日、序盤の2種目を終え2位で迎えたエリミネイションレース。ライバルたちが次々と脱落する中、研究を重ねてきたこの種目で絶妙の駆け引きを見せて2位に入り大きくメダルを引き寄せました。
金メダル候補という大きなプレッシャーの中、1年間の成長を思う存分発揮し見事に日本の女子選手として自転車競技で初のメダルを手にしました。