中国ちゅうごく 漁りょう解禁かいきんで漁船ぎょせんが一斉いっせいに出港しゅっこう 尖閣せんかく沖おきの操業そうぎょう管理かんりが焦点しょうてん

中国ちゅうごく政府せいふは漁業ぎょぎょう資源しげんの保護ほごを目的もくてきに、東シナ海ひがししなかいや南シナ海みなみしなかいで5月つきから続つづけていた独自どくじの禁漁きんぎょ期間きかんを16日にち解除かいじょしました。

これを受うけて、各地かくちの港みなとでは漁船ぎょせんが一斉いっせいに出港しゅっこうしていて、このうち南部なんぶの福建ふっけん省しょうの港みなとでは、多おおくの漁船ぎょせんが、漁りょうの解禁かいきんを祝いわう爆竹ばくちくを鳴ならしながら、中国ちゅうごく海うみ警局きょくの船ふねが誘導ゆうどうする中なか、相次あいついで出港しゅっこうしました。

対象たいしょうとなる海域かいいきの中なかには沖縄おきなわ県けんの尖閣せんかく諸島しょとうもあり、4年ねん前まえには、200隻せきから300隻せき程度ていどの中国ちゅうごく漁船ぎょせんが周辺しゅうへん海域かいいきを航行こうこうして、一部いちぶの漁船ぎょせんと中国ちゅうごく海うみ警局きょくの船ふねが日本にっぽんの領海りょうかいに侵入しんにゅうし、緊張きんちょうが高たかまりました。

これについて地元じもとの複数ふくすうの漁師りょうしはＮＨＫえぬえいちけいの取材しゅざいに対にたいし、「今回こんかいは、当局とうきょくから尖閣せんかく諸島しょとうからは離はなれて操業そうぎょうするよう指示しじされている」などと話はなしていました。

また、現地げんちでは「敏感びんかんな海域かいいきに行いき、魚さかなをとることを厳きびしく禁止きんしする」という横断幕おうだんまくも掲かかげられていました。香港ほんこんや台湾たいわんなどを巡めぐってアメリカとの対立たいりつを深ふかめる中国ちゅうごく政府せいふが、日本にっぽんとの摩擦まさつをさけるため、中国ちゅうごく漁船ぎょせんの管理かんりを強化きょうかするかどうかが焦点しょうてんです。

出港しゅっこうに備そなえる漁師りょうしたちは

中国ちゅうごく南部なんぶ、福建ふっけん省しょう石せき獅の港みなとには中国ちゅうごく国旗こっきを掲かかげた数すう百ひゃく隻せきの漁船ぎょせんが停泊ていはくし、漁りょうの解禁かいきんを前まえに漁師りょうしたちが出港しゅっこうに向むけた準備じゅんびを行おこなっていました。

この地域ちいきでは、およそ500キロ離はなれた尖閣せんかく諸島しょとうの近ちかくの海域かいいきまで漁りょうに向むかう船ふねもあり、漁師りょうしたちは漁船ぎょせんに魚さかなを冷ひやす氷こおりや食料しょくりょうなどを運はこびこみ出港しゅっこうに備そなえていました。

この地域ちいきの漁船ぎょせんには「中国ちゅうごく版ばんＧＰＳ」とも呼よばれる中国ちゅうごく独自どくじの位置いち情報じょうほうシステムが搭載とうさいされ、中国ちゅうごく当局とうきょくは漁船ぎょせんが操業そうぎょうする場所ばしょを把握はあくできるようになっていて、漁船ぎょせんの船長せんちょうは、「われわれが行おこなってはいけない海域かいいきに入はいるとすぐに呼び戻よびもどされる」と話はなしていました。

また、尖閣せんかく諸島しょとうについては「島しまはわれわれ中国ちゅうごくのものだ」と主張しゅちょうする一方いっぽう「島しまの近ちかくまでいくこともあるが最近さいきんは当局とうきょくが行いかせないようにしている。中国ちゅうごく海うみ警局きょくの船ふねがあちこちパトロールして行いかないように通知つうちするのでわれわれも行いかない」と述のべ、中国ちゅうごく当局とうきょくから周辺しゅうへん海域かいいきでの漁りょうを控ひかえるよう指示しじを受うけることもあると説明せつめいしていました。

一方いっぽう、別べつの漁師りょうしは、尖閣せんかく諸島しょとう周辺しゅうへんの海域かいいきについて「島しまの周辺しゅうへん海域かいいきに行いったことがあるがパトロールしている海上かいじょう保安庁ほあんちょうの船ふねや航空こうくう機きがいた。島しまには周辺しゅうへんに魚さかながいない時ときには行いく」と話はなしていました。

中国ちゅうごくにとっての尖閣せんかくの重要じゅうよう性せい

中国ちゅうごく政府せいふは、尖閣せんかく諸島しょとう周辺しゅうへんの海底かいていに石油せきゆなどの資源しげんが豊富ほうふに埋蔵まいぞうされている可能かのう性せいが明あきらかになったあとの1970年代ねんだいから尖閣せんかく諸島しょとうに対にたいする領有りょうゆう権けんを主張しゅちょうするようになり、周辺しゅうへんの豊ゆたかな漁場ぎょじょうや天然てんねん資源しげんの権益けんえきを確保かくほするねらいがあるとみられます。

また、尖閣せんかく諸島しょとうが中国ちゅうごくが防衛ぼうえいラインとみなし、太平洋たいへいようと東シナ海ひがししなかいを隔へだてる「第だい1列島れっとう線せん」のそばに位置いちすることから戦略せんりゃく的てきな観点かんてんから重視じゅうししているという見方みかたもあります。

さらに、一いち党とう支配しはいを続つづける中国ちゅうごく共産党きょうさんとうが求心力きゅうしんりょくを保たもつためにも一いち度ど、領有りょうゆう権けんを主張しゅちょうした問題もんだいで譲歩じょうほすることは難むずかしく今後こんごも強硬きょうこうな姿勢しせいを続つづけるものとみられます。

中国ちゅうごく漁船ぎょせんをめぐる過去かこの問題もんだい

尖閣せんかく諸島しょとう周辺しゅうへんでは、これまでにも中国ちゅうごく漁船ぎょせんが日本にっぽんの領海りょうかいに侵入しんにゅうして問題もんだいとなるケースがたびたび起おきています。

1978年ねんには、100隻せき以上いじょうの漁船ぎょせんが尖閣せんかく諸島しょとうの周辺しゅうへんに現あらわれ、このうち数すう十じゅう隻せきが日本にっぽんの領海りょうかいに侵入しんにゅうしたほか、一部いちぶの漁船ぎょせんは機銃きじゅうで武装ぶそうしていて海上かいじょう保安庁ほあんちょうの巡視じゅんし船せんが対応たいおうに当あたりました。

また、2010年ねん9月つきには尖閣せんかく諸島しょとう沖おきの領海りょうかい内ないで中国ちゅうごく漁船ぎょせんが海上かいじょう保安庁ほあんちょうの巡視じゅんし船せんに衝突しょうとつする事件じけんも起おき、船長せんちょうが公務こうむ執行しっこう妨害ぼうがいの疑うたがいで逮捕たいほされました。

中国ちゅうごく政府せいふは日本にっぽんに強つよく抗議こうぎしたほか、尖閣せんかく諸島しょとう周辺しゅうへんの海域かいいきに漁船ぎょせんの活動かつどうの管理かんりにあたるとする中国ちゅうごく公おおやけ船せんを派遣はけんするなど強硬きょうこうな対応たいおうを取り続とりつづけました。

さらに、4年ねん前まえの2016年ねん8月つきには中国ちゅうごく政府せいふが独自どくじに設もうけている禁漁きんぎょ期間きかんが終おわったあと、尖閣せんかく諸島しょとう周辺しゅうへんの海域かいいきに200隻せきを超こえる中国ちゅうごく漁船ぎょせんが押し寄おしよせ、一部いちぶの船ふねが中国ちゅうごく海うみ警局きょくの船ふねとともに日本にっぽんの領海りょうかいに侵入しんにゅうするなど緊張きんちょうが高たかまりました。

中国ちゅうごくの現状げんじょう変更へんこうの試こころみとねらい

中国ちゅうごく政府せいふは沖縄おきなわ県けんの尖閣せんかく諸島しょとうについて、「中国ちゅうごく固有こゆうの領土りょうどだ」として、領有りょうゆう権けんの主張しゅちょうを強つよめてきました。

2008年ねん12月つきには、法ほう執行しっこう機関きかんに所属しょぞくする中国ちゅうごく公おおやけ船せん2隻せきが初はじめて尖閣せんかく諸島しょとう周辺しゅうへんの日本にっぽんの領海りょうかいに侵入しんにゅうし、現状げんじょう変更へんこうを試こころみる姿勢しせいが明あきらかになりました。

2010年ねん9月つきに尖閣せんかく諸島しょとう周辺しゅうへんの日本にっぽんの領海りょうかいで中国ちゅうごく漁船ぎょせんと海上かいじょう保安庁ほあんちょうの巡視じゅんし船せんが衝突しょうとつした事件じけん以降いこうは、中国ちゅうごく公おおやけ船せんが尖閣せんかく諸島しょとう周辺しゅうへんの海域かいいきを航行こうこうする頻度ひんどが増ふえるようになります。

2012年ねん9月つきに日本にっぽん政府せいふが尖閣せんかく諸島しょとうを国有こくゆう化かして以降いこうは、活動かつどうを一気いっきに活発かっぱつ化かさせ、領海りょうかいのすぐ外側そとがわの接続せつぞく水域すいいきでは悪あく天候てんこうの日ひを除のぞいて連日れんじつ、航行こうこうするようになり領海りょうかいへの侵入しんにゅうも繰り返くりかえし行おこなうようになりました。

ことしに入はいってからは活動かつどうを一層いっそう活発かっぱつにしていて4月つきから今月こんげつ2日にちにかけては中国ちゅうごく海うみ警局きょくの船ふねが過去かこ最長さいちょうとなる111日にち連続れんぞくで接続せつぞく水域すいいき内ないで航行こうこうを続つづけました。

5月つきには、尖閣せんかく諸島しょとう周辺しゅうへんの日本にっぽんの領海りょうかいで中国ちゅうごく海うみ警局きょくの船ふねが日本にっぽんの漁船ぎょせんを追尾ついびして一時いちじ、緊張きんちょう状態じょうたいとなり、中国ちゅうごく政府せいふは「中国ちゅうごくの領海りょうかいで違法いほうに操業そうぎょうしていたためだ」などと正当せいとう化かしています。

中国ちゅうごく海うみ警局きょくは近年きんねん、大型おおがた化かした船ふねを投入とうにゅうしているほかおととしの機構きこう改革かいかくで政府せいふ組織そしきから軍ぐんの指揮しき下かにある「武装ぶそう警察けいさつ」に編入へんにゅうされて軍ぐんの影響えいきょう力りょくが増まし、体制たいせいが強化きょうかされていると指摘してきされています。

中国ちゅうごく政府せいふとしては、尖閣せんかく諸島しょとう周辺しゅうへんでの公おおやけ船せんの活動かつどうを既成きせい事実じじつとして積み重つみかさねることで、領有りょうゆう権けんの主張しゅちょうを強化きょうかするねらいがあるとみられます。

中国ちゅうごくの専門せんもん家か「漁りょうは主権しゅけんを示しめす」

中国ちゅうごくの海洋かいよう政策せいさくに詳くわしい中国ちゅうごく海洋かいよう大学だいがく海洋かいよう発展はってん研究けんきゅう院いんの金きむ永えい明あきら研究けんきゅう員いんは「禁漁きんぎょ期間きかんが終おわれば福建ふっけん省しょうや浙江せっこう省しょうの沿海えんかい部ぶの多おおくの漁民ぎょみんが島しまの海域かいいきに行いき集中しゅうちゅう的てきに魚さかなを捕とる可能かのう性せいがある」と述のべ、中国ちゅうごく漁船ぎょせんが尖閣せんかく諸島しょとう周辺しゅうへんの海域かいいきで操業そうぎょうする可能かのう性せいがあるという見方みかたを示しめしています。

また、中国ちゅうごくの漁船ぎょせんや公おおやけ船せんが尖閣せんかく諸島しょとう周辺しゅうへんで活動かつどうすることについて「漁船ぎょせんがどこに行いって魚さかなを捕とるかということは、その海域かいいきに中国ちゅうごくの主権しゅけんがあり、管轄かんかつ権けんを持もつことを示しめす実践じっせん的てきな行為こういだ。また、中国ちゅうごく海うみ警局きょくは法律ほうりつ上じょう、漁民ぎょみんを保護ほごし管理かんりする職権しょっけんを持もっている」と述のべ、中国ちゅうごくの領有りょうゆう権けんを示しめすことにつながると指摘してきしています。

そのうえで中国ちゅうごく漁船ぎょせんの操業そうぎょうの範囲はんいについて「どのようなエリアに行いくのかは、みずから決きめるものだが政府せいふや地方ちほう機関きかんが導みちびくこともできる」などとして中国ちゅうごく当局とうきょくは一定いっていの影響えいきょう力りょくを持もつと説明せつめいしています。

専門せんもん家か「徐々じょじょに支配しはい奪うばうねらい」

中国ちゅうごくの現代げんだい政治せいじが専門せんもんの東京とうきょう大学だいがく公共こうきょう政策せいさく大学院だいがくいんの高原たかはら明生あきお教授きょうじゅは中国ちゅうごくが尖閣せんかく諸島しょとうの領有りょうゆう権けんを主張しゅちょうする動うごきを強つよめていることについて「中国ちゅうごくが主権しゅけんを主張しゅちょうする立場たちばから降おりることはありえない。国力こくりょくの増大ぞうだいとともにみずからの領土りょうどだと主張しゅちょうし続つづけながら周辺しゅうへんでのパトロールを強化きょうかし、いつかは自分じぶんの実効じっこう支配しはいのもとに置おきたいと考かんがえているのだろう」と分析ぶんせきしています。

そして中国ちゅうごくの戦略せんりゃくについてサラミを薄うすく、少すこしずつ切きっていくことに例たとえて「『サラミ・スライシング』、実力じつりょくをもって少すこしずつ状況じょうきょうを変かえていくのが彼かれらの全般ぜんぱん的てきなプランだ。

派遣はけんする船ふねや回数かいすうを増ふやし実効じっこう支配しはいを徐々じょじょに奪うばっていくのが大おおきな方針ほうしんだろう」と指摘してきしています。

また、日本にっぽんが取とるべき対応たいおうについては「日本にっぽん側がわもできるかぎり、海上かいじょう保安庁ほあんちょうの能力のうりょくを強化きょうかするといった対応たいおうが必要ひつようだ。日本にっぽんと同おなじような状況じょうきょうにある国くにも多おおいので他たの国々くにぐにと連携れんけいを深ふかめてネットワークを広ひろげていくことも当然とうぜんやるべきだ」などと話はなしています。

そのうえで尖閣せんかく諸島しょとう周辺しゅうへんの海域かいいきで今後こんご、日本にっぽんと中国ちゅうごくの船舶せんぱくが偶発ぐうはつ的てきに衝突しょうとつする可能かのう性せいもあるとして「万が一まんがいち発生はっせいした場合ばあいにはどう対応たいおうするかということを含ふくめて、お互おたがいによく話し合はなしあっておく必要ひつようがある」として両国りょうこくの当局とうきょく間かんの意思いし疎通そつうが重要じゅうようだとしています。