スペインには予選リーグで敗れていて、序盤は体格で上回る相手にボールを保持され、攻め込まれる展開が続きました。
それでもINAC神戸レオネッサのゴールキーパー、スタンボー華選手が好セーブを立て続けに見せて得点を与えませんでした。
そして前半38分、日本は、日テレベレーザに所属するミッドフィルダーの宮澤ひなた選手がゴール前で巧みな切り返しを見せて相手のマークをはずし右足でミドルシュートを決めて先制しました。
さらに後半に入ると日本は、12分にセレッソ大阪堺レディースのフォワード、宝田沙織選手がチームトップに並ぶ今大会5得点目となるゴールを決めて追加点を奪い、20分には、韓国でプレーしている司令塔の長野風花選手が今大会初ゴールを決めて3対0とリードを広げました。
このあとスペインに1点を返されましたが、日本は3対1で勝ち、この大会出場5回目で初優勝を果たしました。
また、女子のワールドカップは現在、年齢制限のない大会に加えて20歳以下と17歳以下の3つの大会が開かれていますが、日本は、今回の優勝で、すべての年代の大会で優勝した初めての国となりました。
池田監督「選手たちを信じていた」
池田太監督は、「このチームがスタートしたときに世界一になりたいと選手たちが目標を掲げ、そのサポートがしっかりできたと思う。スペインは前線で力のある選手が多いが、選手たちを信じていた。選手たちは本当によく戦ったと思う」と喜びを話しました。
決勝で今大会初ゴールを決めたミッドフィルダーで司令塔の長野風花選手は、「優勝はチームのみんなで目指してきたことなので本当にうれしい。いいタイミングでボールがもらえてゴールを決めることができた。大好きなこのチームで戦えてよかった。日本からもたくさんの応援がもらえたからこそ世界一がつかめたと思う」と話しました。
若い世代が存在感 大きな刺激に
サッカー女子の20歳以下のワールドカップで日本が優勝し、若い選手たちが存在感を示したことは、来年、ワールドカップを控える年齢制限のない日本代表「なでしこジャパン」にとっても大きな刺激となります。
来年6月にフランスで開かれる女子ワールドカップに向けて「なでしこジャパン」の高倉麻子監督がテーマに掲げているのが世代交代です。
2007年から日本サッカー協会の育成年代のコーチに就任した高倉監督が長期的に取り組んできたのは、潜在能力を持った若手を探しだし実戦経験を積ませてトップレベルに育て上げることでした。
現在の「なでしこジャパン」で活躍するともに21歳でミッドフィルダーの長谷川唯選手とディフェンダーの市瀬菜々選手は、2014年に高倉監督が優勝に導いた17歳以下のワールドカップの代表メンバーで、「高倉チルドレン」と呼ばれる選手たちです。
そして、今回優勝した20歳以下のワールドカップでも高倉監督が育てた選手たちが存在感を示しました。
特に、今回チームトップに並ぶ5得点をあげたフォワードの植木理子選手や決勝で先制ゴールを決めた宮澤ひなた選手、それに司令塔として全試合にフル出場した長野風花選手などは、すでに年齢制限のないチームにも呼ばれている期待の選手たちです。
2011年に世界の頂点に立った「なでしこジャパン」は、その後、澤穂希さんの引退などで選手が入れ代わるなか、リオデジャネイロオリンピック出場を逃すなど低迷する時期もありましたが、ことし4月のアジアカップで優勝し、再び上昇カーブを描きつつあります。
今後、高倉監督に10代のころから指導を受けて戦術が浸透している若い選手が、「なでしこジャパン」にどんどん加われば新たな力を生み出す可能性は十分にあります。
高倉監督は大会前、「20歳以下のワールドカップが終わったらその世代の選手たちを積極的に加えたい」と明言していました。
現在、インドネシアでアジア大会に臨んでいる「なでしこジャパン」の選手たちも20歳以下の代表選手を意識し、ミッドフィルダーの増矢理花選手は「若い選手たちが非常にいいプレーをしていて刺激を受ける」と話していました。
今回、存在感を示した新たな顔ぶれも加わって、来年のワールドカップに臨む最終メンバーの座をかけた争いが本格的に始まります。