河川の災害に詳しい東京理科大学の二瓶泰雄教授が、高潮が川に与えた影響を調べたところ、兵庫県内を流れる複数の川で海水が逆流したことを示す痕跡が見つかったということです。
兵庫県芦屋市を南北に流れる「宮川」では、海水が海岸から1キロほど上流の内陸にさかのぼり、芦屋市呉川町などで川の水が道路や住宅地にあふれて浸水の被害が出ていたことがわかりました。
浸水は最も深いところで27センチだったということです。
また、神戸市東灘区を南北に流れる「高橋川」は、海岸から数百mほど上流の東灘区深江本町などの住宅地で川の水があふれ、浸水は最も深いところで62センチだったということです。
二瓶教授らが高橋川で行ったシミュレーションでは、川があふれたあと水は一気に住宅街に流れ込み、20分ほどで浸水が広がっていました。
川の水があふれたのは、堤防が周辺より低くなっている場所や、堤防より低い位置に橋がかかるなどしていた場所でした。
海面の上昇の影響を受ける川は各地にあるということで、二瓶教授は「高潮の際には、海から離れていても、川を海水がさかのぼり浸水するリスクがあることを知っておく必要がある」と話しています。
芦屋 宮川 堤防低い上流で大量の水あふれる
兵庫県芦屋市を南北に流れる宮川では、近くのマンションの防犯カメラが、川が逆流してあふれたり、周辺が浸水したりする様子を捉えていました。
先月4日午後2時すぎの映像には、川が逆流して茶色く濁った水が堤防の高さにまで達し、風呂の水があふれるように道路側に流れ出す様子が確認できます。
別の角度から捉えた映像では、橋の上流側で、午後2時10分ごろから水が堤防を乗り越えて勢いよく流れ出している様子が確認できます。
午後3時ごろに別のマンションから撮影された写真では、周辺の道路が濁った水で浸水していることが確認できます。
近くで美容院を営んでいる女性は「店の入り口に土のうを用意していたが、水の勢いが強くてあっという間に店内まで水が入り込み、20センチほど浸水しました。こんなに浸水した経験は無く、とても怖かったです」と話していました。
現地を調査をした二瓶教授は、堤防の高さが上流側と下流側で異っていたことから、堤防の低かった上流側から大量の水があふれたと分析しています。
神戸 東灘区 高橋川 堤防の「切れ目」で流出か
神戸市東灘区を南北に流れる高橋川では、台風が上陸した先月4日の午後2時以降、近くの住民たちが、川があふれたり浸水したりする様子を撮影していました。
川から東に150mほど離れた場所にいた男性が午後2時13分に撮影した写真では、海岸から300mほど上流にある橋の付近から水が勢いよくあふれ出し、住宅地に流れ下っている様子が確認できます。
男性によりますと、川があふれてから15分ほどの間に水が一気に押し寄せ浸水したということです。
川から西に150mほど離れた場所に住む女性が午後2時23分に撮影した映像には、自宅の周辺が人の膝の高さまで茶色く濁った水で浸水している様子が映っています。
撮影した女性は「台所から『コポコポ』という水が逆流する音が聞こえて、おかしいと思って外に出たら泥の混じった水が来ていました」と話していました。
近所の女性は「外を見たら濁った水が押し寄せてきて、どうすることもできなかった。怖かったです」と話していました。
現地を調査した二瓶教授は、浸水が発生した場所では川にかかる橋の高さが周辺の堤防より90センチ低く、堤防が途切れたような状態になっていたため水が流れ出したと分析しています。
海から離れていても浸水のリスク
二瓶教授らは、高橋川があふれ浸水が広がる当時の様子をシミュレーションで解析しました。
それによりますと、高橋川では台風が上陸した午後2時以降、複数の橋の周辺で水があふれていることがわかります。
その後、水は道路を伝わりながら住宅街に広がって標高の低い場所に集まり、川があふれてから20分ほどで浸水は最も深い場所で60センチほどに達していたことがわかりました。
二瓶教授によりますと、勾配の緩い川の下流部には海面の上昇の影響を受けやすい「感潮域」と呼ばれる場所があり、こうした場所は各地にあるということです。
二瓶教授は「海から離れていても、『感潮域』では高潮が川をさかのぼり、浸水被害が出るリスクがあることを知っておく必要がある。行政もリスクのある場所の対策を急ぐ必要がある」と指摘しています。