「旭日大綬章」内山田竹志さん
「旭日大綬章」を受章する内山田竹志さんは愛知県出身の74歳。
昭和44年に「トヨタ自動車工業」に入社し、「トヨタ自動車」の副社長や副会長を歴任したあと、平成25年から会長を務めています。
技術者として車の開発に携わり、ガソリンエンジンに電気モーターを組み合わせて走るハイブリッド車として世界で初めて量産した初代「プリウス」の開発責任者を務め、自動車の低燃費化をリードしました。
また、経団連の副会長や日本自動車工業会の理事などを歴任し、産業経済の発展に貢献しました。
受章について、内山田さんは「日本はもとより世界各国のお客様をはじめ、多くの方々のご指導、ご支援をいただきながら共に仕事に取り組んで参った結果であり、深く感謝申し上げます。コロナ禍の困難な状況を皆様とともに乗り越え、産業、経済、社会のさらなる発展にいささかなりともお役に立てるよう、今後も引き続き微力を尽くして参る所存です」とコメントしています。
「旭日大綬章」仲井真弘多さん
「旭日大綬章」を受章する仲井真弘多さんは、81歳。
旧通産省を経て、沖縄電力の会長などを務めた後、平成18年の沖縄県知事選挙で初当選し、2期8年にわたって知事を務めました。
本土との経済格差がある沖縄県経済の底上げのため、企業誘致や雇用環境の改善、それに、主力産業である観光の振興に取り組んだほか、平成25年には、アメリカ軍普天間基地の移設計画をめぐり、政府が申請した辺野古沖の埋め立てを承認しました。
仲井真さんは、受章について「自分でもびっくりしている。正直なところ、ちょっと気恥ずかしいぐらいだ」と述べました。
政府が申請した辺野古沖の埋め立てを承認したことについては、「法律にのっとって、政府はきちんと申請し、県庁は基準にあっているか、時間をかけてチェックした。それに基づいて、何ら問題がないのであれば、承認は当たり前だと思った。目的は普天間基地の危険性除去であり、ここをしっかりやらないことには始まらない」と述べました。
また、沖縄振興や基地負担の軽減をめぐり、知事時代に向き合った当時は官房長官だった菅総理大臣について、「実践型というか、課題があればすぐにできるものはさっさとやるという、本当の政治家だった。これから新しい沖縄振興計画をつくるタイミングで、ちょうどいい方が総理大臣になられて、どんどん話を早くまとめられる予感がする」と述べました。
「旭日大綬章」中村邦夫さん
「旭日大綬章」を受章する中村邦夫さんは滋賀県出身の81歳。
平成12に旧松下電器産業、今のパナソニックの社長に就任しました。
会社はITバブル崩壊の影響で巨額の赤字に陥りましたが、中村さんは「破壊と創造」をスローガンに掲げ、創業者・松下幸之助が確立し、長年続いてきた製品別の事業部制を廃止するなど大胆な改革を進め、V字回復を果たしました。
平成19年(2007年)に経団連の副会長に就任し、日中関係の発展に尽力するとともに道州制導入を働きかけました。
国のIT新戦略や消費者庁新設、知的財産権の保護など政策提言にも力を入れました。
今回の受章について中村さんは「過分な栄誉を賜り、光栄に存じます。産業界の問題だけでなく、多岐にわたる国家課題の提言策定に参画し、豊かな暮らしの実現にいささかでも貢献できましたことは望外の喜びであります。この受章を励みとして一層精進し、社会の発展にお役に立つよう、引き続き微力をつくしてまいる所存です」とコメントしています。
「旭日小綬章」北方謙三さん
旭日小綬章を受章する小説家の北方謙三さんは、佐賀県出身の73歳。
大学在学中の昭和45年に「明るい街へ」でデビューし、昭和56年に発表した「弔鐘はるかなり」で、ハードボイルド小説の旗手として脚光を浴びました。
平成元年には南北朝時代を舞台にした「武王の門」を発表して、歴史小説の新境地を開き、平成18年には「水滸伝」全19巻で、司馬遼太郎賞を受賞しています。
また、20年にわたって直木賞の選考委員を務めるなど、日本の文学界の発展に貢献し、平成25年には紫綬褒章を受章しています。
受章について北方さんは「人よりも多く枚数を書いて、それでも締め切りも落とさずに長くやってきた作家生活について褒めていただける、それによって小説の存在をもう少し高めることができるかもしれないという気持ちで、うれしかったです」と述べ、今後については「まず今書いている作品に全身全霊で取り組んでよりよい作品にしたいという思いです。生きることそのものが書くことだと自覚しているので、これからも物語を書いていく。物語を書いていくのが私の使命です」と話していました。
「旭日小綬章」舘ひろしさん
旭日小綬章を受章する俳優の舘ひろしさんは、名古屋市出身の70歳。
昭和50年にロックバンド「クールス」を結成してレコードデビューし、翌年には映画「暴力教室」に出演して俳優としての活動も始めました。
その後、石原裕次郎さんが設立した芸能事務所「石原プロモーション」に入って、民放のドラマ「西部警察」シリーズや「あぶない刑事」シリーズ、それにNHKのスペシャルドラマ「坂の上の雲」や連続テレビ小説「純と愛」など、多くの作品に出演しています。
ハードボイルドな刑事からコミカルな役まで幅広い人物を演じ、おととしには、映画「終わった人」で、カナダの「モントリオール世界映画祭」の最優秀男優賞を受賞して話題となりました。
今回の受章について舘さんはコメントを出し「思いもかけぬ栄誉を賜り、大変光栄です。これまで支えてくださいました皆様に、改めて心より感謝申し上げます」としたうえで、「先頃まで、その背中を追いかけて参りました、渡と同じ章をいただいたことを糧に、これからも精進を重ねる所存です」と事務所の先輩で、ことし8月に亡くなった渡哲也さんへの思いをつづっています。
「旭日小綬章」服部幸應さん
旭日小綬章を受章する料理評論家の服部幸應さんは、東京都出身の74歳。
大学を卒業したあと、父親が創立した料理学校「服部栄養専門学校」で講師を務めて、31歳の時に校長に就任し、以来40年以上にわたって栄養士や調理師の育成にあたってきました。
そのかたわら、テレビの料理番組に監修などで携わるだけではなく、解説者や審査員としてみずから出演し、豊富な知識を生かした語り口で、広く知られる存在となりました。
また、長年にわたって「食育」の必要性を訴え、農林水産省の「食育推進評価専門委員会」の座長を務めるなど、国内での普及に取り組んでいます。
日本におけるフランス料理の普及にも力を尽くし、平成27年にはフランスで最も名誉ある「レジオン・ドヌール勲章」を受章しています。
今回の受章について服部さんは「今までの実績が評価されたということでいただけたのは大変うれしいですが、周りの皆さんの協力があって初めて実現できることなので、そうした方々の力の結果だと思っています。日本の教育は知育・徳育・体育という3つの柱できていますが、それに食育が加わるとバランスが取れるということを分かってもらえると大変うれしいし、それにつなげたい。今回の受章をむだにせず、前向きに取り組んでいきたいと思います」と話しています。
「旭日大綬章」ジョセフ・ダンフォード氏
「旭日大綬章」を受章するアメリカのジョセフ・ダンフォード氏は、去年までアメリカ軍の制服組のトップ、統合参謀本部議長を務め、日米の安全保障面での連携の強化に取り組んできました。
今回の受章に合わせて、ダンフォード氏が、NHKのインタビューに答えました。
この中で、ダンフォード氏は「本当に光栄だ。統合参謀本部議長を務めたものとして、インド太平洋地域で最も重要な二国間関係に力を尽くしてきたすべての人たちを代表し受章したい。今回の受章は両国の緊密さを際立たせるものだと思う」と喜びを語りました。
そのうえで、日米関係について「アメリカと日本は国益の追求、とりわけ太平洋地域での繁栄と安定の実現のため、あらゆるレベルで価値観を共有している」と述べ、両国の関係は揺るぎないと強調しました。
また、アメリカ海兵隊の一員として1980年に初めて来日して以降、たびたび訪れたという日本について「日本の自衛隊とともに演習を行ったことや隊員たちと個人的に親しい関係を築いたことが記憶に残っている。日本には3回、配置されたが、思い出すのは日本の人たちのもてなしの心だ」と述べました。
ダンフォード氏は、今後の日米関係について「私は軍人だが、日米間の安全保障関係が最も重要なわけではない。大切なのは人と人の関係だ。社会的、経済的、政治的な関係であり、互いに利益をもたらす関係だ。日本とアメリカは重要な価値観を共有している。私たちが直面する課題は一国だけでは解決できないものだ」と述べ、幅広い分野で関係の強化がさらに進むことに期待を示しました。
「旭日大綬章」ジャンクロード・ユンケル氏
「旭日大綬章」を受章するジャンクロード・ユンケル氏は、2014年から去年11月までEU=ヨーロッパ連合の執行機関、ヨーロッパ委員会の委員長としてアメリカとの貿易摩擦や、イギリスの離脱をめぐる交渉などを率いてきました。
今回の受章にあわせて、ユンケル氏がNHKのインタビューに答えました。
この中でユンケル氏は、親密だった安倍前総理大臣の名前を挙げながら「めったに与えられないものを受章することができ、本当に光栄だ。日本、そして親友である安倍前総理大臣と協力してきたおかげだ」と喜びを語りました。
そして、日本とEUは互いに価値観を共有し、多国間主義を推進する立場だとした上で、とりわけ去年2月に発効した日本とEUのEPA=経済連携協定について「双方を合わせると人口は6億3500万人近くに上り、双方の貿易は大幅に増加した。世界でもほかに例のない幅広い協力関係だ」と意義を強調しました。
また今後の日本とEUの関係について「日本とEUの良好な関係は国際社会に安定をもたらすことができる。この関係をさらに強化させるべきだ」と述べてさらなる関係強化によってともに世界で主導的な役割を果たしていくことに期待を示しました。