「日本でもこの冬、かなり大きなコロナの感染拡大が起きるおそれがあるという認識を共有している。これにインフルエンザの流行が重なれば医療体制にさらに深刻な負荷がかかるおそれがある」(10月13日 新型コロナ対策分科会 尾身茂会長)
このところ、新型コロナの次の感染拡大「第8波」への危機感をあらわにする発言が専門家から相次いでいます。
会合のあと脇田隆字座長は海外では感染者数や入院者数がこれまでの感染の波と同じ程度か、さらに大きくなってきていると指摘。 そのうえで「日本でも間違いなく感染が起こるのではないか、強い行動制限がなかなかしにくい状況で、医療ひっ迫が起きたときに、どういった対策ができるのか、いまから考えるべきだという議論があった」と述べました。
イギリス・オックスフォード大学の研究者などが運営するサイト「アワ・ワールド・イン・データ」によりますと、ドイツでは人口100万あたりの新規感染者数がことし3月下旬に3000人、その後7月中旬にも1100人に上った後、9月上旬には350人ほどに減っていましたが、今月上旬以降は再び1000人を超えています。
フランスでは、ことし1月下旬に人口100万あたり5400人という極めて大きな感染拡大を経験したあと、5月下旬と7月上旬におよそ2000人になることはありましたが、9月上旬には240人ほどにまで減りました。 それが増加に転じ、今月中旬には840人ほどとなっています。 ヨーロッパ各国では、コロナ対策として行われてきたさまざまな規制が緩和されています。 日本でも今月11日から水際対策が大幅に緩和されて、入国者数の上限がなくなり、全国旅行支援もスタートして人と人との接触が増える中で、専門家は、これらの国と同様に増えるのではないかと懸念しているのです。
オミクロン株の「BA.5」による第7波では、8月下旬にピークを迎えたあと、ほぼ2か月にわたり、感染者数の減少が続いてきました。 全国の1週間平均の感染者数は、8月24日のおよそ22万7000人から10月11日にはおよそ2万6000人にまで減少しました。 ところが、このところは、横ばいから増加傾向で、10月17日にはおよそ3万1600人となっています。
京都大学の西浦教授は、ヨーロッパのデータをみると、日本国内でもそう遠くない時期に「第8波」が訪れるとしています。
「第8波は目の前にあることが、ヨーロッパのデータから分かるし、その規模はかなり大きなものになりそうだ。緩和を進めたり、マスクを着用しなくてもいいといったメッセージが発信されたりして、危機感のない状況だ」 名古屋工業大学の平田晃正教授は、AI=人工知能を使った予測では年末から年明けに増加し始める可能性があるとしています。
▽年末年始にかけて、忘年会など人々の行動が活発になった場合、来年(2023年)1月中旬から下旬にかけて東京都での1日の新規感染者数は1週間平均で1万300人程度に達すると予測されました。 ▽また、年末年始以外でも行動が緩んだと想定すると、12月半ばから感染者数が増え始め、1月中旬から下旬にかけて1万4000人余りに達するという予測になったということです。
ただ、今回の予測では、新たな変異ウイルスが発生する可能性は考慮していないということです。
京都大学の西浦教授は9月21日の厚生労働省の専門家会合で、海外の研究をもとに、オミクロン株の変異が起きるスピードは異常に早いと報告しました。 そして「大きく変異した変異ウイルスが発生する可能性は常にあるが、次の流行の波はオミクロン株の派生型によって起こるだろうことが予測される」とコメントしています。 感染が再拡大しているドイツやフランスでは、10月上旬の段階で「BA.5」が90%ほどを占めています。 日本でも「第7波」の主流となり、ドイツやフランスでも数か月にわたってほとんどを占めていますが、再び感染の拡大を引き起こしています。
1つは「第7波」を引き起こしたのと同じ、「BA.5」による感染拡大です。 (濱田特任教授) 「ヨーロッパでは『BA.5』の流行が再燃し、残り火が広がり始めている。日本では『第7波』での『BA.5』の流行が収まりきらないうちに季節が寒くなって流行が再燃し、『第8波』になることが予想される」 そしてもう1つは、海外から新たな変異ウイルスが流入し感染が拡大するケースです。 濱田特任教授は、懸念される変異ウイルスの1つとして、シンガポールなどで「XBB」と呼ばれるタイプのウイルスが広がってきていると指摘しました。 「XBB」はオミクロン株のうちの複数のタイプのウイルスが組み合わさったもので、シンガポールの保健省のデータでは、9月の時点で6%だったのが、今月9日までの1週間では54%を占めるようになったということです。 この変異ウイルスの影響もあり、シンガポールでは人口100万あたりの感染者数が9月上旬にはおよそ340人だったのが、今月中旬には1500人を超えるに至っています。 (濱田特任教授) 「日本にもオミクロン株の別のタイプの1つが入ってくると、これまでの『BA.5』よりも拡大することが可能性としてはある」
アメリカでは、CDC=疾病対策センターによると、今月15日の時点で▽オミクロン株の「BA.5」が引き続き最も多く67.9%を占めているものの、▽「BA.4」から派生した「BA.4.6」が12.2%、▽「BQ.1.1」と「BQ.1」がそれぞれ5.7%、▽「BA.2.75.2」が1.4%、「BA.2.75」が1.3%などと、いずれもオミクロン株の一種ですが変異ウイルスの種類が増えてきています。 このうち、「BQ.1」系統のウイルスは「BA.5」がさらに変異を重ねたウイルスです。 また、「BA.2.75.2」はアメリカやインド、ヨーロッパ各国などで検出されていて、「BA.2」が変異を重ねた「BA.2.75」にさらに3つの変異が加わっています。 これらの変異ウイルスの性質はまだはっきりしていませんが、人の血液を使って分析すると、「BA.5」よりも免疫の働きが下がるという報告が出されています。 濱田特任教授によりますと、これらの変異ウイルスは「BA.5」と比べて、感染した場合の重症度が大きく変わるとは考えにくいものの、感染力が高まることや、欧米などで広がるのとほぼ同時に日本国内でも広がるおそれがあることに注意が必要だとしています。 (濱田特任教授) 「今出てきている変異ウイルスはオミクロン株の中で変化しているものなので、重症度が大きく高まることはあまりないと考えられる。感染力が高くなる、免疫を逃避する能力が高くなることは予想されるが、ドラスチックな大きな変化というものは現在の状況からみると起きないのではないか。過去2年間は、ヨーロッパやアメリカで冬の流行が広がってしばらくしてから、変異ウイルスが日本に入ってくる状況が見られたが、今は水際対策が緩和されているので、欧米での流行が起きたあとに間を置かずに日本で流行が広がってしまうということも考えておかなければいけない」
さらに、この冬にかけては、インフルエンザとの同時流行が起きるおそれも指摘されています。 ただ、私たちがとるべき対策は大きく変わりません。 ▽発熱などの症状がある場合は学校や仕事には行かず、ほかの人との接触を極力避ける。休養が重要。 ▽手指の消毒、屋内で人と近い距離で会話する場面などではマスクを着用する。 ▽飲食店などでは換気を徹底する。 そして、濱田特任教授は、どの変異ウイルスが広がるにせよ、ワクチン接種が改めて大事だと話しています。 (濱田特任教授) 「大事な点は、今始まっているオミクロン株ワクチンを打つことだ。オミクロン株だけではなくて新型コロナ全般への免疫も増すので、ぜひこのワクチン接種を受けてほしい」
免疫持つ人多いはずが…欧州で拡大
国内の感染者数 “下げ止まり”
“第8波” いつ?規模は?
“第8波”もオミクロン株?
とるべき対策は変わらない