この事故でカナダのトルドー首相は9日、記者会見を開き、「イランの地対空ミサイルで撃墜されたことを示す証拠がある。誤って撃墜された可能性もある」と述べました。
またイギリスのジョンソン首相も声明で「イランの地対空ミサイルで撃墜されたという情報がある。意図的ではなかっただろう」と述べ、イランが誤ってミサイルで撃墜したという見方を示しました。
アメリカのトランプ大統領も9日、「機体の問題だとは思わない。誰かが間違いをした可能性がある」と述べて、撃墜の可能性を示唆しました。
ウクライナ機はイランがアメリカ軍の拠点を攻撃したおよそ4時間後に墜落していて、アメリカのメディアは政府当局者の話として衛星がイランの2発の地対空ミサイルの発射を探知した直後にウクライナ機が爆発したとして、イランの防空システムで誤って撃ち落とされた可能性があると伝えています。
これに対しイラン航空当局の責任者は国営テレビで、「この空域は国際便や国内便が行き交っており、そうした場所でミサイルを発射するなどありえない」としたうえで、「ミサイルで撃墜されたならばらばらになっているはずだが、パイロットは機体から火が出たあと空港に引き返そうとしていた」と主張しました。
さらにウクライナ機が飛行していた高度では防空システムは作動しないとして撃墜説を全面的に否定したうえで、欧米の関係者を調査に招待する考えを示し、両者の主張は真っ向から対立しています。
撃墜の瞬間とされる映像を放送 米ABC
アメリカのABCテレビはウクライナの旅客機にイランのミサイルが撃墜した瞬間だとされる映像を放送しました。
この映像はウクライナ機が消息を絶った場所の近くで撮影されたとみられ、画面の左から右に向かって夜空を光の点がまっすぐ動いたあとに大きな輝きを放ち、そこから左の方向に落下するような様子が捉えられています。
この映像には何かが爆発したようなごう音も記録されていました。またテヘラン郊外の住民が旅客機が墜落する様子をとらえたとして投稿したとされる映像では炎のようなものをあげながら落下する光の玉と木々の向こうで地表部分がオレンジ色に光り、周辺の空が明るく染まる様子が写っています。
さらにイランのメディアが墜落の衝撃を捉えた監視カメラの映像だとして報じた動画では真っ暗な夜道が一瞬まばゆい光に包まれ、その後、画面の奥から手前の方向に向かって、火の粉や破片のようなものが勢いよく吹き飛ばされてくる様子が記録されています。
過去の旅客機の撃墜事件
過去に旅客機が撃墜された事件では、6年前の2014年、オランダからマレーシアに向かっていたマレーシア航空の旅客機が、戦闘が続いていたウクライナ東部の上空で、ロシア製の地対空ミサイルによって撃墜され、乗客乗員298人全員が死亡しました。
また、1988年にはペルシャ湾の上空を飛んでいた、イラン航空の旅客機がアメリカ海軍の艦船に戦闘機と間違われて撃墜され、乗客乗員290人全員が死亡しています。
1983年には、アメリカ ニューヨークから韓国のソウルに向かっていた大韓航空の旅客機が、予定の飛行ルートを外れて旧ソビエトの領空に入り、サハリン沖で戦闘機に撃墜され、日本人28人を含む乗客乗員269人全員が死亡しています。