愛知県では3年前の6月、西尾市の公園の植え込みでビニール袋に入れられた赤ちゃんの遺体が見つかりました。
母親は当時20歳の専門学校生。保護責任者遺棄致死などの罪で有罪判決を受けました。
専門学校生は裁判の中で、「母親を悲しませたり心配させたりしたくなかった。誰かに相談して周りから自分が孤立するのが嫌だった」と話しました。
こう話すのは今回、取材に応じてくれた別の20代前半の女性。直筆の手紙で心境を明かしました。 当時、大学院生だった女性はもともと生理不順だったため異変に気付くのが遅れ、病院に行ったときには中絶可能な期間を1か月もすぎていました。 交際相手に打ち明けると突然、連絡が途絶え、SNSのアカウントも消されました。 学費や生活費を自分でアルバイトをしてまかないながら学んでいた女性。 周りに話すこともできず思い描いていた人生の先行きも見えなくなり、絶望したといいます。
全国20を超える産婦人科施設と連携して支援団体をつくり、全国からの相談者を受け入れています。予期せぬ妊娠をした女性たちのいわば最後の“セーフティーネット”のような存在です。 クリニックの鮫島浩二院長は相談に訪れる女性の多くは一様に追い詰められているといいます。
「本当にせっぱ詰まって来られてる方が多いですよね。妊娠してどうしようかと、人にもしゃべれないで堕ろそうかどうしようか、赤ちゃんポストまで行っちゃおうかとかね、悩んでる方もいらっしゃいます」
「それまで不安だった気持ちがなくなり、心の底から安心しました。一番は、お腹の赤ちゃんとこれからの自分について、自分が独りで解決しようと不安になったり、 苦しむ必要がないと確信したことです」 クリニックで過ごす間、生まれくる子のために名前を考えたり、よだれかけを作ったりしてきた女性は、悩み抜いた末にいまは1人で育てていくのは難しいと考え、赤ちゃんを里親に委ねることにしました。
「予期せぬ妊娠をした女性たちの3割は中学生と高校生、4割が10代なんですね。気づいているんだけどSOSを出せないままどうしようどうしようと思ってる間に週数が進んでしまってここにたどりつく女性が多いなと思います」 気がかりなのは経済的に厳しい状況に追い込まれながら、社会から孤立し周りから見えにくくなっている若い女性たちの存在だといいます。 (吉田知重子さん) 「本当に経済困窮があってその日に食べるものとか、ライフラインも止まってしまった中で、食事をとれない、スマホとかも止められてしまって本当に緊急の連絡もつけることができない中でつながった子が最近いまして。その子たちのSOSをくみ取れるような仕組みももっと必要なんだと思います」
「もし支援がなかったら、私も赤ちゃんも私の家族も想像できる最悪の事態が起こっていたと思います。現在は再び新しい自分の夢と目標に向かって生きることができて本当に幸せです。感謝の気持ちでいっぱいです」
今回の取材を通じて病院につながれない、また本当に身近な存在である家族からも孤立する女性や子どもたちが増えていると感じました。一緒に住んでいる家族でさえ妊娠に気づかないケースもありました。 取材したクリニックでは令和3年度、「妊婦健診」を1度も受けずに妊娠期間を過ごした女性を8人支援しましたが、このうち7人は10代でした。この中には出産間近の妊娠35週や37週になっていた女性もいました。クリニックによりますと7人とも親は妊娠に気づいていなかったということです。 看護師の吉田知重子さんへの取材では「関係性の貧困」ということばが強く印象に残りました。 家族で集まってご飯を食べる習慣がなくなりつつあるとか、もしかして妊娠しているのかなと思っても踏み込んで聞けないとか。そこから生じる孤独感が、1人で抱え込むことにつながっているではと思います。 予期せぬ妊娠は、自分の身に起きるかもしれないし、家族や友達が悩んでいるかもしれません。その小さな変化やSOSを1人でも多くの人が感じ取れる社会にしていかなければいけないと強く感じました。
背景には予期せぬ妊娠 孤立深める
支援クリニック “一様に追い詰められている”
女性「独りで解決する必要ない」
予期せぬ妊娠 若い世代に多い
「支援なければ最悪の事態に」
取材した記者は