ネットプリント悪用あくよう “詐欺さぎの道具どうぐ”渡わたす 中国ちゅうごく拠点きょてん詐欺さぎグループ

中国ちゅうごく 吉林きつりん省しょう延吉のぶよしを拠点きょてんにした詐欺さぎグループが摘発てきはつされた事件じけんでは、中国ちゅうごくから日本にっぽんのお年寄としよりにうその電話でんわをかけ、キャッシュカードなどをだまし取だましとったとして14人にんが逮捕たいほされています。

警視庁けいしちょうの捜査そうさで、グループは50人にん規模きぼで被害ひがい額がくは１いち億おく8000万まん円えんにのぼるとみられますが、その後そのごの調しらべで、大手おおてコンビニで導入どうにゅうされた、インターネットプリントという最新さいしんのサービスを悪用あくようしていたことが捜査そうさ関係かんけい者しゃへの取材しゅざいでわかりました。

このサービスは、インターネットのクラウド上じょうに文書ぶんしょを保存ほぞんしておくと、全国ぜんこく各地かくちのコンビニで取り出とりだせるもので、お年寄としよりの自宅じたくにカードなどをだまし取だましとりに行いく「受うけ子こ」に身みにつけさせていた全国ぜんこく銀行ぎんこう協会きょうかいの偽にせの名刺めいしや本人ほんにん証明しょうめい書しょといった“詐欺さぎの道具どうぐ”をこのサービスを介かいして渡わたしていたということです。

東京とうきょう、大阪おおさか、名古屋なごや、神奈川かながわで摘発てきはつされた詐欺さぎ事件じけんの「受うけ子こ」は、いずれもこのサービスで取り出とりだした「田中たなか久志ひさし」という全国ぜんこく銀行ぎんこう協会きょうかいの架空かくうの職員しょくいんの名刺めいしを使つかっていたということです。

今回こんかいの捜査そうさで、最新さいしんのサービスを悪用あくようして各地かくちに散ちらばる「受うけ子こ」に“詐欺さぎの道具どうぐ”を受け渡うけわたしていた実態じったいが明あきらかになりました。

全銀協ぜんぎんきょう「カード預あづけて」に注意ちゅうい

全国ぜんこく銀行ぎんこう協会きょうかいの担当たんとう者しゃは「全国ぜんこく銀行ぎんこう協会きょうかいの職員しょくいんがお客様おきゃくさまのもとをたずねて暗証あんしょう番号ばんごうを聞き出ききだしたり、キャッシュカードを預あずかったりするということは絶対ぜったいにありません。もしそういう人ひとがいれば、詐欺さぎだと思おもって、最寄もよりの警察けいさつ署しょや実際じっさいに取り引とりひきのある銀行ぎんこうに問い合といあわせてほしい」としたうえで、キャッシュカードを渡わたしたり、暗証あんしょう番号ばんごうを教おしえたりしないよう注意ちゅういを呼よびかけていました。

悪用あくようされた「インターネットプリント」とは

このサービスは、大手おおてコンビニに設置せっちされたマルチコピー機きを使つかってインターネット経由けいゆで文書ぶんしょなどを印刷いんさつするものです。

利用りよう者しゃはインターネットの専用せんようサイトにアクセスし、印刷いんさつしたい文書ぶんしょなどをクラウド上じょうにアップロードすると予約よやく番号ばんごうが発行はっこうされます。その後そのご、文書ぶんしょを印刷いんさつしたいときに全国ぜんこく各地かくちのコンビニに置おかれたマルチコピー機きで予約よやく番号ばんごうを入力にゅうりょくすると、印刷いんさつしたい文書ぶんしょを取り出とりだすことができます。

自宅じたくにプリンターを持もたず、必要ひつようなときだけ近ちかくのコンビニでプリントする人ひとが増ふえていて、このサービスは、いつでも、どこでも、資料しりょうを手てにできる手軽てがるさから利用りようが広ひろがっています。

詳くわしい手口てぐち 明あきらかに

警視庁けいしちょうの捜査そうさできめ細きめこまかく組織そしき化かされた詐欺さぎグループの実態じったいが浮かび上うかびあがってきました。

詐欺さぎグループが拠点きょてんとしていた１ひとつは北朝鮮きたちょうせんとの国境こっきょうにほど近ほどちかい中国ちゅうごく 吉林きつりん省しょう延吉のぶよしのマンションの１いち室しつでした。

日本にっぽんからの直行ちょっこう便びんがあり、利便りべん性せいもよいこの都市としで、捜査そうさ当局とうきょくからの摘発てきはつを逃のがれるため、いくつものマンションにわかれて詐欺さぎの電話でんわをかける「かけ子こ」の活動かつどう拠点きょてんを設もうけていたとみられています。

中国ちゅうごくにいる「かけ子こ」が、名簿めいぼ屋やが入手にゅうしゅしたリストをもとに日本にっぽんのお年寄としよりに「あなたのキャッシュカードが不正ふせいに使つかわれそうになり、新あたらしいカードを発行はっこうする必要ひつようがある」などと、うその電話でんわをかけます。

お年寄としよりが信しんじてしまうと、リストからお年寄としよりの名前なまえや住所じゅうしょなどの情報じょうほうが掲載けいさいされた部分ぶぶんをスマートフォンで撮影さつえいし、その画像がぞうを日本にっぽん各地かくちで指示しじを待まつ「受うけ子こ」のメンバーに送おくります。

さらに、日本にっぽんの「受うけ子こ」には、より確実かくじつにだますための偽にせの名刺めいしや本人ほんにん証明しょうめい書しょといった“詐欺さぎの道具どうぐ”をクラウド上じょうにアップロードした際さいの予約よやく番号ばんごうをあわせて伝つたえます。

「受うけ子こ」は最寄もよりのコンビニに行いって、偽にせの名刺めいしや本人ほんにん証明しょうめい書しょといった文書ぶんしょをプリントアウトし、全国ぜんこく銀行ぎんこう協会きょうかいの職員しょくいんの「田中たなか久志ひさし」という架空かくうの人物じんぶつになりすまします。

そして、指示しじされたお年寄としよりの自宅じたくを訪たずね、偽にせの名刺めいしを示しめし、キャッシュカードなどを受け取うけとったことを示しめす証明しょうめい書しょまで手渡てわたし、信じ込しんじこませていました。

専門せんもん家か「最新さいしんサービスには常つねに悪用あくようされる危険きけん」

ネット犯罪はんざいに詳くわしい神戸こうべ大学だいがく大学院だいがくいん工学こうがく研究けんきゅう科かの森井もりい昌克まさよし教授きょうじゅは、詐欺さぎグループが摘発てきはつを逃のがれようと海外かいがいに拠点きょてんを移うつしている実態じったいを踏ふまえ、「上うえで犯罪はんざいを指示しじする人ひとは受うけ子こや出だし子こと明確めいかくに強つよく結び付むすびつきたいが、顔かおは合あわせたくない。直接ちょくせつ的てきな結び付むすびつきはないようにしたい。でも、きっちり指示しじしたいし、利用りようする（詐欺さぎの）道具どうぐも渡わたしたい。それを補おぎなうシステムで、指示しじする側がわにとっては好都合こうつごうなツールだったといえる」と分析ぶんせきしました。

そのうえで「スマホだけあれば、あとはコンビニに行いってプリントアウトすればいい。しかもレーザープリンターですごく高こう精細せいさいで、例たとえば本人ほんにん証明しょうめい書しょだと本物ほんものと見分みわけがつかないような非常ひじょうにきれいな印刷いんさつができる。リアルタイムに印刷いんさつできて、その場ばからすぐに詐欺さぎで引ひっかけようとする家いえに向むかうことができる。最先端さいせんたんのツールは犯罪はんざいに利用りようされやすい」として最新さいしんのサービスは常つねに犯罪はんざいに悪用あくようされる危険きけん性せいがあると認識にんしきし、導入どうにゅうや対策たいさくを検討けんとうすべきだと指摘してきしました。