AIで“くずし字じ”の解読かいどくに挑いどむ

「くずし字じ」は平安へいあん時代じだいから明治めいじ時代じだいの初はじめごろまで広ひろく使つかわれていましたが、今いまの文字もじと形かたちが大おおきく異ことなっていたり複数ふくすうの文字もじが連続れんぞくして書かかれたりしていることから、正確せいかくに解読かいどくできる人ひとには限かぎりがあります。

このため「人文じんぶん学がくオープンデータ共同きょうどう利用りようセンター」などは、AIを使つかってくずし字じを瞬時しゅんじに今いまの文字もじに置き換おきかえるシステムを開発かいはつし、そのうえで新あらたな発想はっそうを加くわえてさらに精度せいどを高たかめようと国際こくさいコンペを行おこないました。

コンペでは、センターのシステムをもとに新あらたな手法しゅほうを開発かいはつすることで、数すう千せん枚まいの画像がぞうに書かかれたくずし字じをどれだけ正確せいかくに認識にんしきできるかが競きそわれ、国内外こくないがいの企業きぎょうや研究けんきゅう者しゃなどおよそ300チームが参加さんかしました。

11日にち、東京とうきょう都内とないで上位じょういの10チームが表彰ひょうしょうされ、優勝ゆうしょうした中国ちゅうごくのチームは、95％の割合わりあいでくずし字じを正ただしく解読かいどくできたということです。

大会たいかいを主催しゅさいした人文じんぶん学がくオープンデータ共同きょうどう利用りようセンターの北きた本朝ほんちょう展てんセンター長ちょうは「これまでくずし字じに関心かんしんがなかった人ひとも含ふくめて、世界中せかいじゅうの人ひとからいろんなアイデアを集あつめることができた。出だされた意見いけんを共有きょうゆうすることで、研究けんきゅうがさらに進すすむことが期待きたいできる」と話はなしていました。

数すう億おく点てん規模きぼも解読かいどく進すすまず

人文じんぶん学がくオープンデータ共同きょうどう利用りようセンターによりますと、国内こくないには現在げんざいもくずし字じで書かかれた過去かこの資料しりょうが数すう億おく点てん規模きぼで残のこされていると言いわれていますが、人ひとが読よめる量りょうには限かぎりがあり、解読かいどくされていない資料しりょうが数多かずおおく残のこされていることが課題かだいとなっています。

書かかれた内容ないようが読よめずに価値かちが分わからず廃棄はいきされたり、これまで知しられていない地域ちいきの歴史れきしや災害さいがいの記録きろくなどが解読かいどくされないまま残のこされていたりするケースが見みられるということです。

北本きたもと朝ちょう展てんセンター長ちょうは「これまで知しられていなかった災害さいがいや復興ふっこうの記録きろくを読よんでいくことで、貴重きちょうな情報じょうほうが得えられることもある。くずし字じを読よめる人ひとが限かぎられる中なかで、AIは人ひとの手助てだすけをしてくれるはずだ」と指摘してきしています。

意味いみではなく画像がぞうとして認識にんしき

人文じんぶん学がくオープンデータ共同きょうどう利用りようセンターが開発かいはつした解読かいどくシステムは、古こ文書ぶんしょのどこにどのような文字もじがあるのかを、AIが画像がぞうとして認識にんしきします。

認識にんしきした文字もじの形かたちの特徴とくちょうを、あらかじめ学習がくしゅうしたおよそ100万まん字じ分ぶんのくずし字じのデータと照てらし合あわせることで、今いまの文字もじに置き換おきかえていきます。

文字もじは順番じゅんばんに解読かいどくするのではなく、ことばの意味いみや前後ぜんごのつながりを考慮こうりょせずに形かたちの特徴とくちょうだけで判別はんべつするということです。

センターによりますと、人ひとの手てでは最低さいていでも10分ふんほどかかる１いちページのくずし字じを、数すう秒びょうで解読かいどくできるということです。

一方いっぽう、今いまの段階だんかいでは、AIがすべての文字もじを正ただしく解読かいどくできるわけではなく、文字もじを読よむ順番じゅんばんについても判断はんだんできないため、文章ぶんしょうの意味いみを正確せいかくに理解りかいするには専門せんもん家かによる確認かくにん作業さぎょうが必要ひつようとなります。

今回こんかいの国際こくさいコンペでは、このシステムをもとにおよそ300チームが精度せいどの向上こうじょうに挑いどみ、上位じょういのチームの手法しゅほうはウェブ上じょうに公開こうかいされています。

コンペの入賞にゅうしょう者しゃは

コンペでは海外かいがいのチームが上位じょういを占しめる中なか、１いち人にんで開発かいはつにあたった福岡ふくおか県けんの土井どい賢治けんじさんが３さん位いに入賞にゅうしょうしました。

土井どいさんはIT企業きぎょうのエンジニアで、ネットオークションに出品しゅっぴんされた商品しょうひんが本物ほんものか偽物にせものかを投稿とうこうされた画像がぞうから判断はんだんするシステムの構築こうちくに携たずさわっています。

また、趣味しゅみでもSNSに投稿とうこうされたラーメンの画像がぞうがどこの店舗てんぽで出だされたものかを数すう万まん枚まいの画像がぞうデータをもとに予測よそくするシステムを運営うんえいしていて、日々ひびの仕事しごとや趣味しゅみで培つちかった手法しゅほうを応用おうようしてくずし字じの特徴とくちょうを見極みきわめる精度せいどを上あげていったということです。

土井どいさんが開発かいはつしたシステムは、全体ぜんたいの94％余あまりの文字もじを解読かいどくすることに成功せいこうしました。

土井どいさんは「くずし字じは存在そんざいを知しっている程度ていどでしたが、機械きかいで読よめることの意義いぎはすごく感かんじました。読よまれていない文書ぶんしょがたくさんある中なかで解読かいどくがもっと進すすんでいけば、災害さいがいの歴史れきしを知しることにも役立やくだつと思おもいますし、社会しゃかい的てきな意義いぎも大おおきいと感かんじました」と話はなしていました。