Japanese News: “再劣化”インフラ維持に新たな課題「早急な検証が必要」

橋はしやトンネルなどのインフラ維持いじに新あらたな課題かだいです。

ひび割ひびわれなどが見みつかり、一いち度どは修繕しゅうぜんされた橋はしなどを専門せんもん家かが調査ちょうさしたところ、同おなじ箇所かしょが再ふたたび劣化れっかする「再さい劣化れっか」が、少すくなくとも100件けん以上いじょう起おきていることが分わかりました。中なかには、わずか数すう年ねんのうちに再さい劣化れっかしたケースもあり、専門せんもん家かは「点検てんけんや修繕しゅうぜんの方法ほうほうが不適切ふてきせつなケースがあり、早急そうきゅうな検証けんしょうが必要ひつようだ」と指摘してきしています。岐阜ぎふ大学だいがくの国枝くにえだ稔みのる教授きょうじゅの研究けんきゅうグループは、岐阜ぎふ県内けんないを中心ちゅうしんに、ひび割ひびわれなどが見みつかって一いち度どは修繕しゅうぜんされた橋はしなどについて、その後そのごの状況じょうきょうを５ご年ねんかけて調査ちょうさしました。

その結果けっか、修繕しゅうぜんした箇所かしょに再ふたたび、ひび割ひびわれなどが発生はっせいする「再さい劣化れっか」が少すくなくとも128件けん起おきていることがわかりました。

このうち、岐阜ぎふ県内けんないの14の橋はしなどでは、想定そうていよりかなり早はやく劣化れっかが進すすんでいて、修繕しゅうぜんからわずか２に年ねんで再さい劣化れっかしたケースもありました。

再さい劣化れっかは、鉄筋てっきんなどを腐食ふしょくさせる塩分えんぶんが含ふくまれた凍結とうけつ防止ぼうし剤ざいを使用しようする地域ちいきに多おおい傾向けいこうがあり、周辺しゅうへんの環境かんきょうなどを考慮こうりょした適切てきせつな修繕しゅうぜんが行おこなわれておらず、劣化れっかが早はやまった可能かのう性せいが高たかいということです。

こうした再さい劣化れっかは、各地かくちで発生はっせいしている可能かのう性せいがあるものの、詳くわしい実態じったいは分わかっていません。

国枝くにえだ教授きょうじゅは「実態じったいの把握はあくを進すすめたうえで、技術ぎじゅつ的てきな分析ぶんせきを行おこない、適切てきせつな修繕しゅうぜん方法ほうほうを検証けんしょうする必要ひつようがある」と指摘してきしています。

不適切ふてきせつな修繕しゅうぜんが早はやい再さい劣化れっかの原因げんいんに

不適切ふてきせつな修繕しゅうぜんが、想定そうていより早はやい再さい劣化れっかの原因げんいんになっていたケースがあります。

岐阜ぎふ県けん高山たかやま市しにある長ながさおよそ60メートルの橋はしは、側面そくめんのコンクリートに数すう多おおくのひび割ひびわれが見みつかったため、平成へいせい22年ねんに表面ひょうめんを５ごセンチ程度ていどはぎ取はぎとって、上うえからモルタルで覆おおいました。

しかし、わずか２に年ねん後ごの点検てんけんで、修繕しゅうぜんした場所ばしょに再ふたたびひび割ひびわれが見みつかりました。その後そのごも劣化れっかは進行しんこうしていて、取材しゅざいした先月せんげつの時点じてんでひび割ひびわれは一いち面めんに広ひろがり、幅はばも広ひろがっていました。

調査ちょうさした岐阜ぎふ大学だいがくの国枝くにえだ稔みのる教授きょうじゅによりますと、凍結とうけつ防止ぼうし剤ざいの塩分えんぶんを含ふくんだ水みずが染み込しみこんだことで、内部ないぶの鉄筋てっきんの腐食ふしょくが進すすんでいる可能かのう性せいがあるということです。

使用しようしたモルタルでは、水みずの浸透しんとうを止とめることができないため、より強度きょうどの高たかいモルタルを使つかうなど、現場げんばの状況じょうきょうを考慮こうりょして修繕しゅうぜんを行おこなう必要ひつようがあると指摘してきしています。

現時点げんじてんでは、この橋はしの安全あんぜん性せいに問題もんだいはないということですが、国枝くにえだ教授きょうじゅは、ひび割ひびわれを放置ほうちするとコンクリートが落下らっかしたり、強度きょうどが低下ていかしたりするおそれがあるとしています。

点検てんけんで問題もんだい見抜みぬけないケースも

点検てんけんで問題もんだい点てんを見抜みぬけなかったことが、再さい劣化れっかにつながったケースもあります。

富山とやま市しにある昭和しょうわ47年ねんに建設けんせつされた長ながさ69メートルの橋はしは、道路どうろと橋はしを接続せつぞくする金属きんぞく製せいの装置そうちが壊こわれ、数すうセンチの段差だんさが生しょうじました。

タイヤがパンクするおそれもあり、３さん年ねん前まえから通行止つうこうどめになっています。

この橋はしでは、平成へいせい20年ねんに市しが委託いたくしたコンサルタント会社かいしゃの点検てんけんで段差だんさが見みつかり、平成へいせい22年ねんに装置そうちを交換こうかんしました。

ところが、３さん年ねん後ごの点検てんけんで、再ふたたび段差だんさが見みつかりました。市しが改あらためて調しらべると、橋はしを下したから支ささえる装置そうちが腐食ふしょくして壊こわれているのが見みつかり、これが段差だんさの原因げんいんだったことがわかりました。

富山とやま市しの植野うえの芳彦よしひこ建設けんせつ技術ぎじゅつ統括とうかつ監は「結果けっかとして点検てんけんに不備ふびがあったと言いわざるをえない。正まさしく点検てんけんしないと修繕しゅうぜんの判断はんだんを間違まちがってしまい、財政ざいせい的てきな負担ふたんが増ます懸念けねんもある」と話はなしています。

５ご年ねんに１いち度どの点検てんけんは一いち巡じゅん

中央ちゅうおう自動車じどうしゃ道どうの笹子ささごトンネルの事故じこを受うけて、橋はしやトンネルを５ご年ねんに１いち度ど点検てんけんすることが道路どうろの管理かんり者しゃに義務ぎむづけられました。

国土こくど交通こうつう省しょうによりますと、昨年度さくねんどまでに橋はしは80％の59万まんか所かしょ余あまり、トンネルは71％のおよそ8000か所かしょで、計画けいかくどおり点検てんけんを終おえていて、今年度こんねんど中ちゅうにはすべての点検てんけんが終おわる見込みこみです。

これまでの点検てんけんで、修繕しゅうぜんが必要ひつようとされたのは、橋はしがおよそ５ご万まん8000か所かしょ、トンネルが3300か所かしょ余あまりに上のぼっています。

ただ、昨年度さくねんどまでに修繕しゅうぜんが完了かんりょうした割合わりあいは、橋はしがおよそ15％、トンネルもおよそ40％にとどまっています。

費用ひようの確保かくほのほか、自治体じちたいでは技術ぎじゅつ系けいの職員しょくいんの確保かくほも課題かだいとなっています。

全国ぜんこくの「再さい劣化れっか」の状況じょうきょうは

再さい劣化れっかは全国ぜんこくでどれくらい起おきているのか。

ＮＨＫえぬえいちけいが47都道とどう府県ふけんに取材しゅざいしたところ、ほとんどがその実態じったいを把握はあくできていませんでした。

再さい劣化れっかを確認かくにんしているのは、鹿児島かごしま県けんや山形やまがた県けんなど一部いちぶの自治体じちたいで、このうち山形やまがた県けんでは、修繕しゅうぜんした橋はしが10年ねんもたたないうちにモルタルが浮き上うきあがるなどしたため、再さい修繕しゅうぜんを迫せまられています。

多おおくの自治体じちたいは再さい劣化れっかへの対応たいおうが課題かだいだとしながらも、修繕しゅうぜんの履歴りれきやその結果けっかが蓄積ちくせきされていないため、十分じゅうぶんな実態じったい把握はあくが難むずかしいとしています。

こうした自治体じちたいでは「今後こんご、継続けいぞく的てきな点検てんけんで劣化れっかの状況じょうきょうを正確せいかくに把握はあくし、インフラの長寿ちょうじゅ命いのち化かに向むけて、より適切てきせつな修繕しゅうぜん方法ほうほうを検討けんとうする必要ひつようがある」としています。

専門せんもん家か「周辺しゅうへん環境かんきょうを考慮こうりょした適切てきせつな修繕しゅうぜんを」

インフラの維持いじ管理かんりに詳くわしい岐阜ぎふ大学だいがくの国枝くにえだ稔みのる教授きょうじゅは、再さい劣化れっかが相次あいつぐ原因げんいんの１ひとつに、周辺しゅうへんの環境かんきょうを考慮こうりょした適切てきせつな修繕しゅうぜんが行おこなわれなかった可能かのう性せいを挙あげています。

鉄筋コンクリートてっきんこんくり-との場合ばあい、塩分えんぶんや水分すいぶんが浸透しんとうすると内部ないぶの鉄筋てっきんが腐食ふしょくするため、潮風しおかぜが当あたる海沿うみぞいの地域ちいきや、凍結とうけつ防止ぼうし剤ざいをまく雪ゆきの多おおい地域ちいきなどは、水みずが染み込しみこみにくい材料ざいりょうで修繕しゅうぜんする必要ひつようがあるということです。

国枝くにえだ教授きょうじゅは「修繕しゅうぜんの設計せっけいや施工しこうなどで、配慮はいりょすべきことを怠おこたったため再さい劣化れっかが起おきていると考かんがえられる。定量ていりょう的てきにはわからないものの全国ぜんこくでそれなりの数かずがあるとみられる」と分析ぶんせきしています。

そのうえで、「他たでうまくいった修繕しゅうぜん方法ほうほうも、環境かんきょうや構造こうぞう物ぶつが変かわれば効果こうかを発揮はっきしないことはよくあることだ。『一度いちど修繕しゅうぜんしたインフラもいずれは劣化れっかする』という前提ぜんていに立たって、修繕しゅうぜんしたインフラがどのように悪わるくなるか観察かんさつし、得えられた情報じょうほうを技術ぎじゅつ的てきに分析ぶんせきしたうえで、次つぎの修繕しゅうぜんに生いかすことが重要じゅうようだ」と指摘してきしています。

また、今年度こんねんどで一巡いちじゅん目めが終おわる５ご年ねんに１いち度どの点検てんけんについては「今いままで何なにも見みていないに等ひとしかったインフラの状況じょうきょうを把握はあくするという意味いみでは一定いっていの意味いみがあった」と評価ひょうかしたうえで、「インフラをよい状態じょうたいに保たもつためには、点検てんけんの中身なかみを検証けんしょうし、確認かくにんするポイントを定さだめるなど、点検てんけんの質しつを高たかめる必要ひつようがある」と話はなしています。