「ひげ生はやすのは個人こじんの自由じゆう」人事じんじの低てい評価ひょうかに賠償ばいしょう命令めいれい

この裁判さいばんは３さん年ねん前まえ、当時とうじの大阪おおさか市営しえい地下鉄ちかてつの運転うんてん士し、河野こうの英司えいじさん（56）ら２に人にんが、ひげを生はやして勤務きんむしていることを理由りゆうに、人事じんじで最低さいてい評価ひょうかにされたのは不当ふとうだと訴うったえて、大阪おおさか市しに賠償ばいしょうを求もとめたものです。

大阪おおさか市し交通こうつう局きょくは、平成へいせい24年ねんに男性だんせい職員しょくいんにひげをそるよう求もとめる「身みだしなみ基準きじゅん」を設もうけていて、裁判さいばんではこの基準きじゅんの是非ぜひなどが争あらそわれました。

16日にちの判決はんけつで大阪おおさか地方ちほう裁判所さいばんしょの内藤ないとう裕之ひろゆき裁判さいばん長ちょうは「清潔せいけつ感かんを欠かくとか、威圧いあつ的てきな印象いんしょうを与あたえるなどの理由りゆうから地下鉄ちかてつの乗務じょうむ員いんらにひげをそった状態じょうたいを理想りそう的てきな身みだしなみとする基準きじゅんを設もうけることには必要ひつよう性せいや合理ごうり性せいがあるが、この基準きじゅんはあくまで職員しょくいんに任意にんいの協力きょうりょくを求もとめるものだ」と指摘してきしました。

そのうえで「ひげを生はやすかどうかは個人こじんの自由じゆうで、ひげを理由りゆうにした人事じんじ評価ひょうかは人格じんかく的てきな利益りえきを侵害しんがいし違法いほうだ」として、大阪おおさか市しに慰謝いしゃ料りょうとして40万まん円えん余あまりを支払しはらうよう命めいじました。

原告げんこく「勝訴しょうそでき素直すなおにうれしい」

判決はんけつを受うけて原告げんこくの河野こうの英司えいじさんは会見かいけんを開ひらき、「ひげは自分じぶんを表現ひょうげんするもので、そると自分じぶんではなくなってしまう。勝訴しょうそできて素直すなおにうれしいし、ほっとしている。この判決はんけつを真摯しんし（しんし）に受け止うけとめ、公正こうせいな評価ひょうかをしてほしい」と話はなしていました。

また弁護べんご団長だんちょうの村田むらた浩ひろし治ち弁護士べんごしは「原告げんこくの主張しゅちょうをほぼ認みとめた、完全かんぜん勝訴しょうそだ。今いま、労働ろうどう者しゃに対にたいする業務ぎょうむ上じょうの拘束こうそくが強調きょうちょうされる中なかで、ひげを含ふくめた個人こじんの外観がいかん、人格じんかく的てきな利益りえきは非常ひじょうに尊重そんちょうされるべきだと、従来じゅうらいの判例はんれいを確認かくにんしたと評価ひょうかできる。判決はんけつは今後こんごも私生活しせいかつに制約せいやくを及およぼす行為こういをしてはだめだと警鐘けいしょうを鳴ならすものだ」と述のべました。

大阪おおさか市し「内容ないようを精査せいさし対応たいおうを検討けんとう」

判決はんけつについて大阪おおさか市しは、「内容ないようを精査せいさし、大阪おおさかメトロや弁護士べんごしと調整ちょうせいのうえ対応たいおうを検討けんとうしたい」とコメントしています。

ひげ禁止きんしの身みだしなみ基準きじゅんを新設しんせつ

大阪おおさか市し交通こうつう局きょくでは職員しょくいんの服装ふくそうや髪型かみがたなどで地下鉄ちかてつの利用りよう客きゃくなどに不快ふかいな思おもいをさせないようにと、平成へいせい24年ねんに「職員しょくいんの身みだしなみ基準きじゅん」を新あらたに設もうけました。

この中なかで男性だんせいの職員しょくいんについては、「ひげは伸のばさずにきれいにそること。整ととのえられたひげも不可ふか」としていました。

大阪おおさか市営しえい地下鉄ちかてつは去年きょねん、民営みんえい化かしましたが、現在げんざいの「大阪おおさかメトロ」では、身みだしなみの基準きじゅんは設もうけていないということです。

「ひげ禁止きんしの規則きそくがある以上いじょう従したがわざるをえない」

平成へいせい27年ねんに河野こうのさんが上司じょうしとの面談めんだんを録音ろくおんした音声おんせいデータには、ひげを生はやしていることの人事じんじ評価ひょうかへの影響えいきょうについてやり取やりとりした内容ないようが記録きろくされています。

この中なかで河野こうのさんが「前回ぜんかいの人事じんじ評価ひょうかでは、ひげが理由りゆうで２に項目こうもく下さげられているじゃないですか」と抗議こうぎしたのに対にたいし、上司じょうしは「身みだしなみ基準きじゅんをなんべんも守まもらないとなったら、僕ぼくらやっぱり下さげなしゃあないわな」と、ひげを理由りゆうに低ひくい評価ひょうかにしたともとれる発言はつげんをしています。

さらに河野こうのさんが「今回こんかいの人事じんじ評価ひょうかも下さげるつもりですか」と質問しつもんすると、上司じょうしは「身みだしなみのところ守まもってくれへんかったらしゃあないわな。僕ぼくらはこれに従したがっていくだけやんか。あの身みだしなみ基準きじゅんを守まもってくれへんかったら、人事じんじ考課こうか下さげますよと。僕ぼくらこれ守まもりなさい言いわれてる、しゃあないやんか」と答こたえ、ひげを禁止きんしする規則きそくがある以上いじょう、従したがわざるを得えないとする説明せつめいをしています。

男性だんせい３さん割わり「生はやしたい」

大手おおて電機でんきメーカーの「パナソニック」は、おととし定職ていしょくに就つく20代だいから30代だいの男女だんじょ500人にんを対象たいしょうに、「職業しょくぎょうと男性だんせいの身みだしなみ」という調査ちょうさをインターネットを通をつうじて行おこないました。

それによりますと、全体ぜんたいの44％が「現在げんざいの職場しょくばは男性だんせいの身みだしなみに厳きびしい」と回答かいとうし、男性だんせいの28％は「もっと緩和かんわしてほしい」と答こたえています。

そして、男性だんせいの31％が「職場しょくばにひげを生はやして出勤しゅっきんしたいと思おもった経験けいけんがある」としています。

またひげを生はやしても問題もんだいないと思おもう職種しょくしゅを尋たずねたところ、デザイナーなどの自由じゆうな発想はっそうが期待きたいされるクリエイティブ職しょくは50％の人ひとがＯＫお-けいと答こたえた一方いっぽう、取引とりひき先さきなど外部がいぶの人ひととやり取やりとりがある営業えいぎょう職しょくは58％がふさわしくないといった回答かいとうをしました。

調査ちょうさに協力きょうりょくした美容びようジャーナリストの加藤かとう智一ともかずさんは「欧米おうべいでは個性こせいが重要じゅうよう視しされるため、ヒゲなどが本人ほんにんのスタイルの一部いちぶと見みなされています。しかし、日本にっぽんでは個性こせいよりも身みだしなみとしての清潔せいけつ感かんが尊重そんちょうされるため、ヒゲで個性こせいを出だすのであれば、清潔せいけつ感かんを維持いじしながらも、周囲しゅういに受け入うけいれられ、社会しゃかいになじむようなスタイルを考かんがえていくことが大切たいせつです」と話はなしています。