※11月12日(日本時間)のイスラエルやパレスチナに関する動きを随時更新でお伝えします。
ネタニヤフ首相「ガザ地区を管理し続ける」
イスラエルのネタニヤフ首相は11日、ガラント国防相らと記者会見を行い、ガザ地区での戦況について「私たちはガザ市の中心部で作戦を続けている。シファ病院の周辺に展開している」と説明したうえで「ハマスはガザ地区北部の支配力を失った」と主張しました。
そして、ハマスとの戦闘を終えた後のガザ地区について「再びテロが起きないよう安全保障上の観点からイスラエル軍はガザ地区を管理し続ける。10月7日の虐殺はイスラエルが管理しない場所ではテロリズムが育まれることを証明した」と述べ、アメリカの意向に反して、ガザ地区を事実上、占領下に置く考えを示しました。
また、レバノン南部からイスラエルに攻撃を続けるイスラム教シーア派組織ヒズボラについては「ヒズボラには誤った判断をして参戦すべきでないと警告した。参戦をすれば命に関わる過ちになるからだ。それはレバノンの運命を決めることになる」と述べ、強くけん制しました。
このほか、ガラント国防相はフランスのマクロン大統領がテレビのインタビューで「民間人が爆撃され、乳児や女性、高齢者が殺されている。理由も正当性もない」などと述べたことについて問われ「我々が戦争のさなかにいるときに死者の数について説教をする勇気はいったいどこから来るのか」と述べ、痛烈に批判しました。
シファ病院 イスラエル軍が医療関係者や患者などに退避通告
イスラエル軍は、ガザ地区北部のガザ市中心部にあるシファ病院の地下にハマス中枢の重要拠点があると主張し、包囲網を狭めています。
イスラエル軍は医療関係者や患者などに対し退避を通告していて、シファ病院のほか、同じく中心部にあり、大勢の住民が避難しているとみられるランティシ病院とナスル病院も対象となっています。
11日には地上部隊がシファ病院の周辺に迫り、爆発や銃撃音が報告されていて、激しい戦闘が行われているものとみられます。
この日、イスラエル軍のアラビア語の報道官は動画でシファ病院への攻撃や完全な包囲はまだ行っていないと主張した上で「病院の東側の通りは通行できる。退避したければ今でも可能だ」と述べました。
そして、病院の院長を通じて医療関係者や患者、避難している住民の退避を通告していることを明らかにしていて、イスラエル軍が近く本格的な攻勢に乗り出す可能性があります。
シファ病院の状況についてパレスチナ暫定自治政府のカイラ保健相は記者会見で「イスラエル軍は空爆によって脅していて、医療従事者に病院を離れるよう迫っている」と述べて、強く非難しています。
そのうえでガザ地区の病院や医療従事者に対して行われていることは、国際法などに違反しているとして「国際社会や国連の介入が今すぐ必要だ」と訴えました。
病院に残る「国境なき医師団」医師 “患者の避難の保証を”
イスラエル軍の地上部隊がガザ地区最大の病院シファ病院に迫る中、病院に残る国際NGO「国境なき医師団」の医師は「状況は非常に悪く孤立している。助けが必要だ」と窮状を訴えています。
国境なき医師団は、11日、SNSにシファ病院に残る医師の音声メッセージを投稿しました。
そのなかで医師は現地時間の11日朝から電力が途絶え、保育器が稼働せずに新生児2人が死亡したほか、ICU=集中治療室の人工呼吸器が動かずに、成人1人が死亡したと説明しています。
病院は何度も攻撃され、周辺には煙が充満しているほか、病院内にいた4人の患者が狙撃兵に撃たれ、このうち1人は首を撃たれて手足がまひし、別の1人は腹部を撃たれたと証言しています。
また、病院には40人ほどの低体重で生まれた赤ちゃんやICU=集中治療室にいる17人の患者、それに手術を受けたあとの入院患者がおよそ600人いるとしていて、医師は「患者の避難を誰か保証してほしい」と訴えています。
メッセージは「誰も私たちの声を聞いてくれない」ということばで締めくくられています。
南部ラファ市内の難民キャンプ近くでも空爆
イスラエル軍が、ガザ地区北部からの退避先としている南部でも空爆が相次いでいて、南部ラファ市内にある難民キャンプの近くでも、現地時間11日午後1時ごろ、空爆が行われました。
NHKガザ事務所のカメラマンが撮影した現場の映像では、難民キャンプ内で空爆による粉じんが立ちこめるなか、多くの人が集まって激しく壊れた住宅からけが人を救い出す様子などが写されています。
周辺では泣き叫ぶ女性の姿や、けがをした子どもに付き添って救急車に乗る母親の姿もみられます。
なかにはけがをして頭から血を流している女の子が男性に抱きかかえられて診療所まで運ばれ、手当てを受ける様子も確認できます。
イスラエル軍 “難民キャンプで4時間戦闘休止”発表
イスラエル軍は11日、ガザ地区北部から南部に住民を退避させる通告に加え、激しい攻撃を行っているジャバリア難民キャンプで4時間にわたり戦闘を休止させると発表しました。
またガザ市北部のシャーティ難民キャンプの住民に対しても海沿いに南部へ退避するよう通告し、退避の措置を拡大させました。
ただ退避先とされる南部でも主要都市のハンユニスやラファでイスラエル軍による攻撃が続いています。
パレスチナ赤新月社 “病院から20mの場所に戦車”SNS投稿
ガザ地区でイスラエル軍が地上侵攻を進める中、パレスチナ赤新月社は、11日、ガザ市北部のクッズ病院から20メートル離れた場所にイスラエルの戦車がいるとSNSで投稿しました。
病院への攻撃で、避難している1万4000人が極度のパニックと恐怖に陥っていると訴えています。
さらに、その後の投稿では「イスラエルの戦車と軍用車両が病院をあらゆる方面から取り囲み、砲撃で建物が揺れている。病院では激しい攻撃があり、負傷者の数はまだ分かっていない」として攻撃が激しくなっていると強調しています。
そして、病院にいる500人の患者と医療従事者、それに避難している人のために国際社会がこの事態にすぐに介入する必要があると訴えています。
音楽イベントの犠牲者 追悼 イスラエル
先月7日にガザ地区との境界近くで開かれていた音楽イベントの会場では、ハマスの襲撃によっておよそ260人が殺害されたとされ、参加者の一部は人質として連れ去られました。11日、中部のカイサリアで犠牲者の追悼集会が開かれ、音楽イベントに参加していた人たちや遺族など、およそ1000人が集まりました。
音楽イベントの主催者らが追悼の言葉を述べたあと、音楽が演奏され、参加者はそれぞれ花を手に、演奏に耳を傾けていました。
音楽イベントに一緒に参加した友人を失い、自身も銃撃で腕にけがをした20代の男性は「親友は頭を撃たれ、私は救うことができなかった。テロは平穏な生活を奪う。イスラエル軍はハマスへの攻撃を続けるべきだ」と話していました。
また友人の女性が殺害されたという22歳の男性は「彼女と一緒にいた恋人も殺されてしまった。彼らへの追悼をささげたい」と話していました。
テルアビブ中心部 約240体のマネキンで人質解放訴え
イスラエル最大の商業都市、テルアビブ中心部では、ガザ地区でとらわれている人質の人たちを表現したマネキンが展示され、一刻も早い解放を訴えました。
これは、イスラエルの芸術家らが行ったもので、人質の数を表したおよそ240体のマネキンに1体1体異なった服を着せて、ひとりひとり異なった人生を歩んできた人たちであることを表現しています。
また、マネキンが設置された場所の近くにある広場にも、およそ240のベッドが並べられ、中には子どもの人質を表現して小さなベッドも置かれていました。
ユダヤ教の安息日にあたる11日、会場では多くの家族連れが展示を見て、一刻も早い人質の解放を願っていました。
テルアビブに住む20代の男性は「こうした展示を見て胸が張り裂けそうになります。ハマスの人質になった知り合いもいます。人質全員を取り戻さなくてはと思います」と話していました。
ヒズボラ最高指導者ナスララ師 イスラエルをけん制
イスラエルと敵対し、レバノン南部に拠点を置くイスラム教シーア派組織ヒズボラの最高指導者ナスララ師が11日、テレビ演説し「われわれは民間人を標的にすることを容認しない」と述べ、イスラエルを強くけん制しました。
そのうえで「イラクやレバノン、それにイエメンでの抵抗運動を止めたければ、ガザ地区での戦闘を止める以外に方法はない」と述べて、ガザ地区への地上侵攻が続けば、イスラエルへの攻撃が続くことになると警告しました。
また、シリアやイラクでアメリカ軍基地への攻撃が相次いでいることに触れ「これらの作戦をやめさせたければ、イスラエル軍のガザ地区に対する作戦をやめさせなければならない」と述べて、アメリカに対し、イスラエルに停戦に向けた圧力をかけるよう求めました。
ガザ地区南部 燃料や食料の不足が深刻化
多くの人が避難するガザ地区南部では燃料の不足が深刻化する中、避難者の生活を支えるパン屋などでは、まきを確保してなんとか営業を続けるところもあります。
NHKガザ事務所のカメラマンが現地時間11日午前に撮影した映像には、南部のラファ市内で営業する数少ないパン屋に大勢の人が列をつくってパンを買い求める様子が写っています。
店先にはパンを焼くための木材が荷車で運ばれ、燃料代わりにしていました。
また、通りでは木の枝を小さく折ってまきをつくる人たちの姿も見られ、男性の1人は「調理のために使うまきを集めています。ガスも水もなく、最低限必要なものが手に入らないのです」と話していました。
また、ラファ市内ではまきで火をおこして、コーヒーやお茶を提供する露店も見られました。
店主の男性は「戦争と完全な封鎖のせいでガスがないので、こうして、まきでお湯を沸かしています」と話していました。
市内の飲食店やファストフード店は多くが営業を取りやめていて、避難者が集まる南部でも深刻な燃料や食料不足に陥り、人道危機が深まっています。
原爆ドーム前 キャンドルで停戦求めるメッセージ
広島市中区の原爆ドームの前では、11日、核兵器の廃絶を訴える市民団体などの呼びかけでイベントが開かれ、参加者が1000本あまりのキャンドルに火をともすと、「ガザ地区での大量虐殺をやめろ」という意味の「STOP GENOCIDE IN GAZA」という文字が浮かび上がりました。参加者は黙とうして犠牲者に祈りをささげました。
呼びかけ人で、広島市立大学国際学部の田浪亜央江准教授が「世界の人々はイスラエルによる圧倒的な武力攻撃に対して、『今すぐ虐殺をやめろ』という声をあげなくてはならない」と述べました。
市民団体などはキャンドルの様子を写真に撮ってSNSなどを通じて世界に発信することにしています。