感染拡大による経営への影響の度合いを尋ねたところ、「すでに悪影響が出ている」と答えた企業が全体の27%となりました。また、「悪影響を見込んでいる」が6%、「事態が長期化すれば悪影響が及ぶおそれがある」が60%でした。「影響はない」や「プラスの影響が出る」と答えた企業はありませんでした。
また、具体的な影響を複数回答で尋ねたところ、「出張の自粛や禁止、中国からの来客の減少など中国との人の往来に支障が出ている」が57社で最も多く、次いで、「中国拠点の生産や営業に支障が生じている。あるいは生じるおそれがある」が53社、「製品・サービスなどの売り上げの減少」が40社、などとなりました。
感染拡大による業績への影響については、「悪化」と答えた企業が45%で最も多く「横ばい」が24%、「改善」とした企業はなく、「無回答」が29%でした。
一方、ビジネスが通常に戻るまでどの程度の時間がかかると見るか尋ねたところ、「半年程度」と答えた企業が全体の28%、「3か月程度」が17%、「1か月程度」が4%で「1年程度」と答えた企業もありました。「無回答」は48%でした。調査からは国内の多くの企業がビジネスへの悪影響や事態の長期化を懸念していることがうかがえます。
中国に工場を持つメーカーは
新型コロナウイルスの感染拡大によって中国・湖北省などに工場をもつ日本の電子基板メーカーは、操業停止が続き、操業再開に向けて部品の輸送ルートを検討するなど対応に追われています。
大阪・中央区に本社がある「シークス」はほかのメーカーの発注を受けて電子基板などの製造を請け負うEMS・受託製造サービスの分野で国内トップのメーカーです。
中国には湖北省・孝感と上海、それに広東省・東莞の3か所に工場があります。主に自動車に使われる部品を製造し、中国国内の部品メーカーを通じて自動車メーカーに納品されています。
当局の通知を受けて会社では孝感の工場の再開予定を来月上旬に延期しました。
会社ではこれまで上海の倉庫から生産に必要な部品を輸送しており、操業再開に備えてトラックによる輸送をまず検討しました。しかし、ドライバーの不足や検問による道路渋滞によって物流が機能していないという情報がもたらされました。
会社では、上海から香港を経由して飛行機で部品を輸送することも検討しましたが、香港からの航空便が運休する可能性もあって輸送は厳しい状況だと判断しました。このため、現在は香港経由でのトラック輸送を検討しているということです。
この会社では3つの工場を含めた中国での売り上げが会社全体のおよそ4分の1を占めています。操業停止が長引いた場合には業績への影響も出かねないとして会社では懸念を強めています。
シークスの営業を統括する柳瀬晃治 執行役員は「たくさんの産業が集まる中国のへそのような場所が封鎖されているので非常に大きな影響がある。中国から輸出している製品は顧客と相談をしながら将来は生産地を中国以外に移すことを検討しないといけないだろう」と話していました。
生産拠点 見直す動きも
中国で新型コロナウイルスの感染が拡大していることから企業の間では生産拠点を見直す動きが出ています。
このうち、東京や大阪、京都などで15店舗を展開しているオーダースーツの販売店では、10年以上前から中国の現地企業の工場に縫製を委託し、スーツ3着で5万円といった価格を売りに主力の商品としてきました。
しかし、新型コロナウイルスの感染拡大によって、影響が深刻な湖北省にある縫製工場は、春節が終わったあとも操業を再開できず、湖北省以外の2つの工場で対応しているということです。
注文を受けたスーツの客への引き渡しは通常、1か月程度で、現在は遅れは生じていませんが、操業停止が長引いたり、ほかの工場も止まったりすると、納品が遅れるおそれがあります。
店では、客にこれからの注文は、予定より遅れる可能性があることを説明していますが、こうした状況が続けば購入を見送る人が出てくるのではないかと心配しています。
このため、中国製に比べて価格が高い国内の工場で縫製しているスーツを今月から急きょ特別に値下げをして、客に勧めることにしました。国内の工場は生産が安定しているからです。
さらに、この店では東南アジアなどの工場に縫製を委託することも検討しているということです。
オーダースーツ店「ツキムラ」の岸裕亮専務は「1つの国だけで縫製を続けるのはリスクがあるので、新しい工場を探すのが大切になってくる。中国で縫製できなくなるおそれもあって、当面は心配な時期が続きそうだ」と話していました。