南海なんかいトラフ巨大きょだい地震じしん「事前じぜん避難ひなん」 期限きげん内ないの防災ぼうさい計画けいかく策定さくていは半数はんすう

国くにが去年きょねん３月さんがつに示しめしたガイドラインでは、南海なんかいトラフでマグニチュード８はち以上いじょうの巨大きょだい地震じしんが起おき、さらなる巨大きょだい地震じしんの発生はっせいに警戒けいかいを呼よびかける臨時りんじ情報じょうほうが発表はっぴょうされた場合ばあい、一部いちぶの住民じゅうみんは事前じぜんに１いち週間しゅうかん避難ひなんするとし、自治体じちたいに対にたいして今月こんげつ末まつをめどに防災ぼうさい計画けいかくを作つくるよう求もとめています。

ＮＨＫえぬえいちけいは先月せんげつ、「津波つなみ避難ひなん対策たいさく特別とくべつ強化きょうか地域ちいき」に指定していされている関東かんとうから九州きゅうしゅうにかけての139自治体じちたいに計画けいかくの策定さくてい状況じょうきょうなどを訪たずねるアンケートを行おこない、93.5％に当にあたる130自治体じちたいから回答かいとうを得えました。

その結果けっか、今月こんげつ末まつの期限きげんまでに計画けいかく策定さくていが間に合まにあわないと答こたえた自治体じちたいは、全体ぜんたいのおよそ半数はんすうの64に上のぼりました。

時間じかんがかっている項目こうもくや理由りゆうについて、「事前じぜん避難ひなん対象たいしょう地域ちいきの設定せってい」が19％、「避難ひなんが必要ひつような人ひとの把握はあく」と「避難ひなん所しょの確保かくほ」がそれぞれ８はち％、「住民じゅうみんの理解りかいを得える」が６ろく％で、「その他そのた」と答こたえた残のこる６ろく割わりの自治体じちたいの中なかでは、「都とや県けんの計画けいかくや方針ほうしんの決定けっていを待まっている」や「職員しょくいんが不足ふそくしている」といった回答かいとうが目立めだちました。

一方いっぽう、すでに計画けいかく作づくりを終おえたか今月こんげつ末まつまでに終おえる予定よていと答こたえた66の自治体じちたいに計画けいかくに盛り込もりこんだ内容ないようを複数ふくすう回答かいとうで尋たずねたところ、「避難ひなん所しょの運営うんえい体制たいせい」が41％、「事前じぜん避難ひなんに使つかう避難ひなん所しょ」は29％、「避難ひなん所しょの受け入うけいれ人数にんずう」は14％、「避難ひなん所しょへの移動いどう方法ほうほうや経路けいろ」は11％にとどまっていて、計画けいかくは作つくったものの、今後こんご、さらなる内容ないようの充実じゅうじつが必要ひつようなことをうかがわせる結果けっかとなりました。

南海なんかいトラフ巨大きょだい地震じしんの防災ぼうさい対応たいおうに詳くわしい名古屋なごや大学だいがくの福ふく和かず伸夫のぶお教授きょうじゅは、「臨時りんじ情報じょうほうが出でても確実かくじつに地震じしんが起おきるわけではなく、警戒けいかいしつつ社会しゃかいは維持いじしなければならない。新型しんがたコロナウイルスで社会しゃかいが直面ちょくめんしている課題かだいが、南海なんかいトラフ地震じしん臨時りんじ情報じょうほうが発表はっぴょうされた時ときにも起おきる。正解せいかいのない問題もんだいに対にたいして第だい一いち段階だんかいの議論ぎろんが始はじまった段階だんかいだ。今後こんご、国くにや自治体じちたい、住民じゅうみんや企業きぎょうでよりよい計画けいかくにしていくことが継続けいぞく的てきに求もとめられる」と指摘してきしています。

アンケートの詳報しょうほう

アンケートは、先月せんげつ実施じっしし、臨時りんじ情報じょうほうが発表はっぴょうされて、「事前じぜん避難ひなん」が必要ひつようになった場合ばあいの防災ぼうさい計画けいかくの作成さくせい状況じょうきょうや課題かだいを聞ききました。対象たいしょうは、「津波つなみ避難ひなん対策たいさく特別とくべつ強化きょうか地域ちいき」に指定していされている関東かんとうから九州きゅうしゅうにかけての139自治体じちたいで、93.5％の130自治体じちたいから回答かいとうを得えました。以下いか、アンケートの内容ないようを詳くわしく見みていきます。

【半数はんすう「間に合まにあわない」】

国くには、今月こんげつ末まつをめどに、防災ぼうさい計画けいかくを作つくるよう求もとめていますが、アンケートでは、およそ半数はんすうの64自治体じちたいが、「間に合まにあわない」と回答かいとうしました。

時間じかんがかかっている理由りゆうをたずねると、「事前じぜん避難ひなんの対象たいしょう地域ちいきの設定せってい」が19％で最もっとも多おおく、次ついで「避難ひなんが必要ひつような人ひとの把握はあく」と「避難ひなん所しょの確保かくほ」がそれぞれ８はち％、「住民じゅうみんの理解りかいを得える」が６ろく％となりました。

また、「その他そのた」と回答かいとうした残のこる６ろく割わりの自治体じちたいからは、「都とや県けんの計画けいかくや方針ほうしんの決定けっていを待まっている」とか「職員しょくいんが不足ふそくしている」といった回答かいとうが目立めだちました。

【「避難ひなん所しょ」記載きさいは３さん割わりのみ】

すでに計画けいかくを作つくり終おえたか今月こんげつ末まつまでに作つくり終おえる予定よていと答こたえた66自治体じちたいには、計画けいかくに盛り込もりこんだ内容ないようを複数ふくすう回答かいとうでたずねました。

その結果けっか、「避難ひなん所しょの運営うんえい体制たいせい」は41％「事前じぜん避難ひなんに使つかう避難ひなん所しょ」は29％「避難ひなん所しょの受け入うけいれ人数にんずう」は14％「避難ひなん所しょへの移動いどう方法ほうほうや経路けいろ」は11％にとどまっていて、今後こんご、内容ないようの充実じゅうじつが必要ひつようなことをうかがわせる内容ないようとなりました。

【「住民じゅうみんへの周知しゅうち」に課題かだい】

すべての自治体じちたいに、防災ぼうさい計画けいかくを実行じっこう性せいのあるもにするために何なにが必要ひつようか、複数ふくすう回答かいとうでたずねたところ、「住民じゅうみんへの周知しゅうち・理解りかいの促進そくしん」が92％で最もっとも多おおく、次ついで「要よう支援しえん者しゃの把握はあくと避難ひなん手段しゅだんの確保かくほ」が65％「企業きぎょうや学校がっこうなどの対応たいおうとの整合せいごう性せい」が64％「定期ていき的てきな訓練くんれんの実施じっし」が62％などとなりました。

自治体じちたいからは、「住民じゅうみんへの制度せいど周知しゅうちが肝きも」、「住民じゅうみんの理解りかいが図はかられないと行動こうどうに移うつすのは厳きびしい」などの声こえが寄よせられた一方いっぽうで、現状げんじょうについては「意識いしきが醸成じょうせいできているとは考かんがえられない」などと課題かだいを指摘してきする声こえが多おおく、今後こんご、一層いっそうの周知しゅうちが課題かだいです。

【学校がっこう・企業きぎょうとの歩調ほちょうを】

学校がっこうや企業きぎょう、公共こうきょう交通こうつう機関きかんとの関係かんけいについても、「学校がっこうや企業きぎょうが普通ふつうに活動かつどうしている中なかで、自治体じちたいが避難ひなんを呼よびかけても避難ひなんの重おもみが全まったく伝つたわらない」などと、学校がっこうや企業きぎょうの対応たいおうとどう歩調ほちょうを合あわせるかを課題かだいとして挙あげる自治体じちたいも多おおくありました。

【避難ひなん所しょ運営うんえいどうする】

すべての自治体じちたいに実際じっさいに事前じぜん避難ひなんを行おこなう際さいに不安ふあんなことは何なにか、複数ふくすう回答かいとうでたずねたところ、「長期ちょうき間かんの避難ひなん所しょ運営うんえいの人員じんいん確保かくほ」が88％で最もっとも多おおく、次ついで、「避難ひなん所しょ運営うんえいなどにかかる財政ざいせい的てきな負担ふたんが大おおきくなる」が64％、「想定そうていより多おおくの人ひとが避難ひなんすることによる避難ひなん所しょ不足ふそく」が62％、「観光かんこう客きゃくなどへの対応たいおう・周知しゅうちをめぐる混乱こんらん」が60％などとなりました。

避難ひなん所しょの運営うんえいについて、国くにのガイドラインでは、避難ひなん者しゃ自身じしんが行おこなうことを基本きほんとするとしていますが、自治体じちたいからは、職員しょくいんが不足ふそくする中なかで、避難ひなん者しゃに任まかせたとしても「日にち中ちゅうは働はたらきに出でる人ひとも多おおく、避難ひなんしている要よう配慮はいりょ者しゃ等とうのサポートを誰だれが行おこなうのか」といった不安ふあんの声こえが寄よせられました。

また、観光かんこう地ちを抱かかえる自治体じちたいからは「帰宅きたく困難こんなん者しゃ・自主じしゅ避難ひなん者しゃなどで避難ひなん者しゃが多数たすうになった場合ばあいの対応たいおう」に不安ふあんを感かんじる声こえが上あがったほか、「デマに惑まどわされず住民じゅうみんが行動こうどうをとれるよう適切てきせつな情報じょうほう伝達でんたつができるか不安ふあんがある」といった声こえも上あがりました。

このほか、「避難ひなんしない人ひとへの対応たいおうをどうするのか」、「１いち週間しゅうかん経過けいかしたあと避難ひなん者しゃを自宅じたくに帰かえしてよいのか」、「事前じぜん避難ひなんした地域ちいきの治安ちあんをどう確保かくほするのか」など実際じっさいに避難ひなんした場合ばあいの対応たいおうの課題かだいをあげる自治体じちたいもありました。

【財政ざいせい支援しえんあり周知しゅうち必要ひつよう】

アンケート調査ちょうさでは、避難ひなん所しょの開設かいせつや運営うんえいについて、国くにに財政ざいせい的てきな支援しえんを求もとめる声こえが非常ひじょうに多おおく寄よせられました。ただ、内閣ないかく府ふによりますと、事前じぜん避難ひなんによって避難ひなん生活せいかつを余儀よぎなくされた場合ばあいには、「災害さいがい救助きゅうじょ法ほう」が適用てきようされ、避難ひなん所しょの開設かいせつや運営うんえいにかかる費用ひようは、財政ざいせい的てきな支援しえんの対象たいしょうになるということです。

専門せんもん家かは、市町村しちょうそんに十分じゅうぶんに情報じょうほうが伝つたわっていない可能かのう性せいがあるとして、丁寧ていねいな説明せつめいが必要ひつようだと指摘してきしています。

海岸かいがん線せんが長ながい町まち 計画けいかく策定さくていに苦心くしん

計画けいかく策定さくていに苦心くしんしていて「期限きげんに間に合まにあわない」と回答かいとうした自治体じちたいの一ひとつが三重みえ県けんの南みなみ伊勢いせ町まちです。

複雑ふくざつに入り組いりくんだ海岸かいがん線せんは三重みえ県内けんないの自治体じちたいで最もっとも長ながいおよそ250キロにおよび、巨大きょだい地震じしんの発生はっせいから最短さいたん８はち分ふんで津波つなみが到達とうたつすると想定そうていされています。

計画けいかくづくりに時間じかんがかかっている理由りゆうの１ひとつが、事前じぜん避難ひなん対象たいしょう地域ちいきの絞り込しぼりこみです。町まちの防災ぼうさい担当たんとうの職員しょくいん２に人にんで沿岸えんがん33の地区ちくすべてについて選定せんてい作業さぎょうに当あたってきました。国くにのガイドラインをそのまま適用てきようすると、町まち役場やくばがある場所ばしょや避難ひなん可能かのうな地域ちいきを含ふくむ地区ちく全体ぜんたいが事前じぜん避難ひなん対象たいしょうとなってしまうケースもあり、個別こべつの事情じじょうに応おうじた絞り込しぼりこみに時間じかんがかかっています。

もう一ひとつの大おおきな課題かだいが避難ひなん所しょの確保かくほです。船越ふなこし地区ちくでは津波つなみに襲おそわれた場合ばあいの避難ひなん所しょとして高台たかだいの中学校ちゅうがっこうを指定していしています。体育館たいいくかんや教室きょうしつなど施設しせつのすべてを使つかえばおよそ2200人にんを収容しゅうようできますが、津波つなみ被害ひがいが出でていない「事前じぜん避難ひなん」の段階だんかいで学校がっこうを休校きゅうこうにするかどうか、町まちと教育きょういく委員いいん会かいとの間まで調整ちょうせいが終おわっていません。

南みなみ伊勢いせ町立ちょうりつ南勢なんせい中学校ちゅうがっこうの後藤ごとう武彦たけひこ校長こうちょうは「授業じゅぎょうを平行へいこうしてできればいいのですが、難むずかしければ休校きゅうこうもやむをえないかもしれません。新型しんがたコロナウイルス対策たいさくで休校きゅうこうになりましたが、この経験けいけんは今後こんご、事前じぜん避難ひなんの際さいの教訓きょうくんになると思おもいます」と話はなしていました。

南みなみ伊勢いせ町まちの防災ぼうさい担当たんとう、濱はま地ち智さとし視しさんは「作業さぎょうは膨大ぼうだいですが、町まちとしてはより地域ちいきの実情じつじょうに応おうじた設定せっていをしたい。避難ひなん所しょとして使つかう学校がっこうを休校きゅうこうするかなども関係かんけい者しゃと相談そうだんしながら決きめていきたい」と話はなしていました。