天皇皇后両陛下が菊の花で飾られた式壇に着かれたあと、安倍総理大臣が「戦争の惨禍を二度と繰り返さない。歴史と謙虚に向き合い、この決然たる誓いを貫いてまいります。争いの温床となるさまざまな課題に真摯(しんし)に取り組み、万人が心豊かに暮らせる世の中を実現することに不断の努力を重ねてまいります」と式辞を述べました。
そして、参列者全員で1分間の黙とうをささげました。
続いて天皇陛下が「さきの大戦において、かけがえのない命を失った数多くの人々とその遺族を思い、深い悲しみを新たにいたします。戦後の長きにわたる平和な歳月に思いを致しつつ、ここに過去を顧み、深い反省とともに、今後、戦争の惨禍が再び繰り返されぬことを切に願い、全国民と共に、戦陣に散り戦禍に倒れた人々に対し、心から追悼の意を表し、世界の平和とわが国の一層の発展を祈ります」とおことばを述べられました。
来年4月の天皇陛下の退位を前に両陛下が追悼式に出席されるのはことしが最後となります。
このあと遺族を代表して昭和19年8月に北マリアナ諸島のテニアン島で父親を亡くした宮城県石巻市の鈴木喜美男さん(75)が「遺品となった戦地からの便りは東日本大震災により流失してしまいましたが、父の生きた証しを伝えていくことは、遺族としての役割と考えております。再び悲惨な戦禍を繰り返すことなく、世界の平和、命の大切さをしっかりと後世に受け継いでいくため、たゆまぬ努力を続けることをお誓い申し上げます」と述べました。
式典ではこのあと、参列者が式壇に菊の花を手向けて戦争で亡くなったおよそ310万人の霊を慰めました。
終戦から73年を迎えて遺族の高齢化が進み、参列した遺族の78%は、70歳以上となり、参列した戦没者の妻も13人にとどまりました。
そのひとりで、最年長の参列者でもある東京 練馬区に住む102歳の芹ヶ野春海さんは昭和20年6月に沖縄本島で、結婚してまもない夫の博さん(当時31)を亡くしました。
芹ヶ野さんは「戦争は絶対やってはだめだ。自分もとても悲しい思いをしたし、みんな困っていた。人生でいちばん嫌な記憶です」と涙を流しながら話していました。
また、戦争の記憶を受け継いでいこうと、18歳未満の若い世代合わせて121人が式典に参列しました。
このうち香川県丸亀市の高校1年生、原淳一郎さん(16)は、昭和20年に曽祖父の前田馨さん(当時29)と田中茂さん(当時33)の2人がフィリピンのルソン島で戦死しています。
原さんは「これまで祖父などからひいおじいちゃんが戦死したという話を聞いたことはあったが、聞くだけでなく、もらった資料を読んで戦死したことが本当にあったことなんだと現実味をおびて感じました。二度と戦争が起きないためには自分に何ができるかを考えていきたいです」と話していました。