ウクライナ大統領だいとうりょう選せんの決選けっせん投票とうひょう ロシアの関係かんけいに影響えいきょう

ウクライナでは５ご年ねん前まえ、ロシアがウクライナ南部なんぶのクリミアを武力ぶりょくで併合へいごうし、東部とうぶでは現在げんざいも紛争ふんそうが続つづいています。

選挙せんきょ戦せんで優位ゆういに立たつゼレンスキー氏しが、ポロシェンコ政権せいけん下かで相次あいつぐ汚職おしょくと、経済けいざいの低迷ていめいを批判ひはんして支持しじを広ひろげてきたのに対にたいして、ポロシェンコ大統領だいとうりょうは、欧米おうべいの軍事ぐんじ同盟どうめい、ＮＡＴＯなと-＝北大ほくだい西洋せいよう条約じょうやく機構きこうへの早期そうき加盟かめいを掲かかげるなど、ロシアとの対決たいけつ姿勢しせいを前面ぜんめんに出だし、巻き返まきかえしを図はかってきました。

５ご年ねん前まえのクリミア併合へいごうのあとロシアは欧米おうべい各国かっこくから経済けいざい制裁せいさいを科かされ、国際こくさい的てきな孤立こりつを深ふかめてきたことから、今後こんごの欧米おうべいとロシアとの関係かんけいにも大おおきな影響えいきょうを与あたえる選挙せんきょとして注目ちゅうもくされています。

投票とうひょうは日本にっぽん時間じかんの21日にち午後ごご２に時じに始はじまり、即日そくじつ開票かいひょうされて、早はやければ日本にっぽん時間じかんの22日にち朝あさにも大勢たいせいが判明はんめいする見通みとおしです。

優位ゆういに立たつ新人しんじん・ゼレンスキー氏しは政治せいじ経験けいけんなし

ボロディミル・ゼレンスキー氏しは、ウクライナ東部とうぶドニエプロペトロフスク州しゅう出身しゅっしんの41歳さい。

コメディアンや俳優はいゆうとして活躍かつやくする人気にんきタレントで、政治せいじ経験けいけんはありません。

熱血漢ねっけつかんの高校こうこう教師きょうしが突然とつぜん、大統領だいとうりょうに転身てんしんし、次々つぎつぎと政治せいじ改革かいかくを進すすめ、汚職おしょくを撲滅ぼくめつしていくテレビドラマ「国民こくみんのしもべ」で主役しゅやくを演えんじ、既存きそんの政治せいじ家かとは一線いっせんを画かくす、清廉せいれんなイメージを浸透しんとうさせて、若わかい世代せだいを中心ちゅうしんに支持しじを伸のばしてきました。

先月せんげつ行おこなわれた１いち回かい目めの投票とうひょうでは、39人にんの候補こうほの中なかで最もっとも多おおい30％余あまりの票ひょうを得えて、２に位いのポロシェンコ大統領だいとうりょうに２に倍ばい近ちかい差さをつけて決選けっせん投票とうひょうに進すすみました。

今月こんげつ18日にちに発表はっぴょうされた世論せろん調査ちょうさでは、決選けっせん投票とうひょうに臨のぞむ２に人にんのうちゼレンスキー氏しに投票とうひょうすると答こたえた人ひとの割合わりあいは58％で、ポロシェンコ大統領だいとうりょうの22％を大おおきく引き離ひきはなしています。

一方いっぽうで政治せいじ経験けいけんのないゼレンスキー氏しに対にたいしては、南部なんぶのクリミアを併合へいごうしたロシアとの外交がいこう関係かんけいや東部とうぶで続つづく戦闘せんとうの終結しゅうけつ、また、まん延まんえんする汚職おしょくの撲滅ぼくめつや低迷ていめいする経済けいざいの立て直たてなおしに向むけた政治せいじ手腕しゅわんを不安ふあん視しする声こえもあります。

とくに外交がいこう面めんでの懸念けねんを払拭ふっしょく（ふっしょく）しようとゼレンスキー氏しは今月こんげつ12日にち、フランスのマクロン大統領だいとうりょうとパリで会談かいだんし、ＥＵい-ゆ-＝ヨーロッパ連合れんごうへの加盟かめいを目指めざす姿勢しせいを国内外こくないがいにアピールするなど、政権せいけん交代こうたいを見据みすえた動うごきを加速かそくさせてきました。

現職げんしょく・ポロシェンコ氏しはロシアに強硬きょうこう姿勢しせい

現職げんしょくのペトロ・ポロシェンコ大統領だいとうりょうは、ウクライナ南部なんぶオデッサ州しゅう出身しゅっしんの53歳さい。

ウクライナを代表だいひょうする菓子かしメーカー「ロシェン」を経営けいえいする実業じつぎょう家かから政治せいじ家かに転身てんしんしました。2004年ねんから翌年よくねんにかけて起おきた大だい規模きぼな民主みんしゅ化か運動うんどう、いわゆるオレンジ革命かくめいを率ひきいたひとりで、その後そのご、欧米おうべい寄よりのユーシェンコ政権せいけんで外相がいしょうに抜ばってきされました。

2014年ねん、野党やとう勢力せいりょくによるデモでロシア寄よりの政権せいけんが崩壊ほうかいした政変せいへんのあとに行おこなわれた大統領だいとうりょう選挙せんきょで初はつ当選とうせんし、第だい５ご代だいの大統領だいとうりょうに就任しゅうにんしました。

しかしロシアによるクリミア併合へいごうや東部とうぶで続つづく紛争ふんそうの解決かいけつに道筋みちすじをつけられないうえ、政権せいけん内ないで汚職おしょくが相次あいついだことで徐々じょじょに国民こくみんの支持しじを失うしないます。

先月せんげつ行おこなわれた大統領だいとうりょう選挙せんきょの１いち回かい目めの投票とうひょうでは得票とくひょう率りつ15％余あまりで２に位いになり決選けっせん投票とうひょうに進すすんだものの、新人しんじんのゼレンスキー氏しに270万まん票ひょうの大差たいさをつけられました。

今月こんげつ18日にちに発表はっぴょうされた世論せろん調査ちょうさでは、決選けっせん投票とうひょうに臨のぞむ２に人にんのうちポロシェンコ氏しに投票とうひょうすると答こたえた人ひとの割合わりあいは22％で、ゼレンスキー氏しの３さん分ぶんの１いち程度ていどにとどまりました。

ポロシェンコ大統領だいとうりょうは今月こんげつ12日にち、ドイツのメルケル首相しゅしょうやフランスのマクロン大統領だいとうりょうと相次あいついで会談かいだんして現職げんしょくの強つよみをアピールしたほか、選挙せんきょ戦せん終盤しゅうばんでは政治せいじ経験けいけんのないゼレンスキー氏しへの批判ひはんを強つよめて巻き返まきかえしを図はかってきました。

両りょう候補こうほの政策せいさく 対たいロシアへの姿勢しせいに違ちがい

新人しんじんのゼレンスキー氏しは、選挙せんきょ公約こうやくで、大統領だいとうりょう職しょくを務つとめるのは１いち期き５ご年ねんに限かぎるとしたうえで大統領だいとうりょうや国会こっかい議員ぎいんの不ふ逮捕たいほ特権とっけんをなくすことや政治せいじ家かや公務員こうむいんの間まで広ひろがる汚職おしょくの撲滅ぼくめつを訴うったえています。

また外交がいこう・安全あんぜん保障ほしょう面めんでは、ウクライナ東部とうぶで５ご年間ねんかんにわたって続つづく紛争ふんそうについて、欧米おうべいの支援しえんを得えながら、親しんロシア派はとの戦闘せんとうを終結しゅうけつさせ実効じっこう支配しはいされている東部とうぶ地域ちいきを取り戻とりもどすことを目指めざすとしています。

一方いっぽう、ロシアのプーチン政権せいけんが警戒けいかいする、ＮＡＴＯなと-＝北大ほくだい西洋せいよう条約じょうやく機構きこうへの国くにの加盟かめいの方針ほうしんについては、国民こくみん投票とうひょうを実施じっしして国民こくみんの信しんを問とう考かんがえを示しめすなど、ロシア系けいの住民じゅうみんに一定いっていの配慮はいりょも見みせています。

これに対にたいしポロシェンコ大統領だいとうりょうは「ＥＵい-ゆ-とＮＡＴＯなと-に加盟かめいしなければ、ウクライナの独立どくりつと安全あんぜんは保障ほしょうされない」として、2023年ねんにＥＵい-ゆ-とＮＡＴＯなと-の加盟かめいに向むけた手続てつづきを始はじめると公約こうやくに掲かかげました。

そして、東部とうぶのドネツク州しゅうとルガンスク州しゅう、それに南部なんぶのクリミアを、ロシアによって「占領せんりょうされた土地とち」と位置いちづけたうえで「国くにの完全かんぜんな領土りょうど復活ふっかつを目指めざす」と強調きょうちょうし、軍ぐんの強化きょうかや兵器へいきの近代きんだい化かを最さい優先ゆうせんに進すすめるとしています。

ポロシェンコ大統領だいとうりょうは選挙せんきょ公約こうやくでさらに、東部とうぶやクリミアで受うけた損害そんがいをロシアに賠償ばいしょう請求せいきゅうする方針ほうしんを掲かかげるなど、ゼレンスキー氏しと比くらべるとロシアへの強硬きょうこう姿勢しせいが際立きわだっています。

ロシアは現職げんしょく大統領だいとうりょうの再選さいせん望のぞまず

ロシアとしては、今回こんかいのウクライナ大統領だいとうりょう選挙せんきょでポロシェンコ大統領だいとうりょうが再選さいせんすることは望のぞんでいません。

ポロシェンコ大統領だいとうりょうは、アメリカが主導しゅどうするＮＡＴＯなと-＝北大ほくだい西洋せいよう条約じょうやく機構きこうへの加盟かめいを推し進おしすすめるなど、ロシアに対にたいして強硬きょうこうな姿勢しせいを貫つらぬいているからです。

これに対にたいして、新人しんじんのゼレンスキー氏しは、東部とうぶ地域ちいきで続つづく政府せいふ軍ぐんと親おやロシア派はの武装ぶそう勢力せいりょくの戦闘せんとうの終結しゅうけつに向むけて、武装ぶそう勢力せいりょくの後うしろ盾たてになっているロシアと話はなしあって打開だかい策さくを模索もさくする必要ひつよう性せいも主張しゅちょうしていて、ロシアはこうした発言はつげんを注視ちゅうししています。

ロシア国営こくえいテレビは、ウクライナの大統領だいとうりょう選挙せんきょに関にかんするニュースの中なかで、ポロシェンコ大統領だいとうりょうについて批判ひはん的てきに伝つたえる一方いっぽう、ゼレンスキー氏しに対にたいしては好意こうい的てきに伝つたえていて、プーチン政権せいけんの意向いこうを受うけたものとみられます。

ロシア大統領だいとうりょう府ふのペスコフ報道ほうどう官かんは19日にち、ゼレンスキー氏しについて「これまでとは違ちがう見方みかたを示しめすことを望のぞむ」と述のべ、ウクライナとの関係かんけいが改善かいぜんに向むけて動き出うごきだすことに期待きたいを示しめしました。

ただ、ゼレンスキー氏しも、クリミアを併合へいごうしたロシアに反発はんぱつし、ＥＵい-ゆ-＝ヨーロッパ連合れんごうと連携れんけいを強つよめたい考かんがえで、ゼレンスキー氏しが選挙せんきょで当選とうせんした場合ばあいでも、新しん政権せいけんがロシア寄よりに大おおきくかじを切きるとまでは考かんがえていないものとみられます。

ロシアとしては、ゼレンスキー氏しを支援しえんするとみられる財閥ざいばつの影響えいきょうが強つよく、政治せいじ経験けいけんのないゼレンスキー氏しが当選とうせんした場合ばあい、どこまで主体しゅたい的てきに政権せいけんを運営うんえいしていけるのかを疑問ぎもん視ししていて、慎重しんちょうに分析ぶんせきしていくものとみられます。