ところが中国政府が国内の環境汚染を理由に、去年1月から主に生活由来の廃プラスチックの輸入を禁止した結果、アメリカからの輸出量全体は去年、107万トンと前年より36%減りました。
中国向けの輸出だけを見ると89%の減少で、全体に占める中国向けの割合は5%にまで減りました。
また、廃プラスチックの輸出量が世界で2番目に多い日本もアメリカと似た状況となっています。JETRO=日本貿易振興機構によりますと、日本は2016年は153万トン、2017年は143万トンを輸出し、それぞれ52%が中国向けでしたが、去年は101万トンと前年より30%減り、中国向けが占める割合は5%にまで低下しました。
アメリカも日本も中国向けが減った一方で、タイやマレーシアなどへの輸出が増えていますが、こうした東南アジアの国々も輸入規制を強めています。
このためアメリカや日本では輸出が減った分、各自治体が廃プラスチックを抱え込み、その扱いに苦慮するケースが相次いでいます。
米 回収断念する州も
プラスチックごみが行き場を失ったことで、アメリカの自治体は対応に追われています。
南部バージニア州のハリソンバーグ市は、中国の輸入禁止措置以降、ごみ処理業者を確保できなくなったとして、家庭からのプラスチックごみの回収を断念しました。
ペットボトルなど一部については、市のリサイクルセンターに持ち込めば引き取っていますが、ほかのプラスチック容器は埋め立て処分しています。
NHKの取材班が訪れると、市民が車を運転してペットボトルなどを持ち込んでいました。
ハリソンバーグ市のハートマン局長は「もちろん自宅から回収できればよいが、それができないということを市民に正直に言うしかない」と話していました。
一方、全米でリサイクルが最も進んでいる西海岸のサンフランシスコ市では、リサイクル率を上げるための取り組みを強化しています。
市と契約しているごみ処理業者が、センサーを搭載した最新鋭の機械を使ってプラスチックごみを透明なペットボトル、色つきのペットボトル、食品容器、レジ袋など8種類に厳格に分別し、徹底的に異物を取り除いたうえでこん包することで、価値を高めています。
これまでの最大の買い手は中国でしたが、輸入禁止を受けて、今では中国向けはゼロになり、インドネシアやマレーシアなどに輸出しているほか、国内でも売っていますが、焼却処分はしていないということです。
この会社に27年間勤める広報担当のロバート・リードさんは「市民には汚染を防ぐため、ペットボトルを空にし、食品容器の中身を取り除くよう求めています。解決策はほかの国にプラスチックを輸出することではなく、プラスチックの消費自体を減らすこと以外にありません」と話していました。
規制強化する州と規制制限する州
アメリカでは使い捨てのレジ袋やプラスチック容器の利用を制限する州が広がっています。その一方で、規制強化は経済活動を停滞させるとして、利用制限の動きを法律で禁止する州も出始めています。
ニューヨーク州では先月、プラスチック製のレジ袋の提供を禁止する法律が成立し、来年3月に施行されます。これはカリフォルニア州とハワイ州に次ぐ措置です。
メーン州でも先月、リサイクルが難しいとして、レストランやスーパーが発泡スチロールを用いた容器を提供することを禁止する法律が成立し、2021年1月に施行されます。全米で初めての措置です。
カリフォルニア州はことし1月、レストランが客からの要望がないかぎり、使い捨てのプラスチック製ストローを提供することを禁止しましたが、州の議会では今、2030年までにプラスチック容器の提供を段階的に禁止する法案や、ホテルがシャンプーなどを小型のプラスチックボトルに入れて提供することを2023年から禁止する法案が審議されています。
一方で、こうした規制強化の動きへの反発も広がっています。オクラホマ州の知事は「企業活動を制限したくない」として、州内の自治体がプラスチック製の容器やレジ袋などの提供を制限することを禁止する法案に先月署名し、法律が成立しました。
アメリカのメディアによりますと、これまでにアイダホ州やウィスコンシン州など、10を超える州が同様の措置に踏み切ったということです。