ハラスメント全面ぜんめん禁止きんし 初はつの国際こくさい条約じょうやくを採択さいたく 経団連けいだんれんは棄権きけん

採決さいけつでは、加盟かめい国こくの政府せいふに２に票ひょう、労働ろうどう組合くみあいと経営けいえい者しゃ団体だんたいにそれぞれ１いち票ひょうずつ投票とうひょう権けんが割り当わりあてられ、結果けっか、条約じょうやくは賛成さんせい439、反対はんたい７なな、棄権きけん30と、圧倒的あっとうてき多数たすうの支持しじを得えて、採択さいたくされました。

このうち日本にっぽんから参加さんかした政府せいふと連合れんごうは支持しじに回まわった一方いっぽう、経団連けいだんれんは棄権きけんしました。

条約じょうやくでは、暴力ぼうりょくやハラスメントについて「身体しんたい的てき、心理しんり的てき、性的せいてき、経済けいざい的てき被害ひがいを引き起ひきおこしかねない」などと定義ていぎし、法的ほうてきに禁止きんしするとしています。

対象たいしょうになるのは、正規せいきの従業じゅうぎょう員いんのほか、インターンやボランティア、それに仕事しごとを探さがしている人ひとも含ふくまれ、職場しょくばだけでなく、出張しゅっちょう先さきや通勤つうきん中ちゅうなども適用てきようされるとしています。

今後こんご、ＩＬＯあいえるお-の187の加盟かめい国こくはそれぞれ条約じょうやくを批准ひじゅんするか検討けんとうし、批准ひじゅんした国くには、条約じょうやくに沿そった国内こくない法ほうを整備せいびしていくことが求もとめられていて、職場しょくばでの暴力ぼうりょくやハラスメントの根絶こんぜつにつながるか注目ちゅうもくされます。

ハラスメント禁止きんし条約じょうやくの背景はいけい

ＩＬＯあいえるお-が、職場しょくばでの暴力ぼうりょくやハラスメントを全面ぜんめん的てきに禁止きんしする初はじめての国際こくさい条約じょうやくを採択さいたくした背景はいけいには、セクハラや性せい暴力ぼうりょくを告発こくはつする「＃ＭｅＴｏｏ」が世界せかい的てきに広ひろがり、女性じょせいに限かぎらずすべての人ひとに対にたいする暴力ぼうりょくやハラスメントを許ゆるさない風潮ふうちょうが高たかまったことがあります。

条約じょうやくの制定せいていを目指めざす話し合はなしあいの中なかで、ヨーロッパなどすでに国内こくない法ほうの整備せいびが整ととのっている国くには条約じょうやくを支持しじする一方いっぽう、アメリカやロシア、それに経営けいえい者しゃ団体だんたいなどは慎重しんちょうな姿勢しせいを示しめしていました。

条約じょうやくの内容ないようは、ＩＬＯあいえるお-の専門せんもん委員いいん会かいで今月こんげつ10日にちから議論ぎろんが行おこなわれ、暴力ぼうりょくやハラスメントをどのように定義ていぎするのかなどを巡めぐっても意見いけんが分わかれましたが、最終さいしゅう的てきにはハラスメントを広ひろく厳きびしく禁止きんしする内容ないようで圧倒的あっとうてき多数たすうの支持しじが集あつまり、採択さいたくされました。

ヨーロッパでのハラスメント対策たいさく

世界せかいでは、ヨーロッパを中心ちゅうしんに、暴力ぼうりょくやハラスメントを国内こくない法ほうで禁きんじ、罰則ばっそくを設もうける国くにが数多かずおおくあります。

このうち北欧ほくおうスウェーデンでは、ハラスメントは差別さべつであると位置いちづけられていて、職場しょくばで差別さべつ行為こういを行おこなった場合ばあい、罰金ばっきんを科かされる可能かのう性せいがあります。

また、フランスでも、職場しょくばでのモラルハラスメントは法律ほうりつで禁止きんしされています。

ことばや態度たいどによって従業じゅうぎょう員いんの権利けんりや尊厳そんげんを傷きずつけた場合ばあい、身体しんたいや精神せいしん的てきな健康けんこうを損そこなわせた場合ばあい、そして、将来しょうらい的てきなキャリアを危険きけんにさらす行為こういを行おこなった場合ばあい、日本にっぽん円えんで最大さいだいおよそ360万まん円えんの罰金ばっきんや２に年間ねんかんの禁錮きんこ刑けいを科かされることになっています。

労働ろうどう団体だんたいからは歓迎かんげいの声こえ

ＩＬＯあいえるお-の採決さいけつについて、カナダから参加さんかした労働ろうどう者しゃの団体だんたいのマリー・クラークウォーカーさんは、「このような国際こくさい条約じょうやくができることは、１いち年ねん前まえには想像そうぞうすらできませんでした。『＃ＭｅＴｏｏ』運動うんどうの結果けっかであり、世界せかいの労働ろうどう者しゃにとって、権利けんりを勝ち取かちとった大おおきな勝利しょうりです」と述のべ、喜よろこびを表あらわしていました。

日本にっぽん政府せいふ「批准ひじゅんには検討けんとうが必要ひつよう」

日本にっぽん政府せいふを代表だいひょうして参加さんかした厚生こうせい労働ろうどう省しょうの麻田あさだ千穂子ちほこ国際こくさい労働ろうどう交渉こうしょう官かんは、「仕事しごとの場ばでの暴力ぼうりょくやハラスメントについて国際こくさい的てきな労働ろうどう基準きじゅんが初はじめてできた意義いぎはとても大おおきい。国内こくない政策せいさくでも今いま、私わたしたちは職場しょくばのハラスメントをなくそうと一生いっしょう懸命けんめい取り組とりくんでいるところで、まさに方向ほうこうが一致いっちしている」と述のべ、条約じょうやくの採択さいたくを歓迎かんげいしました。

一方いっぽうで、日本にっぽんが条約じょうやくを批准ひじゅんするかどうかについては、「条約じょうやくの採択さいたくに賛成さんせいするかどうかということとは次元じげんの違ちがう話はなしで、国内こくない法ほうと条約じょうやくの求もとめるものの整合せいごう性せいについて、さらに検討けんとうしていかなければならない」と述のべ、今後こんご、関係かんけいする省庁しょうちょうとともに慎重しんちょうに議論ぎろんを進すすめていく考かんがえを示しめしました。

連合れんごう「歴史れきし的てきな成果せいか」

また、労働ろうどう組合くみあいの連合れんごうは「ハラスメントに特とく化かした初はじめての国際こくさい条約じょうやくが採択さいたくされたことは、歴史れきし的てきな成果せいかとして大おおいに評価ひょうかしたい。条約じょうやくは、暴力ぼうりょくとハラスメントのない社会しゃかいを実現じつげんするための第一歩だいいっぽだ」としたうえで、日本にっぽん政府せいふに対にたいし、ＩＬＯあいえるお-加盟かめい国こくの一員いちいんとして条約じょうやくの早期そうき批准ひじゅんと、そのための禁止きんし規定きていを含ふくめた国内こくない法ほうのさらなる整備せいびを求もとめていくなどとする談話だんわを発表はっぴょうしました。