IOCが提案した東京オリンピックのマラソンと競歩の会場を札幌に移す案は、1日、IOCの調整委員会で開かれた4者協議で最終的に決定し、大会まで9か月を切る中、猛暑対策として開催都市の東京からおよそ800キロ離れた札幌に会場を移すという異例の決定となりました。
組織委員会の森会長は記者会見で、来月3日と4日にスイスで行われるIOC理事会でコースの承認を得られるよう、札幌市や北海道をはじめ競技団体などの関係者と早急に準備態勢を作る考えを示しました。
札幌でのコースはまだ決まっていませんが、雪が降ると距離などの厳密な測定ができなくなるため、組織委員会では、マラソンのコースは札幌市中心部の大通公園を発着する既存の北海道マラソンの案を最優先に課題を洗い出していて、競歩のコースについても、マラソンコースの一部を使用することを検討しています。
組織委員会は、3日、現地で視察を行う予定です。
また、大会までの準備期間が限られ、費用も節約する必要があるとして、施設の整備や運営は効率化を図りたいとしています。
国際陸上競技連盟は、マラソンと競歩の日程が離れていることから、急きょ、男女のマラソンを同じ日に行うことなど、日程を3日間に集約する検討を始めています。
また、新たな費用の負担についても東京都が負担しないこと以外は決まっておらず、組織委員会は、急きょ決まった会場変更で安全で確実な大会運営に向けて対応を迫られています。
陸連は強化戦略見直しへ
一方、東京の暑さを想定して対策を進めてきた日本陸上競技連盟は、強化戦略の見直しが迫られることになります。
マラソンや競歩は、気温や湿度が大きく影響するため日本陸連は東京オリンピックを見据え、夏に代表選手を集めて合宿を行い、練習前後の体重の変化や体温や汗の成分、それに心拍数などのデータを分析し、どのように体を冷やせば効果的かといった暑さ対策に力を入れていました。
また、ことし9月には、まだ暑さが残る中、本番とほぼ同じコースでマラソンの代表選考レースを行い、代表に内定した選手や指導者からは「アドバンテージになる」といった声が聞かれるなど開催地の利を生かした選手強化策を進めてきました。
そのレースからわずか1か月後に突如打ち出された札幌への会場の変更案が正式に決まったことで、日本陸連はこれまでの強化戦略の見直しを迫られることになります。
日本陸連の横川浩会長は「東京を目指して競技力向上を図ってきており、今回の決定を受けこの時点で方向転換するのは簡単なこととは言えない」と述べました。
金メダル獲得が期待される競歩日本代表の今村文男コーチは「夏のレースは暑さに慣れる期間が非常に重要になってくる。東京での開催に向けて1か月前からどのようなプロセスでレースの日を迎えるか段取りはすべて行っていた。会場が札幌になれば、レースまで1か月、2週間、10日、1週間のそれぞれの段階で、どう準備していくのか、これから計画していかなければならない」と早急に対応を進める考えを示しました。