日本新闻: 「任命拒否は法律違反」学術会議任命拒否の大学教授らが見解

日本にっぽん学術がくじゅつ会議かいぎの会員かいいんに任命にんめいされなかった6人にんの大学だいがく教授きょうじゅらが記者きしゃ会見かいけんを開ひらき、「任命にんめい拒否きょひは法律ほうりつに違反いはんする」などと述のべて改あらためて政府せいふの対応たいおうを批判ひはんしました。

6人にんは23日にち、東京とうきょう千代田ちよだ区くの日本にっぽん外国がいこく特派とくは員いん協会きょうかいで会見かいけんを開ひらき、それぞれの見解けんかいを表明ひょうめいしました。

早大そうだい岡田おかだ教授きょうじゅ「任命にんめい拒否きょひは手続てつづき上じょう違法いほうだ」

行政ぎょうせい法ほうが専門せんもんで早稲田わせだ大学だいがくの岡田おかだ正則まさのり教授きょうじゅは、記者きしゃ会見かいけんで、

「今回こんかいの任命にんめい拒否きょひは学術がくじゅつ会議かいぎの独立どくりつ性せいを否定ひていするものだ。学術がくじゅつに対にたいして政治せいじ権力けんりょくが距離きょりを保たもつべきことを、日本にっぽん学術がくじゅつ会議かいぎ法ほうは学術がくじゅつ会議かいぎの組織そしき的てきな独立どくりつ性せいとして定さだめている。会員かいいんの適否てきひを政治せいじ権力けんりょくが決きめられることになれば、独立どくりつ性せいは破壊はかいされてしまう。このような破壊はかい行為こういは、日本にっぽんにおける学問がくもんの自由じゆうの制度せいど的てき枠組わくぐみを破壊はかいすることになるので、憲法けんぽうに違反いはんしている」と述のべました。

そして、

「今回こんかいの任命にんめい拒否きょひは手続てつづき上じょうも違法いほうだ。菅かん総理そうり大臣だいじんは、今回こんかいの任命にんめい決定けっていにあたって、学術がくじゅつ会議かいぎから提出ていしゅつされた推薦すいせん名簿めいぼを見みていないと明言めいげんした。そうすると、今回こんかいの任命にんめい拒否きょひは学術がくじゅつ会議かいぎからの推薦すいせんリストに基もとづかない判断はんだんだったということになる。これは、日本にっぽん学術がくじゅつ会議かいぎ法ほうの規定きていに明あきらかに違反いはんする行為こういだ」と話はなしました。

その上うえで、

「現状げんじょうは、会員かいいんの任命にんめいを99人にんに止とめるという総理そうり大臣だいじんの職務しょくむ懈怠けたい（けたい）によって、違憲いけん・違法いほうの状態じょうたいにある。菅かん総理そうり大臣だいじんは職務しょくむ懈怠けたいをやめて、推薦すいせんに基もとづく6人にんの任命にんめい義務ぎむを履行りこうし、この違憲いけん・違法いほう状態じょうたいを速すみやかに解消かいしょうしなければならない」と述のべました。

立命館大りつめいかんだい大学院だいがくいん松宮まつみや教授きょうじゅ「独立どくりつ性せいに対にたいする菅かん首相しゅしょうの無む理解りかい露呈ろてい」

刑法けいほうが専門せんもんで立命館大学りつめいかんだいがく大学院だいがくいんの松宮まつみや孝明たかあき教授きょうじゅは記者きしゃ会見かいけんで、

「官邸かんてい側がわは憲法けんぽう15条じょう1項こうが定さだめる国民こくみんの『公務員こうむいんの選定せんてい・罷免ひめん権けん』を根拠こんきょにして、今回こんかいの措置そちは合法ごうほうだと説明せつめいしている。総理そうり大臣だいじんは国民こくみんを代表だいひょうしているからどのような公務員こうむいんであっても自由じゆうに選えらび、あるいは選えらばないことができる、その根拠こんきょは、憲法けんぽう15条じょうだと宣言せんげんしたということだ。『独裁どくさい者しゃになろうとしているのか』と思おもうほど、恐おそろしい話はなしだ。憲法けんぽう15条じょう1項こうは、究極きゅうきょく的てきに公務員こうむいんの地位ちいが国民こくみんの主権しゅけんに基もとづいていることを規定きていしているだけであって、学術がくじゅつ会議かいぎの会員かいいんなど特別とくべつな公務員こうむいんについては、任命にんめい、あるいは罷免ひめんするための特別とくべつなルールが定さだめられている。内閣ないかく・行政ぎょうせいなどから独立どくりつして職務しょくむを行おこなうことが憲法けんぽう体制たいせい、立憲りっけん体制たいせいにとって必要ひつようだからだ。今回こんかいの任命にんめい拒否きょひは、独立どくりつ性せいに対にたいする菅かん総理そうり大臣だいじんの無む理解りかいを露呈ろていし、その背後はいごにある危険きけん性せいを明あきらかにした。これにブレーキをかけるべきは国会こっかい、専門せんもん家か、そして国民こくみんの世論せろんだと思おもう」と述のべました。

京大きょうだい大学院だいがくいん芦名あしな教授きょうじゅ「核心かくしんは学術がくじゅつ会議かいぎあり方ありかた問題もんだい視しされたこと」

キリスト教学きょうがくが専門せんもんで京都大きょうとだい学がく大学院だいがくいんの芦名あしな定道さだみち教授きょうじゅは記者きしゃ会見かいけんで、「今回こんかいの問題もんだいの核心かくしんは私わたしが任命にんめいされなかったというより、学術がくじゅつ会議かいぎのあり方ありかたが問題もんだい視しされたことだと思おもう。最大さいだいの要因よういんは大学だいがくでの軍事ぐんじ研究けんきゅうを推進すいしんしたい政府せいふに対にたいし、明確めいかくに反対はんたいする声明せいめいを出だしたことではないか。科学かがく技術ぎじゅつのあり方ありかたに政府せいふが介入かいにゅうし、コントロールしようという流ながれの中なかで起おきた問題もんだいであり、法律ほうりつ的てきな問題もんだいはもちろん、なぜ、こうしたことが起おきたのか、そして、どう対応たいおうしていくかを考かんがえていきたい」と述のべました。

東京とうきょう慈恵じえ医大いだい小澤おざわ教授きょうじゅ「任命にんめい拒否きょひ1日にちも早はやく撤回てっかいを」

憲法けんぽう学がくが専門せんもんで東京とうきょう慈恵じえ会かい医科いか大学だいがくの小澤おざわ隆一りゅういち教授きょうじゅは記者きしゃ会見かいけんで、「科学かがくが政治せいじに従属じゅうぞくし、戦争せんそうの遂行すいこうに動員どういんされた苦にがい教訓きょうくんをふまえ、日本にっぽん国こく憲法けんぽうは信教しんきょうや表現ひょうげんの自由じゆうに加くわえて、明治めいじ憲法けんぽうにはなかった学問がくもんの自由じゆうを明確めいかくに保障ほしょうすることになった。それを受うけて日本にっぽん学術がくじゅつ会議かいぎは設立せつりつされ、政治せいじ権力けんりょくに左右さゆうされない独立どくりつの活動かつどうによって、政府せいふと社会しゃかいに対にたいして学術がくじゅつに基礎きそづけられた政策せいさく提言ていげんを行おこなうことを職務しょくむとしている。今回こんかいの任命にんめい拒否きょひは、こうした学術がくじゅつ会議かいぎの目的もくてきと職務しょくむを妨さまたげるものとして1日にちも早はやく撤回てっかいされなければならない」と述のべました。

東大とうだい大学院だいがくいん加藤かとう教授きょうじゅ「決定けってい背景はいけい説明せつめいできる文書ぶんしょあるか尋たずねたい」

このほかの2人にんは文書ぶんしょで見解けんかいを寄よせました。

日本にっぽん近代きんだい史しが専門せんもんで、東京とうきょう大学だいがく大学院だいがくいんの加藤かとう陽子ようこ教授きょうじゅの文書ぶんしょの内容ないようは次つぎのとおりです。

今回こんかいの任命にんめい拒否きょひを受うけて感かんじたのは第だい一いちに、2011年ねん施行しこうの公文こうぶん書しょ管理かんり法ほう制定せいていまで有識ゆうしき者しゃとして関係かんけいしてきた人間にんげんである私わたしからすれば、法ほう解釈かいしゃくの変更へんこうなしには行おこなえない違法いほうな決定けっていを、今回こんかい、菅かん総理そうり大臣だいじんがなぜ行おこなったのか、その意思いし決定けっていの背景はいけいを説明せつめいできる決裁けっさい文書ぶんしょがあるのかどうか、これを政府せいふ側がわに尋たずねてみたいということです。

今回こんかいの任命にんめい拒否きょひの背景はいけいを考かんがえる際さいに、留意りゅういすべき点てんがあります。それは、拒否きょひされた6人にん全員ぜんいんが、学術がくじゅつ会議かいぎ第だい一部いちぶ（人文じんぶん・社会しゃかい科学かがく）の会員かいいん候補こうほだったことです。日本にっぽんの科学かがく技術ぎじゅつの生き残いきのこりをかけるため1995年ねんに制定せいていされた重要じゅうような法律ほうりつに科学かがく技術ぎじゅつ基本きほん法ほうというものがありますが、この法ほうは今年ことし25年ねんぶりに抜本ばっぽん的てきに改正かいせいされ、「科学かがく技術ぎじゅつ・イノベーション基本きほん法ほう」となりました。改正かいせい前まえの法律ほうりつでは、「人文じんぶん・社会しゃかい科学かがく」は、科学かがく技術ぎじゅつ振興しんこう策さくの対象たいしょうではありませんでした。

つまり、法律ほうりつから除外じょがいされていた分野ぶんやだったのです。しかし、新法しんぽうである科学かがく技術ぎじゅつ・イノベーション基本きほん法ほうでは、人文じんぶん・社会しゃかい科学かがくに関係かんけいする科学かがく技術ぎじゅつを法ほうの対象たいしょうに含ふくめることになりました。

世の中よのなかのSNS上じょうでは、「役に立やくにたたない学問がくもん分野ぶんやの人間にんげんが切きられた」との冷笑れいしょう的てきな評価ひょうかがありましたが、真しんの事態じたいは全まったく逆ぎゃくで、人文じんぶん・社会しゃかい科学かがくの領域りょういきが、新あらたに、科学かがく技術ぎじゅつ政策せいさくの対象たいしょうに入はいったことを受うけて、政府せいふ側がわが、改あらためて、この領域りょういきの人選じんせんに強つよい関心かんしんを抱いだく動機どうきづけを得えたことが事ことの核心かくしんにあると、私わたしは歴史れきし家かとして考かんがえます。

新法しんぽうの下したでは、内閣ないかく府ふの下したに、「科学かがく技術ぎじゅつ・イノベーション推進すいしん事務じむ局きょく」が司令しれい塔とうとして新設しんせつされるといいます。自然しぜん科学かがくに加くわえて、人文じんぶん・社会しゃかい科学かがくも、「資金しきんを得える引換ひきかえに政府せいふの政策せいさく的てきな介入かいにゅう」を受うける事態じたいが生うまれます。

日本にっぽんの現在げんざいの状況じょうきょうは、科学かがく力りょくの低下ていか、データ囲い込かこいこみ競争きょうそうの激化げきか、気候きこう変動へんどうを受うけ、「人文じんぶん・社会しゃかい科学かがくの知ちも融合ゆうごうした総合そうごう知ち」を掲かかげざるをえない緊急きんきゅう事態じたいにあり、ならば、その領域りょういきの学術がくじゅつ会議かいぎ会員かいいんに対にたいして、政府せいふ側がわの意向いこうに従順じゅうじゅんではない人々ひとびとを、予あらかじめ切きっておく、このような事態じたいが進行しんこうしたのだと思おもいます。

「科学かがく技術ぎじゅつ」という日本語にほんごは、意外いがいにも新あたらしい言葉ことばであり、1940年ねん8月つき、総そう力戦りきせんのために科学かがく技術ぎじゅつを総そう動員どういんした際さいに用もちいられ始はじめた言葉ことばでした。

この度たび、政府せいふは、「科学かがく技術ぎじゅつ・イノベーション」という新あたらしい言葉ことばを創つくりましたが、国民こくみんからの付託ふたくがない、官僚かんりょうによる科学かがくへの統制とうせいと支配しはいは、国民こくみんの幸福こうふくを増進ぞうしんする道みちではありません。

私わたしは学問がくもんの自律じりつ的てきな成長せいちょうと発展はってんこそが、日本にっぽんの文化ぶんかと科学かがくの発展はってんをもたらすと信しんじています。

東大とうだい宇野うの教授きょうじゅ「民主みんしゅ的てき社会しゃかいの強つよみ批判ひはんに開ひらかれ修正しゅうせいする能力のうりょく」

また政治せいじ思想しそう史しと政治せいじ哲学てつがくが専門せんもんで、東京とうきょう大学だいがくの宇野うの重しげる規ただし教授きょうじゅも文書ぶんしょで見解けんかいを寄よせました。

内容ないようは次つぎのとおりです。

このたびの件けんについて、私わたしの思おもうところを述のべさせていただきます。まず、日本にっぽん学術がくじゅつ会議かいぎによって会員かいいんに推薦すいせんしていただいたことに感謝かんしゃいたします。日本にっぽんの学術がくじゅつを代表だいひょうする方々かたがたに認みとめていただき、これ以上いじょうの名誉めいよはありません。心こころより御礼おんれい申し上もうしあげます。