そして、ミサイルの飛行について「わが国の領土と領海の上空に設定されただ円や8の字の軌道に沿って2時間6分20秒飛行し、1500キロ先の目標に命中した」としています。
韓国の通信社の連合ニュースはアメリカ軍が保有する巡航ミサイル「トマホーク」になぞらえて「北朝鮮版トマホークだ」と伝えています。
軍事アナリストで東京大学先端科学技術研究センターの小泉悠特任助教は「北朝鮮から1500キロというと朝鮮半島以外が目標で、主な標的は日本、特に日本にあるアメリカ軍基地などになるのではないか。対北朝鮮シナリオにおいても巡航ミサイルと弾道ミサイルが一緒に飛んでくるような事態も考えなければいけなくなる」として、新たな脅威になると分析しています。
巡航ミサイルは一般的に、低い高度で飛行しレーダーで捉えるのが難しいとされています。
このため小泉特任助教は「1500キロ飛んで、なおかつ敵に見つかりにくいように地形にまぎれて低空で進入していく能力があるのかを含めて、どの程度の精度なのかはわからない」として、さらに分析が必要だとしています。
また北朝鮮の発表をみると、今回の巡航ミサイルは諸外国のものと同じような大きさや形で、射程もアメリカやロシアの代表的なものと同程度だと指摘しています。 その一方で能力については「1500キロ飛んで、なおかつ敵に見つかりにくいように地形にまぎれて低空で進入していく能力があるのかを含めて、どの程度の精度なのかはわからない」としています。 そして「巡航ミサイル戦力は中国も増強するなど、日本に届く巡航ミサイルは従来から存在しているが、北朝鮮として初めてこういう種類の兵器をつくってきたということで、対北朝鮮シナリオにおいても巡航ミサイルと弾道ミサイルが一緒に飛んでくるような事態も考えなければいけなくなる。総合的なミサイル航空防衛を考える一つの契機になるだろう」と分析しています。
協議では、北朝鮮が長距離巡航ミサイルの発射実験に成功したと発表したことについて、船越局長が「1500キロを航行するミサイルの発射が事実とすれば、北朝鮮のミサイル技術の向上を示しており、日本を取り巻く地域の平和と安全を脅かすものだ」と、懸念を表明したのに対し、ノ・ギュドク本部長は、「発射の意図などを分析中だ」と述べました。 そのうえで両氏は、14日、アメリカ国務省のソン・キム北朝鮮担当特別代表を加えて日米韓3か国の高官協議を行うことなどを踏まえ、日韓両国や日米韓の3か国で緊密に連携して北朝鮮に対応していくことを確認しました。
当時、アメリカのバイデン大統領は記者団から「挑発だと思うか」と聞かれ「そうは思わない。彼らのやったことに何も新しいことはない」と述べ、新たな挑発とは捉えていないという認識を示しました。 また、3月25日には北朝鮮東部のハムギョン(咸鏡)南道ハムジュ(咸州)付近から日本海に向けて弾道ミサイル2発が発射されました。 その翌日、北朝鮮は国営メディアを通じて「新型戦術誘導弾」の発射実験を行い、朝鮮半島から東に600キロの日本海上の目標を正確に打撃したと発表していました。 このとき、バイデン大統領は弾道ミサイルの発射を禁じた国連安全保障理事会の決議に違反すると批判しました。 その後、安保理はアメリカの要請に基づいて緊急会合を開き発射を非難する議長国声明を出しましたが、制裁の実施などの対応をめぐっては意見が分かれました。
北朝鮮から東京までは1300キロ、沖縄のアメリカ軍基地までは1500キロとなっていて、防衛省関係者は「発射の意図を分析し、軍事力の向上を進めていることを注視していく」と述べました。
▽放物線を描いて飛ぶ弾道ミサイルと、 ▽飛行機のように水平に飛ぶ巡航ミサイルの、 2種類があります。 このうち弾道ミサイルは、一般的に巡航ミサイルより射程が長くスピードが速いのが特徴で、急角度かつ高速で落下するため、迎撃するには極めて精度の高いシステムが必要とされています。 北朝鮮が、 ▽SLBM=潜水艦発射弾道ミサイルや、 ▽ICBM=大陸間弾道ミサイルなどの、 発射実験を繰り返したことから、日本政府は弾道ミサイルをより差し迫った脅威と捉え、イージス艦や地上配備型の迎撃ミサイル、PAC3などによる「弾道ミサイル防衛システム」の整備を急いできました。 一方、この間、巡航ミサイルは高速化や長射程化が進んできました。 巡航ミサイルは低い高度で飛ぶため、そもそもレーダーで捉えるのが難しく、日本に近づいてからでないと対処が難しいという特徴があります。 さらに、中国やロシアは、超高速のものや、よりレーダーで捉えづらいステルス性のものなど、より防御が難しい新たな巡航ミサイルを開発しているとされています。 そして今回、北朝鮮は、発射実験に成功した巡航ミサイルが「1500キロ先の目標に命中した」と発表しましたが、1500キロの飛行が可能だとすると、日本のほぼ全土が射程圏に入ることになります。 海上自衛隊で司令官を務めた元海将の香田洋二さんは「弾道ミサイル防衛だけではなく、巡航ミサイルを想定した対空能力を強化する必要がある」と指摘しています。
そのうえで「北朝鮮の軍事行動については引き続き、アメリカや韓国とともに緊密に連携をしながら、必要な情報の収集、分析、警戒監視を行っていく。さらに、防衛大綱や中期防=中期防衛力整備計画のもとで、あらゆる空からの脅威に対処し、わが国の国土を防護する能力『総合ミサイル防空能力』の強化を進めていく」と述べました。 一方、加藤官房長官は、日本のEEZ=排他的経済水域などへの飛来は確認されていないと明らかにしました。
このうち、通信社の連合ニュースは韓国政府筋の話として「巡航ミサイルの高度があまりにも低いため、捉えられる時もあれば捉えられない時もある」として、韓国軍が事前の準備作業も含めて巡航ミサイルに関連した動きを把握できなかった可能性を示唆したと伝えています。 また、大手紙の中央日報は韓国政府筋の話として「巡航ミサイルの発射を事前に把握できず、発射後も探知に失敗した」と伝えたほか、別の政府筋は「アメリカと韓国の軍と情報当局は北朝鮮の発表で発射を初めて知った」と話していたと伝えています。
専門家「総合的なミサイル航空防衛を考える契機に」
日韓外務省高官 “日米韓で緊密に連携”
中国外務省報道官「自制を保ち 歩み寄りを」
アメリカ軍「状況を監視し 同盟国などと緊密に協議」
ミサイル発射は3月以来
防衛省関係者「発射の意図を分析し注視」
ミサイル防衛の現状は
加藤官房長官「懸念を有する 米韓と連携し情報収集」
韓国メディア「韓国軍 十分探知できていなかったか」