今後、早期に複数の偵察衛星を追加で打ち上げる計画を明らかにしたのに続き、大々的に成功をアピールすることで、日米韓3か国への対抗姿勢を一段と鮮明にしています。
北朝鮮国営の朝鮮中央テレビは、キム・ジョンウン(金正恩)総書記の立ち会いのもと、21日夜、北西部の「ソヘ(西海)衛星発射場」で行われた、軍事偵察衛星の3回目の打ち上げのもようを捉えた写真を22日放送しました。
写真からは、白い塗装で北朝鮮の国旗の下にハングルで「朝鮮」と表記され、一日に千里を駆けるとされる伝説の馬「チョルリマ(千里馬)」などがデザインされた新型ロケットが、オレンジ色の炎を吹き出しながら上昇していく様子が確認できます。
また、カーキ色のジャンパーを着たキム総書記は、ロケットの打ち上げを見守り、国家航空宇宙技術総局の関係者たちから祝福を受けて笑顔を見せる姿が写っています。
さらに、写真からは、今回の打ち上げでも、海沿いに整備された新しい発射台が使用されたこともわかります。
北朝鮮は、22日未明の発表で、韓国や、作戦上で重要な地域の動向を把握するため、今後、早期に複数の偵察衛星を追加で打ち上げる計画を明らかにしました。
これに続き、国営テレビで大々的に成功をアピールすることで、日米韓3か国への対抗姿勢を一段と鮮明にしています。
韓国 北朝鮮と結んだ軍事合意の効力の一部停止を決定
韓国のユン・ソンニョル(尹錫悦)大統領は北朝鮮による軍事偵察衛星の打ち上げを受け、訪問先のイギリスで21日、緊急のNSC=国家安全保障会議を開き、国民の安全と安全保障のために対抗措置をとるよう指示しました。
これを受けて韓国政府はけさ、臨時の閣議を開き、2018年に南北の軍事的な緊張緩和を目指すとして前の政権が北朝鮮と結んだ軍事合意の効力を一部停止することを決定し、ユン大統領が裁可しました。
効力の停止が決まったのは、南北の軍事境界線付近に飛行禁止区域を設定した条項で、今後、合意によって制限されていた境界線付近での監視・偵察活動を再開するとしています。
韓国政府は北朝鮮が海上への砲撃や無人機による領空侵犯など、軍事合意の違反を繰り返し、合意を有名無実化させてきたと指摘しています。
閣議に出席したハン・ドクス(韓悳洙)首相は「合意の一部停止はわが国の安全保障上、必要で最小限の防衛的措置だ」と強調しました。
防衛省関係者“きょう午前時点 周回軌道への投入確認されず”
防衛省関係者によりますと、22日午前の時点でも地球の周回軌道への衛星の投入は確認されていないということで、防衛省が引き続き情報を詳しく分析しています。
防衛省によりますと、21日午後10時43分ごろ、北朝鮮の衛星発射場がある北西部のトンチャンリから、衛星の打ち上げを目的として弾道ミサイル技術を使用したものが発射されました。
発射されたものは複数に分離し、このうち1つは沖縄本島と宮古島の間の上空を通過したあと、小笠原諸島の沖ノ鳥島の南西およそ1200キロの太平洋に落下したと推定されていて、22日未明の時点で地球の周回軌道への衛星の投入は確認されていないとしています。
防衛省関係者によりますと、衛星が軌道に投入された場合は一般的にはおよそ1時間半ごとに地球を1周しますが、22日午前の時点でも軌道への投入は確認されていないということです。
軌道に投入されたとしても衛星としての機能を果たすためには地上との通信などが必要で、防衛省が引き続き情報を詳しく分析しています。
松野官房長官「詳細な分析 相応の時間を要する」
松野官房長官は午前の記者会見で「北朝鮮が衛星の打ち上げに成功したと発表していることは承知しているが、現時点で地球周回軌道への衛星の投入は 確認されていないと認識している」と述べました。
その上で「発射は断じて容認できず、ミサイル技術の著しい向上を見過ごすことはできない。北朝鮮は今後早い期間内に数個の衛星を追加発射すると主張しており、今後も発射を強行する可能性は考えられる。引き続き、必要な情報の収集、分析および警戒監視に万全を期したい」と述べました。
一方、今回の発射の詳細な分析について「総合的、専門的に行う必要があり、相応の時間を要する」と述べました。
沖縄 玉城知事「通告期間前に発射強行 大変遺憾」
沖縄県は22日午前8時半から危機管理対策本部会議を開きました。
はじめに県の幹部が21日夜10時46分にJアラート=全国瞬時警報システムで沖縄県を対象に情報が発信されて以降の経緯について報告しました。
続いて県警察本部や県の各部局から、これまでに被害や落下物の情報は寄せられていないことが報告されました。
報告を受けたあと玉城知事は「事前に発射期間を通告していたにもかかわらず、通告期間前に発射を強行し、沖縄上空を通過するなど、県民に大きな不安を与えたことは大変遺憾と言わざるを得ない」と述べました。
その上で各部局などに対し、引き続き情報収集にあたることを指示しました。
国連事務総長「いかなる発射も国連安全保障理事会の決議違反」
国連のグテーレス事務総長は21日、報道官を通じて声明を出し「北朝鮮による弾道ミサイル技術を用いたいかなる発射も、関連する国連安全保障理事会の決議違反だ」と強く非難しました。
その上でグテーレス事務総長は北朝鮮に対し、関連するすべての安保理決議に基づいて国際的な義務を守り、朝鮮半島の完全で検証可能な非核化を達成するため、前提条件なしで関係国との対話に戻るよう、改めて呼びかけました。