噴火警戒レベルを「避難」を示す5に引き上げる基準に達していましたが、その後、活動が活発化しなかったことなどからレベルは引き上げられませんでした。
専門家は、「監視体制を強化すべきだ」と指摘しています。今月4日の午前2時59分ごろ、桜島の南岳山頂火口で起きた爆発的な噴火で、当初、気象庁は監視カメラによる観測で噴石が飛んだ距離を「火口から2キロ近く」と発表していました。
ところが、8日になって桜島に資材置き場を所有する建設業者から、「近くの畑に噴石のようなものが落ちている」と鹿児島市に連絡があり、市と鹿児島地方気象台、それに専門家が現地を調べた結果、割れたとみられる噴石の一部を複数確認したということです。
気象台によりますと、噴石が落下した地点には直径およそ6メートル、深さおよそ2メートルの穴が開き、噴石は50センチから1メートル程度だったと推定されるということです。
噴石が飛んだ距離は火口からおよそ3キロで、集落まではわずか100メートルほどしか離れていません。
気象庁が公表している桜島の噴火警戒レベルの判定基準では、「大きな噴石が火口から2.5キロ以上に飛散」した場合、噴火警戒レベルを5に引き上げるとしていて一部の住民は避難することになります。
しかし、今回の噴火のあと、地殻変動のデータに大きな変化は無いことなどから、噴火活動が活発化する兆候は認められないとして、気象台はレベル3の入山規制を継続しています。
火口から3キロ離れた場所まで大きな噴石が飛んだのは、34年前の1986年11月以来です。
気象庁「レベル5に該当しない」
今回の対応について気象庁は、「大きな噴石の飛散とは、多数の噴石が飛ぶことを意味していて、今回の噴火は1つの噴石だったため、レベル5への引き上げに該当しない。大きな噴石を観測できなかったことに問題があると考えていない」として、監視体制の見直しなどは検討していないとしています。
京大 井口教授「監視体制を強化すべき」
桜島の噴火活動に詳しい京都大学火山活動研究センターの井口正人教授は「南岳の噴火にはもともと爆発力があるが、4月以降は、回数は去年より少なくなっているものの規模が大きくなっている印象がある。風下側などでは特に注意してほしい」と呼びかけたうえで、「気象庁の状況把握の体制が不十分だったと言わざるをえない。監視体制を強化すべきだ」と指摘しています。