長崎ながさき 田上たうえ市長しちょう “条約じょうやくへの署名しょめい・批准ひじゅんと「被爆ひばく体験たいけん者しゃ」救済きゅうさいを”

新型しんがたコロナウイルスの感染かんせん拡大かくだいを防ふせぐため、式典しきてんは2年ねん連続れんぞくで規模きぼが縮小しゅくしょうされ、例年れいねんの1割わりほどにあたるおよそ500人にんが参列さんれつしました。

式典しきてんではこの1年ねんに亡なくなった被爆ひばく者しゃなど合あわせて3202人にんの名前なまえが書かき加くわえられた18万まん9163人にんの原爆げんばく死没しぼつ者しゃ名簿めいぼが納おさめられました。

そして、原爆げんばくがさく裂さくれつした午前ごぜん11時じ2分ふんに黙もくとうをささげました。

長崎ながさき市しの田上たうえ市長しちょうは、平和へいわ宣言せんげんでことし1月つきに発効はっこうした核兵器かくへいきの開発かいはつや製造せいぞう、使用しようなどを全面ぜんめん的てきに禁きんじる核兵器かくへいき禁止きんし条約じょうやくについて触ふれ「この生うまれたての条約じょうやくを世界せかいの共通きょうつうルールに育そだて、核兵器かくへいきのない世界せかいを実現じつげんしていくためのプロセスがこれから始はじまります。核兵器かくへいきによる惨禍さんかを最もっともよく知しるわが国わがくにだからこそ、第だい1回かい締約ていやく国こく会議かいぎにオブザーバーとして参加さんかし、核兵器かくへいき禁止きんし条約じょうやくを育そだてるための道みちを探さぐってください。1日にちも早はやく条約じょうやくに署名しょめいし、批准ひじゅんすることを求もとめます」と訴うったえました。

そのうえで、田上たうえ市長しちょうは、被爆ひばく者しゃの高齢こうれい化かが進すすむ中なか、援護えんごの充実じゅうじつに加くわえ、国くにが被爆ひばく者しゃと認定にんていする地域ちいきの外そとにいた「被爆ひばく体験たいけん者しゃ」の救済きゅうさいを求もとめました。

また自身じしんもけがを負おいながら、看護かんご学生がくせいとして被爆ひばく者しゃの救護きゅうごにあたった岡おか信子のぶこさんは、被爆ひばく者しゃを代表だいひょうし「平和へいわへの誓ちかい」で、「大おおきなトラックの荷台にだいに角材かくざいを積み重つみかさねるように遺体いたいを投げ入なげいれていました。解剖かいぼう室しつへ運はこばれる遺体いたいもあり、胸むねから腹はらにわたりウジだらけになっている遺体いたいを前まえに思おもわず逃げ出にげだそうとしました。その時とき、『それでも救護きゅうご員いんか！』という衛生えいせい兵へいの声こえでわれに返かえり頑張がんばりました。私わたしたち被爆ひばく者しゃは命いのちあるかぎり語り継かたりつぎ、核兵器かくへいき廃絶はいぜつと平和へいわを訴うったえ続つづけていくことを誓ちかいます」と述のべました。

一方いっぽう、菅かん総理そうり大臣だいじんは「唯一ゆいいつの戦争せんそう被爆ひばく国こくとして、『核兵器かくへいきのない世界せかい』の実現じつげんに向むけた国際こくさい社会しゃかいの努力どりょくを一いち歩ほずつ、着実ちゃくじつに前まえに進すすめていくことは、わが国わがくにの変かわらぬ使命しめいです。政府せいふとしては、次回じかいNPT＝核かく拡散かくさん防止ぼうし条約じょうやくの運用うんよう検討けんとう会議かいぎにおいて意義いぎある成果せいかを収おさめるべく、核かく軍縮ぐんしゅくに関にかんする『賢人けんじん会議かいぎ』の議論ぎろん等とうの成果せいかも生いかして各国かっこくが共ともに取り組とりくむことのできる具体ぐたい的てきな措置そちを見みいだす努力どりょくを引き続ひきつづき粘り強ねばりづよく続つづけて参まいります」と述のべました。

岡おかさんは16歳さいのとき、爆心ばくしん地ちから1.8キロ離はなれた今いまの長崎ながさき市し住吉すみよし町まちの自宅じたくで被爆ひばくし、爆風ばくふうで吹き飛ふきとばされ、左ひだり半身はんしんにはガラス片へんが飛とび、けがをしました。

看護かんご学生がくせいだった岡おかさんは、被爆ひばくから3日にち後ご、小学校しょうがっこうに設もうけられた臨時りんじの救護きゅうご所しょに動員どういんされました。

「平和へいわへの誓ちかい」の中なかで岡おかさんは、脚あしの傷きずにウジがわき、キリで刺さすように痛いたむ中なか、次々つぎつぎと運び込はこびこまれる被爆ひばく者しゃの救護きゅうごに不眠ふみん不休ふきゅうであたったみずからの体験たいけんを語かたり、原爆げんばくの惨状さんじょうを訴うったえました。

岡おかさんは、これまで平和へいわ活動かつどうに携たずさわったり、みずからの体験たいけんを語かたったりした経験けいけんはほとんどなく、9日にち初はじめて、平和へいわ祈念きねん式典しきてんに参列さんれつしました。

岡おかさんは「平和へいわへの誓ちかい」で核兵器かくへいきの開発かいはつ、製造せいぞう、保有ほゆう、使用しようを全面ぜんめん的てきに禁きんじる核兵器かくへいき禁止きんし条約じょうやくがことし1月つきに発効はっこうしたことについて「一いち人にん一いち人にんの小ちいさな声こえが世界中せかいじゅうの大おおきな声こえとなり、若わかい世代せだいが受け継うけついでくれたから」だと述のべました。

そして「命いのちあるかぎり、核兵器かくへいき廃絶はいぜつと平和へいわを訴うったえ続つづける」と核兵器かくへいき廃絶はいぜつに向むけて、決意けついを新あらたにしました。

岩永いわながさんは「原爆げんばくで多おおくの人ひとが苦くるしんで亡なくなりました。核兵器かくへいきは人間にんげんが作り出つくりだしてしまったもので、難むずかしいことかもしれませんが、やり直やりなおしてほしい」と話はなしていました。

また、岩永いわながさんは、政府せいふが広島ひろしまのいわゆる「黒くろい雨あめ」の判決はんけつをめぐり、上告じょうこくせず、原告げんこくに被爆ひばく者しゃ健康けんこう手帳てちょうを交付こうふすることを決きめたことについて「広島ひろしまの原告げんこくの84人にんが手帳てちょうを受け取うけとったこと、内部ないぶ被爆ひばく者しゃが認みとめられたことが、大おおきな明あかりだと思おもいます。長崎ながさきでも、半径はんけい12キロ以内いないを被爆ひばく地ちと認みとめてほしい。手帳てちょうという補償ほしょう以上いじょうに心こころの問題もんだいです」と話はなしていました。

松田まつださん夫妻ふさいは、9日にち長崎ながさきで原爆げんばくがさく裂さくれつした午前ごぜん11時じ2分ふんに合あわせてサイレンが鳴なると、自宅じたくで並ならんで座すわり、静しずかに手てを合あわせて祈いのりをささげました。

宗そう伍ごさんは、涙なみだをにじませながら「原爆げんばくで亡なくなった兄あにのことを思おもって手てを合あわせた。こんなに長ながい間ま裁判さいばんを続つづけることになり、『原告げんこくが亡なくなるのを待まっているのではないか』と思おもってしまう。私わたしたちは、お金おかねや何なにかがほしいわけではなく、ただ被爆ひばく者しゃと認みとめてほしいだけだ」と話はなしていました。

また、ムツエさんは「一刻いっこくも早はやく、私わたしたちを被爆ひばく者しゃと認みとめる平等びょうどうな司法しほう判断はんだんを出だしてほしい」と話はなしていました。

被爆ひばく体験たいけん者しゃはことし3月つきの時点じてんで長崎ながさき県内けんないに6425人にんいます。

一方いっぽう、被爆ひばく体験たいけん者しゃの間まにはほとんどの医療いりょう費ひを国くにが負担ふたんする被爆ひばく者しゃの救済きゅうさい制度せいどと比くらべて、被爆ひばく体験たいけん者しゃのための救済きゅうさい制度せいどは手薄てうすだとして不満ふまんや不ふ公平こうへい感かんもあります。

一部いちぶの被爆ひばく体験たいけん者しゃは平成へいせい19年ねん以降いこう、自分じぶんたちも「被爆ひばく者しゃ」と認定にんていして被爆ひばく者しゃ健康けんこう手帳てちょうを交付こうふするよう求もとめた集団しゅうだん訴訟そしょうを起おこし、現在げんざいも裁判さいばんが続つづいています。