精神せいしん障害しょうがいの労災ろうさい申請しんせい 過去かこ最多さいた “パワハラなどのストレス原因げんいん”

これは前まえの年度ねんどより240人にん多おおく、7年ねん連続れんぞくの増加ぞうかで昭和しょうわ58年度ねんどの調査ちょうさ開始かいし以降いこう、最もっとも多おおくなりました。

労災ろうさいと認みとめられたのは509人にんで前まえの年度ねんどに比くらべて44人にん増ふえ、このうち、いわゆる「過労かろう自殺じさつ」は未遂みすいも含ふくめて88人にんで12人にん増ふえました。

一方いっぽう、脳のう出血しゅっけつや心筋しんきん梗塞こうそくなど脳のう・心臓しんぞう疾患しっかんで労災ろうさいを申請しんせいした人ひとは936人にんで前まえの年度ねんどより59人にん増ふえて、5年ねん連続れんぞくの増加ぞうかとなりました。

労災ろうさいと認みとめられたのは216人にんで、このうち過労かろう死しは86人にんと前まえの年度ねんどより4人にん多おおくなりました。

厚生こうせい労働ろうどう省しょうは「精神せいしん疾患しっかんでは20代だいや40代だいで申請しんせいが増加ぞうかしていて、医療いりょうや福祉ふくしで働はたらく人ひとが多おおい。脳のうや心臓しんぞうの疾患しっかんでは中高年ちゅうこうねんが増ふえており、女性じょせいや高齢こうれい者しゃの労働ろうどう者しゃの増加ぞうかも背景はいけいにある」としています。

遺族いぞく “社員しゃいんの命いのちや健康けんこうを何なにが何なんでも守まもる体質たいしつに”

過労かろう自殺じさつした人ひとの遺族いぞくの中なかには、長時間ちょうじかん労働ろうどうやパワハラを防ふせぐ対策たいさくの重要じゅうよう性せいを企業きぎょうが理解りかいしなければ過労かろう自殺じさつはなくならないと訴うったえる人ひともいます。

大分おおいた市しに住すむ佐藤さとう久恵ひさえさんの息子むすこ、佐藤さとう幸信ゆきのぶさん（当時とうじ31）は4年ねん前まえに自殺じさつし、去年きょねん、労災ろうさい、いわゆる過労かろう自殺じさつと認定にんていされました。

久恵ひさえさんは「息子むすこが亡なくなったと聞きいたときは信しんじられず、何なにが起おきたか理解りかいできないまま息子むすこを迎むかえに行いきました」と当時とうじの心境しんきょうを話はなしました。

幸信ゆきのぶさんはソフトウェア開発かいはつ会社かいしゃのグループ会社かいしゃで、人工じんこう衛星えいせいの管制かんせい業務ぎょうむなどを担当たんとうしていましたが、久恵ひさえさんは業務ぎょうむ量りょうの多おおさや上司じょうしとの折り合おりあいの悪わるさについて聞きいていました。

しかし、幸信ゆきのぶさんの死後しご、会社かいしゃからは「長時間ちょうじかん労働ろうどうをさせていた訳わけでもないし、仕事しごとも上司じょうしと相談そうだんしながらうまくすすめていた。特とくに悩なやむような状況じょうきょうはなく、会社かいしゃとして思い当おもいあたる節ふしはない」と説明せつめいを受うけたといいます。

久恵ひさえさんは納得なっとくできず、会社かいしゃの資料しりょうや同僚どうりょうの証言しょうげんを集あつめ始はじめます。

分わかったのは、幸信ゆきのぶさんが過剰かじょうな業務ぎょうむを任まかされ、長時間ちょうじかんのサービス残業ざんぎょうをしていたこと、さらに、たびたび上司じょうしから厳きびしく当あたられパワハラが疑うたがわれたことでした。

幸信ゆきのぶさんが亡なくなって8か月かげつ後ご、久恵ひさえさんは労働ろうどう基準きじゅん監督かんとく署しょに労災ろうさい申請しんせいし、調査ちょうさの結果けっか▽残業ざんぎょう時間じかんが月つきに70時間じかんを超こえていたことや上司じょうしとトラブルがあったこと、それに夜勤やきんを含ふくむ管制かんせい業務ぎょうむと同時どうじにソフトウェアの開発かいはつという達成たっせい困難こんなんなノルマが課かされていたことが認みとめられ、労災ろうさいと認定にんていされました。

ただし、上司じょうしのパワハラについては証拠しょうこが無ないとして認みとめられず、会社かいしゃ側がわも遺族いぞくに謝罪しゃざいはしたもののパワハラや再発さいはつ防止ぼうしの具体ぐたい策さくについては示しめさなかったということです。

今月こんげつから企業きぎょうにパワハラ対策たいさくを義務ぎむづけた法律ほうりつが施行しこうされましたが、久恵ひさえさんは「法律ほうりつはできても過労かろう死しや過労かろう自殺じさつは減へらず、泣き寝入なきねいりする遺族いぞくもいる。企業きぎょうの利益りえきではなくて、社員しゃいんの命いのちや健康けんこうを何なにが何なんでも守まもるという体質たいしつに変かえていかなければ過労かろう死しや過労かろう自殺じさつは防ふせぐことはできません。失うしなわれた命いのちは戻もどってきません。会社かいしゃにも家族かぞくを失うしなった者ものの気持きもちを想像そうぞうし、自分じぶんのこととして考かんがえてほしい」と話はなしていました。

専門せんもん家か「経営けいえい者しゃが真剣しんけんに対策たいさく進すすめるべきだが意識いしきは変かわらず」

労働ろうどう問題もんだいに詳くわしい龍谷大学りゅうこくだいがくの脇田わきた滋しげる名誉めいよ教授きょうじゅは、過労かろう自殺じさつが増加ぞうかしている要因よういんについて「特とくに精神せいしん疾患しっかんの労災ろうさいはここ数すう年ねん増加ぞうかが著いちじるしく、新入しんにゅう社員しゃいんやそれに近ちかい人ひとたちが自殺じさつに追い込おいこまれている。上うえから強制きょうせいする、命令めいれいする、長時間ちょうじかん労働ろうどうをいとわないといった働はたらかせ方かたが企業きぎょうに根強ねづよく残のこっており、それを反映はんえいしている」と話はなしています。

そのうえで「働はたらき方かた改革かいかく関連かんれん法ほうが施行しこうされ、本来ほんらいであれば経営けいえい者しゃが真剣しんけんに対策たいさくを進すすめるべきところだが、意識いしきは変かわっていない。人間にんげんらしい労働ろうどう時間じかんで働はたらくには、仕事しごと量りょうにあう人員じんいんを確保かくほするといった考え方かんがえかたを広ひろめていく必要ひつようがある」と指摘してきしています。