両りょう陛下へいか 全国ぜんこく各地かくちで臨のぞまれる恒例こうれい行事ぎょうじ ことしはすべて見送みおくり

感染かんせんの拡大かくだいを受うけ、両りょう陛下へいかが毎年まいとし各地かくちで臨のぞまれる国体こくたい・国民こくみん体育たいいく大会たいかいの開会かいかい式しきなど4つの行事ぎょうじのうち、「全国ぜんこく豊ゆたかな海うみづくり大会たいかい」を除のぞく3つの行事ぎょうじで、来年らいねんへの延期えんきやことしの開催かいさいの事実じじつ上じょうの見送みおくりが決きまっていました。

関係かんけい者しゃによりますと、最後さいごまで検討けんとうが続つづいていた宮城みやぎ県けん石巻いしのまき市しでの海うみづくり大会たいかいも、ことしの開催かいさいは見送みおくられる見通みとおしになり、来年らいねん以降いこうへの延期えんきなどが検討けんとうされているということです。

大会たいかいは、出席しゅっせき者しゃを大幅おおはばに減へらすなど感染かんせん防止ぼうし対策たいさくを取とったうえで9月つき27日にちに行おこなえないか検討けんとうが進すすめられ、実現じつげんすれば、両りょう陛下へいかも日帰ひがえりで行事ぎょうじに臨のぞみ、東日本ひがしにっぽん大震災だいしんさいの被災ひさい者しゃとことばを交かわされることも検討けんとうされていました。

開催かいさいの見送みおくりによって、両りょう陛下へいかが全国ぜんこく各地かくちで臨のぞまれる恒例こうれい行事ぎょうじは、ことしはすべて見送みおくられることになりました。

戦後せんごの象徴しょうちょう天皇てんのう制せいのもとで天皇てんのうによる恒例こうれいの地方ちほう訪問ほうもんがすべて無なくなるのは初はじめてのことです。

新型しんがたコロナウイルスの影響えいきょうで人々ひとびととの触れ合ふれあいが難むずかしくなる中なか、両りょう陛下へいかは、さまざまな分野ぶんやの専門せんもん家かや対応たいおうにあたる人ひとたちをお住すまいに招まねいて話はなしを聞きき、ことばをおくる形かたちで国民こくみんに心こころを寄よせ続つづけられています。

また、秋篠宮あきしののみやご夫妻ふさいもテレビ電話でんわを活用かつようして多おおくの専門せんもん家かから話はなしを聞きかれるなど、皇室こうしつの活動かつどうも模索もさくが続つづいています。

恒例こうれいの地方ちほう訪問ほうもん すべて無なくなるのは初はつ

全国ぜんこく植樹しょくじゅ祭さいや国体こくたいの開会かいかい式しきといった毎年まいとし恒例こうれいの行事ぎょうじへの出席しゅっせきに伴ともなう地方ちほう訪問ほうもんは、戦後せんご、象徴しょうちょう天皇てんのう制せいが定着ていちゃくしていく中なかで大おおきな役割やくわりを果はたしてきました。

こうした訪問ほうもんは、日本にっぽん国こく憲法けんぽうが施行しこうされ天皇てんのうが「象徴しょうちょう」となった昭和しょうわ22年ねん、昭和しょうわ天皇てんのうが出席しゅっせきして石川いしかわ県けんで開ひらかれた第だい2回かい国体こくたいにさかのぼります。

国体こくたいの開会かいかい式しきへの出席しゅっせきは、2年ねん後ごの第だい4回かい国体こくたいから昭和しょうわ天皇てんのうと香こう淳じゅん皇后こうごうがそろって出席しゅっせきする形かたちで定例ていれい化かし、翌よく昭和しょうわ25年ねんからは全国ぜんこく植樹しょくじゅ祭さいの前身ぜんしんとなる行事ぎょうじへの出席しゅっせきも始はじまりました。

昭和しょうわ天皇てんのうは、災害さいがいが起おきたり体調たいちょうがすぐれなかったりして訪問ほうもんを見合みあわせた場合ばあいを除のぞき、全国ぜんこく各地かくちで開ひらかれる行事ぎょうじに毎回まいかい欠かかさず出席しゅっせきしました。

平成へいせいに入はいってからは、植樹しょくじゅ祭さいと国体こくたいに加くわえ全国ぜんこく豊ゆたかな海うみづくり大会たいかいも天皇てんのうが臨のぞむ恒例こうれい行事ぎょうじに加くわわり、それに伴ともなう訪問ほうもんは「三さん大だい行幸ぎょうこう啓けい」と呼よばれるようになります。

こうした訪問ほうもんは、天皇てんのう皇后こうごうと国民こくみんが直接ちょくせつ触れ合ふれあう重要じゅうような機会きかいとなっていて、阪神はんしん・淡路あわじ大震災だいしんさいや東日本ひがしにっぽん大震災だいしんさいが起おきた年としにも行事ぎょうじの開催かいさいが中止ちゅうしされることはありませんでした。

さらに令りょう和わになって、天皇てんのう陛下へいかが皇太子こうたいし時代じだいから出席しゅっせきを重かさねられてきた国内こくない最大さいだいの文化ぶんかの祭典さいてん「国民こくみん文化ぶんか祭さい」も天皇てんのうが臨のぞむ恒例こうれい行事ぎょうじに加くわわり、去年きょねんは皇后こうごうさまとともに愛知あいち、秋田あきた、茨城いばらき、新潟にいがたの各かく県けんを訪問ほうもんされました。

ことしも全国ぜんこく植樹しょくじゅ祭さいで島根しまね県けんを、国体こくたいで鹿児島かごしま県けんを、全国ぜんこく豊ゆたかな海うみづくり大会たいかいで宮城みやぎ県けんを、国民こくみん文化ぶんか祭さいと全国ぜんこく障害しょうがい者しゃ芸術げいじゅつ・文化ぶんか祭さいで宮崎みやざき県けんを訪問ほうもんされる予定よていでしたが、新型しんがたコロナウイルスの感染かんせん拡大かくだいの影響えいきょうでいずれもことしの開催かいさいが見送みおくられることになりました。

戦後せんごの象徴しょうちょう天皇てんのう制せいのもとで天皇てんのうによる恒例こうれいの地方ちほう訪問ほうもんがすべて無なくなるのは初はじめてのことです。

専門せんもん家か「本当ほんとうに異例いれいなこと」

象徴しょうちょう天皇てんのう制せいを研究けんきゅうしている名古屋なごや大学だいがくの河西かさい秀哉ひでや准じゅん教授きょうじゅは、「戦後せんご巡幸じゅんこうという形かたちで天皇てんのうが全国ぜんこく各地かくちに行いって触ふれ合あうということが起おき、その中なかに国体こくたいや植樹しょくじゅ祭さいなどが組み込くみこまれていった。天皇てんのうが神様かみさまのような存在そんざいだった戦前せんぜんと違ちがって、『象徴しょうちょうとはこういうことなんだ』ということを国民こくみんがイメージできる機会きかいになった」と話はなしました。

そのうえで、「国民こくみんにとっても天皇てんのうにとっても、実際じっさいに会あうということが意味いみを持もったという歴史れきし的てきな流ながれがあって、その積み重つみかさねの中なかで今いまがある。地方ちほうへ出でかけ、人々ひとびとと会あって、ふれあい、話はなすことによって、国民こくみんからの尊敬そんけいや親したしみのような感覚かんかくが築きずかれ、象徴しょうちょう天皇てんのうというものがだんだん固かたまっていくとともに、国民こくみんも象徴しょうちょう天皇てんのうとはこういうものなんだということがわかってきた」と指摘してきしました。

さらに、「単たんに行事ぎょうじに出でるだけなく、その地域ちいきを見みて福祉ふくし施設しせつなどいろいろな所ところを訪問ほうもんすることが大事だいじで、そういう機会きかいが無なくなるというのは本当ほんとうに異例いれいなことだ。こうした状態じょうたいが続つづくことを考かんがえると、それにあわせたやり方やりかたも必要ひつようになってくるだろう」と話はなしました。