女性は「水は冷たく体が震え、死を覚悟したが、周りの励ましで生きる意思を持ち続けられた」と語りました。
熊本県人吉市下林町の菊池ヤス子さん(71)は、球磨川の注ぐ支流に近い場所にある平屋建ての自宅でひとり暮らしをしています。
今月4日の午前8時ごろ、居間のたたみが川からの水で浮き上がり、自宅のまわりも水で覆われているのに気付きました。
避難しようと玄関を出たところ、水は腰の辺りまで達していて動けなくなりました。水はみるみるうちに上昇し、必死で家のひさしを支える木の柱にしがみついたと言います。
水位はさらに上昇して2メートル以上になり、菊池さんは足もつかないまま、水から顔だけを出す状態になりました。
水の勢いに流されそうになりながらも、連絡手段を確保するため左手でスマートフォンを持ち、右手で柱につかまり続けました。
菊池さんは「あっという間に水が迫ってきた。水は冷たく体が震え、死を覚悟した」と当初の心境を話しました。
菊池さんが大声で助けを求めると、離れた場所にいた50代くらいの男性が、「頑張れ」とか「もう少しで救助が来るぞ」と励まし続けたと言います。
市内で毎日流れる正午を知らせるチャイムのあとも水は引かず、さらに30分ほどたったところで、ようやく救助隊のボートに救助されました。水につかってから4時間半がたっていました。
菊池さんは「数時間にわたる励ましのおかげで、生きる意思を持ち続けられました。本当に助かったことに感謝しています。何もかもなくしてしまいましたが、新たな気持ちで生きていきたいです」と語りました。
ひとり暮らしの菊池さんの自宅は泥だらけのままで、今も冷蔵庫や仏壇などが倒れた状態です。
菊池さんは「家の後片付けも、ひとりではままなりませんが、誰かに頼ったり、逆に誰かを助けてあげられたり、人とのつながりを大切にしていきたいです」と話していました。