東京を対象外としたことについて、赤羽大臣は、「ほかの道府県と比べて東京都は特に感染が拡大している状況であり、感染拡大の中心となっている。都内の観光関連事業者や都民からは大きな期待あったので断腸の思いだ」と述べました。
東京でのキャンペーンの開始時期については「引き続き感染状況を注視しつつ、感染症の専門家の意見や政府の全体方針などを踏まえ適切に検討していく」と述べました。
そのうえで赤羽大臣は、キャンペーンに参加する旅行や宿泊事業者には感染防止対策の徹底を求め、取り組みが不十分な場合には参加登録を取り消すとしました。
さらに旅行会社などに対し、「若者の団体旅行、高齢者の団体旅行、大人数で宴会を行う旅行は控えてもらうよう周知してもらいたい」と述べました。
一方、キャンペーンでの料金の割引を期待して旅行を予約した人がキャンセルした場合の対応について、赤羽大臣は「国として補償する考えはない」と述べました。
大分 別府温泉のホテル「関東方面からの集客望めず影響も」
全国有数の温泉地、大分県別府市の宿泊関係者からは期待の声が広がる一方で、東京発着の旅行が対象外になったことで関東方面からの集客が望めないとする不安の声も聞かれました。
全国有数の温泉地、別府市にあるホテル「両築別邸」は新型コロナウイルスの影響で5月末までのおよそ2か月間休業し、売り上げは去年の同じ時期と比べて9割以上落ち込みました。
ホテルでは宿泊客に安心して利用してもらおうと、旅館の入り口で検温を徹底しているほか、大浴場の混雑状況を部屋にあるテレビで把握できるシステムを新たに導入するなどして、客足は少しずつ戻ってきているということで、政府の消費喚起策「 Go Toトラベル」にも期待を寄せています。
一方で、このホテルでは東京からの宿泊者が全体の1割ほどいて、東京発着の旅行がキャンペーンの対象外になったことで関東方面からの集客は見込めないとしています。
両築別邸の緒方真美専務は「キャンペーンにありがたい気持ちはありますが、手放しで喜べない部分もあります。夏休みを迎えるにあたって関東方面からのお客様が望めないとなると影響は出てくると思います。ホテルとしてはお客様に安心と安全を提供できるような空間を作っていきたいです」と話していました。
愛媛 松山 カフェ経営者「東京からの客が多く ショック」
愛媛県松山市の観光名所の道後では今後、集客や土産の売り上げが回復するのか不安の声があがっています。
松山市の観光名所、「道後温泉本館」の周辺でも不安の声が多くあがり、8代続いているカフェを経営する70代の女性は「これまで東京からのお客さんが多かったのでショックです。お客さんが入らないと商売にならないので、どの地域から来ても大丈夫なように、消毒液を置くなど対策をとっています」と話していました。
菓子店を営む50代の男性は「県内のお客さんは増えたが、お土産は買って帰らない。東京方面から来られなければ関西や九州から来てもらいたい」と話していました。
一方、観光客のうち40代の男性は「東京だけ除外されるのはかわいそうだし、行く側も分かりにくいが、東京から観光客が来たら感染のリスクもある。私も出身は埼玉で、親に会いに行きたいが今は控えている」と話し、大阪からの夫婦は「コロナウイルスのため、2度訪問を延期し、3度目の正直です。せっかくの旅行で申し訳ない気持ちになるのも複雑です」と話していました。
軽井沢の観光関係者「しかたないが残念」
首都圏から多くの観光客が訪れる長野県軽井沢町の観光関係者などからは「しかたないが残念だ」といった声が聞かれました。
首都圏に近い避暑地として人気の軽井沢町には、年間840万人の観光客のおよそ半数が夏場に訪れます。
「Go Toトラベル」で東京発着の旅行が対象外とされたことについて、地元の軽井沢観光協会の土屋芳春会長は「感染の拡大を考えるとしかたないと思います。東京から訪れる観光客が多く、キャンペーンに期待していたので残念ですが、町としても安全対策をしっかりして観光客を迎えたいと思います」と話していました。
多くの飲食店や商店が並ぶ旧軽井沢銀座通りでタピオカドリンクの専門店を経営している男性は「東京の人たちには申し訳ないですが、今の状況を考えると不安もあります。安全を考えるとやむをえないと思います」と話していました。
箱根 集客など不安視する声も
神奈川県箱根町の土産物店などからは、集客などに影響が出ることを不安視する声が聞かれました。
箱根湯本駅前の商店街で、土産物店の店長の男性は「東京を中心とするお客さんが多いので、集客が望めなくなるのではないかと思います。千葉県や埼玉県などが除外されなかったのはありがたいですが、感染者の数が増えるとともに客足も遠のいていて、キャンペーンが始まることには複雑な心境です。店としてはお客様が箱根町に来て感染することがないよう、気を引き締めたいです」と話していました。
また、せんべい屋を営む女性は「今月からはお客様も増えてきた感覚があったやさきに東京が除外されたので、もうしばらくは、辛抱の時が続くのかと思います。飛まつ防止のカーテンなどの感染症対策を徹底して営業は続けていますが、毎日お店を開けるか閉めるかで悩んでいます」と話していました。
下関 唐戸市場「期待と不安」
山口県内有数の観光地、下関市の唐戸市場の販売店などからは、観光客増加への期待のほか、新型コロナウイルスの感染拡大を懸念する声も聞かれました。
このうち市場で、すしなどを販売する仲卸業者の社長は「たくさんの人が来ることはよいことですが、期待と不安が半々です。対策をしっかりして来ていただきたい」と複雑な心境を語りました。
また、別の仲卸業者の従業員は「外国人観光客が戻っていないので、売り上げは去年の半分にも届いていない。ちょっとでも、お客が増えればありがたいが、収束したわけではないので難しいところもある」と話していました。
一方、山口県が17日から販売を始めたプレミアム付き宿泊券については「観光業界が少しでも潤ってくれればいい」とか「感染者が出ていない地区の人には来ていただいて、気分転換してほしい」などと、好意的な声が聞かれました。
東京スカイツリーや周辺の店では
東京の観光地、東京スカイツリーや周辺の商店からは複雑な思いが聞かれました。
東京スカイツリーは、新型コロナウイルスの感染防止のため、3か月にわたって休業していましたが、入り口で検温を行ったり、小学生以上の来場者にはマスクの着用を呼びかけたりなどして、先月1日から営業を再開しています。
また、展望デッキでも入場者数を2割から3割程度に制限して、いわゆる「3密」を避けるとともに、窓が開けられないため、給気量を通常の倍にして15分から20分の間に展望台の空気がすべて入れ替えられるように対策をしています。
東京スカイツリータウン広報事務局の大和雅幸さんは「都内からの行き来が除外されたのは、感染者が増えている中でしかたのないことだと受け止めています。ただ、スカイツリーでは感染症対策をしっかり行っていますので都内の皆さんには、ぜひお越しいただきたい」と話していました。
また、東京スカイツリーの近くにある日本茶などを扱っている店でも、レジの前にビニールシートを設置したり、従業員がマスクをしたりして、感染症対策をして営業を続けています。
店主の小林宏行さんは「私たちみたいな商店はお客さんが来ないと成り立たないので、除外されて残念。毎日店の前を通っていた観光バスも1台も通らない状態で、海外からも国内からも来ない状況なので、たくさんお客さんがきてほしかった」と話していました。
豪雨被災の福岡・原鶴温泉では期待の声
記録的な豪雨で被災した福岡県朝倉市の温泉旅館からは期待の声が聞かれました。
福岡県朝倉市の原鶴温泉にある旅館「泰泉閣」は、新型コロナウイルスの影響による休業のあと、今月1日に再開しましたが、今回の豪雨で浸水被害に遭い、再び10日間の休業を余儀なくされました。
2度の休業で少なくとも8000人以上の宿泊が取りやめになったということで、林恭一郎社長は「合わせて2か月余りの休業期間を設けざるを得ず、雇用をどう確保していくかといった対応を迫られていたので、キャンペーンには大きな期待をしているし、非常にありがたい」と述べ、期待を寄せていました。
一方、政府が東京発着の旅行を対象外としたことについては、「原鶴温泉は福岡県内や九州域内からのお客様が中心で、東京からのお客様が多いわけではない」として、影響は大きくないという見通しを示しました。
福島 大内宿「東京発着の対象外は残念」
関東からの観光客が多い福島県内の観光地では、東京発着が対象外になったことを残念に受け止める一方で、感染が再び拡大していることへの警戒感も高まっています。
かやぶき屋根の町並みが残る福島県下郷町の大内宿は、観光客の7割以上が関東からで、その半分ほどが東京からだということです。
ことしの観光客は、緊急事態宣言が解除されたあとも例年の半分以下に落ち込んでいることから、地元では、今回のキャンペーンがにぎわいを取り戻すきっかけになると期待しています。
ただ、このところ首都圏などで感染者が再び増えているため、訪れる人に感染防止への協力を呼びかけています。
大内宿観光協会の佐藤久夫会長は「観光地としては喜ばしい政策だったので、東京を外すのは残念だという声があります。一方で、連日の報道では無症状の感染者も多いので、対策をしてはいますが、ここで感染が起きないか心配です。大内宿に来られる際はマスクを着用するなど感染防止に協力してほしいです」と話していました。
山形 鶴岡 クラゲで人気の水族館「入館規制で影響は限定的」
「クラゲの水族館」として人気を集める山形県鶴岡市の加茂水族館では、賛同する声や、やむを得ないという声などが聞かれました。
世界で最も多くの種類のクラゲを展示し、ギネス世界記録に認定されるなど「クラゲの水族館」として知られる鶴岡市の加茂水族館には、17日も県内外から大勢の観光客が訪れ、1時間当たりの入場者が240人ほどに制限される中、クラゲなどを鑑賞していました。
岩手県から訪れたという24歳の男性は「東北の中で移動するのは大丈夫だと思うが、全国一律でのキャンペーンは、もうちょっと待ったほうがよかったと思う」と話していました。
長野県から夫婦で訪れたという68歳の女性は「大都市との往来はまだ控えたほうがいいと思うので、東京を含まない今回の対応は仕方がないのではないか。東京にいる息子たちには、来られない分、自分が撮ったクラゲの写真を見せてあげたい」と話していました。
加茂水族館の奥泉和也館長は「水族館では入館規制をしているので、東京の人が来ても来なくても影響は限定的になると思うが、いろんな対策が必要になるので、手放しでは喜べない状況だ。それでも、訪れた人たちの笑顔が見られるよう、引き続き頑張りたい」と話していました。
栃木 日光 鬼怒川温泉のホテル 予約キャンセル 200件超
政府の消費喚起策のうち、旅行を対象とした「Go Toトラベル」で東京発着の旅行が対象外となったことから、栃木県日光市のホテルでは16日夜以降、予約のキャンセルが相次いでいて、政府の方針変更による影響が出ています。
日光市の鬼怒川温泉で130年余りの歴史があるホテル、『あさや』では、先月の営業再開後、予約が順調に増えていました。
しかし、「Go Toトラベル」で東京発着の旅行が対象外となった16日夜から17日朝にかけて、インターネットなどを通じておよそ120件の予約がキャンセルされたということです。
その後も、キャンセルは続き、昼すぎには200件を超え、このうち半分ほどは、今月中の予約だったということです。
このホテルでは、東京や埼玉県からの宿泊客が全体の4割を占めているということで、政府の突然の方針変更によって大きな影響を受けています。
『あさや』の阿久津正史 総支配人は「キャンペーンへの期待は大きく、東京の適用除外は悲しいです。対象となっている地域のお客様には安心安全を提供していくので、温泉や食事を楽しみに訪れていただきたい」と話していました。
「しかたないとは思うが…」山梨富士河口湖町 観光連盟
「Go Toトラベル」のスタートに向けて、JR山手線の全車両に中づり広告を掲載して東京からの観光客誘致のキャンペーンを展開する予定だった、富士山のふもとの山梨県富士河口湖町の観光連盟は「しかたないとは思うが、東京から来てくれないのが、いちばんつらい」と話しています。
富士河口湖町の観光連盟によりますと、新型コロナウイルスの影響で、加盟しているホテルや旅館の売り上げは、先月は去年より9割落ち込むなど深刻な打撃を受けています。
観光連盟は「Go Toキャンペーン」に向けて、町が独自に行っている観光施設などの割引サービスや、来月行われる納涼祭を紹介する広告を、今月20日からJR山手線の全車両に中づりで掲載する予定です。
また、すでに、都内でも販売されるスポーツ新聞の見開きページを使って全面広告を掲載していて、観光客誘致に力を入れてきました。
こうした中で「Go Toトラベル」の対象から東京を発着する旅行が外れたことについて、富士河口湖町観光連盟の山下茂代表理事は「国の政策はしかたがないとは思う。しかし、東京から訪れる人が最も多く使ってくれるお金も多いので、東京からも来てもらうことが誘致の前提だった。東京から来てくれないのがいちばんつらい」と話しています。
そのうえで「東京がだめなら、北海道から九州まで別の場所からの客を呼び込めるよう宣伝していきたい」と話していました。