トランプ大統領は党大会の会場に予告なしに現れ、各州の代表を前に1時間近く演説し、「今回の選挙は史上最も重要であり、民主党に勝利を奪われてはならない」と支持を訴えました。
トランプ大統領はその後も、ノースカロライナ州の農業関連の施設を視察して、繰り返し演説を行ったほか、夜には党大会のオンラインのイベントに登場し、新型コロナウイルス対策の前線で働く医療関係者などと対話をする様子が紹介されました。
トランプ大統領は4日間の党大会の期間中、毎日、何らかの形で登場する予定で、最終日の27日にはホワイトハウスから指名受諾演説を行います。
トランプ大統領は、民主党の候補者に指名されたバイデン前副大統領に全米の世論調査の支持率で一貫してリードされていて、“トランプ色”を前面に打ち出して選挙戦を盛り上げることで巻き返しをはかりたい考えです。
党大会は規模縮小
新型コロナウイルスの感染拡大を受けて野党・民主党が、党大会をほぼすべてオンラインで実施したのに対し、共和党は規模は縮小するものの一部は実際に参加する形式をとります。
党大会に出席する代議員については、参加者を全米の2550人のうち各州や自治領などから6人ずつの合わせて336人と1割あまりに制限します。
また、トランプ大統領は指名受諾演説をホワイトハウスで行うほか、有力政治家による演説も、首都ワシントンの会場などで行う予定で、異例の大会になります。
大会の開催地をめぐっては、当初、ノースカロライナ州の知事が新型コロナウイルスの感染防止対策を理由に規模の縮小を求めたため、トランプ大統領が反発し、いったんは、南部フロリダ州で指名受諾演説などを行うことになっていました。
しかし、その後、フロリダ州の感染状況が悪化したことからそれも取りやめました。
指名受諾演説をホワイトハウスで行うことには「政治利用だ」という批判も出ていますが、トランプ大統領は警備がしやすく、コストも抑えられると主張しています。
トランプ大統領の実績「経済政策」
トランプ大統領は就任から3年半を振り返り、「これまでの大統領にはできなかった多くの実績を上げている」とアピールしています。
法人税の税率や、所得税の最高税率を引き下げる大規模な減税を実施し、環境規制の緩和も進めた結果、新型コロナウイルスの感染が広がるまでは株価は最高値を更新し続け、失業率も3.5%と半世紀ぶりの低い水準になりました。
また、国内の雇用を守るためとしてTPP=環太平洋パートナーシップ協定から離脱したほか、地球温暖化対策の国際的枠組みの「パリ協定」からの離脱も通知。
NAFTA=北米自由貿易協定の見直しや、中国と第1段階の合意を結んで農産物の輸入拡大を約束させたほか、日本や韓国とも新たな貿易協定を結びました。
一方で、ことしに入って新型コロナウイルスの感染で経済が大きな打撃を受けると、総額300兆円にのぼる過去最大の経済対策を打ち出しましたが、失業率は高止まりし、失業者数は記録的な水準が続いています。
「移民対策」
看板政策である移民政策では、国防予算まで転用してメキシコとの国境に鉄の壁を築き、不法移民の取締りを強硬に推し進めました。
中米からの移民を減らすため、難民の申請要件を厳しくしたり、メキシコ政府に対して、事実上の制裁関税をちらつかせて不法移民の入国を防ぐ対策を取らせたりし、トランプ大統領は「治安の改善に成果があった」と主張しています。
「保守派判事の指名」
国内の社会問題について重要な判断を下す連邦最高裁判所の判事にゴーサッチ氏とカバノー氏という保守派の2人を指名し、最高裁の保守化を進めました。
下級の裁判所でも保守派の判事を相次いで指名し、トランプ大統領はみずからの政権下で指名した判事の数は「およそ300人にのぼる」としています。
「外交」
中国を巡っては人権問題や、香港への統制強化、それに次世代通信規格の5Gの問題をめぐり、制裁措置をとりながら圧力をかけ続けています。
これに中国は態度を硬化させ、米中の対立は激しさを増す一方ですが、先進国の一部には香港や5Gの問題をめぐり、同調する動きも出ています。
また、北朝鮮とはトップどうしが主導して3回に渡る首脳会談を行いました。非核化は一向に進んでいないものの、トランプ大統領は、日本の上空を弾道ミサイルが通過するような事はなくなり、緊張緩和につながったと主張しています。
さらに、中東ではイランの核合意から離脱した上、革命防衛隊のソレイマニ司令官を殺害し、イラン包囲網を強化しようとしています。そしてイスラエルを擁護する姿勢を強く打ち出し、エルサレムを首都と認定したのに続き、ことし1月には中東和平案を公表。
“イスラエル寄り”との批判を受けながらも、和平に取り組む姿勢を示し、アメリカ国内の保守派からは支持されています。
今月には、長年対立してきたイスラエルとUAE=アラブ首長国連邦の国交正常化の合意を仲介し、「歴史的な成果だ」と強調しています。
「軍備増強」
軍事面では、ロシアや中国を念頭に「低出力核」と呼ばれる威力を抑えた核弾頭を配備するなど、核戦力の強化を進め、核軍縮条約の1つだったINF=中距離核ミサイルの全廃条約は破棄しました。
また、去年12月には陸軍などと同格の宇宙軍を創設し、宇宙における軍事力の強化をはかる中国やロシアに対抗していく方針を示しました。
一方、同盟国に対しては、国防費の負担が少ないとして圧力をかけ、NATO=北大西洋条約機構の加盟国に国防費の増額を迫り、中でもドイツに対しては駐留するアメリカ軍を3分の2に減らす方針を発表しました。
さらに日本や韓国に対しても、アメリカ軍の駐留経費の負担を増やすよう求めて、韓国は去年、負担を大幅に引き上げました。
シリアでは過激派組織IS=イスラミックステートの指導者、バグダディ容疑者を軍事作戦の結果、死亡させたほか、シリア北部に展開していたアメリカ軍の撤退を決めました。
また、「アメリカ史上最も長い戦争」とも言われるアフガニスタンでの軍事作戦の終結を目指し、ことし2月、反政府武装勢力のタリバンとの和平合意に署名し、アメリカ軍の撤退を進めています。