午前10時37分55秒の打ち上げを予定し、ロケットの自動カウントダウンシーケンスも予定どおり開始したが、そのなかで第1段の機体システムが異常を検知し、固体ロケットブースター「SRB-3」(ロケットの両脇に取り付けられた補助ロケット)の着火信号を送出しなかったために、打ち上げを中止することになった。
ロケットの下部には、2基の「LEー9」エンジン(メインエンジン)があり、その上に、第1段の搭載機器類が並んでいる。 「LE-9」エンジンがリフトオフ(発射)の6秒前ぐらいに正常に立ち上がったことを確認した上で、リフトオフの直前に「SRB-3」の着火を行う。 今回起きた事象は、おそらく「LE-9」エンジンが正常に立ち上がったあとで、「SRB-3」が着火するまでの間に異常が検知されたということではないか。異常の検知をしたことで「SRB-3」に着火の信号を送出すべきだった機器が着火信号を送らなかったということだ。 いま原因の究明中なので、これ以上のことは現時点で分かっていない。
天候の関係で打ち上げを2日間延期したが、種子島には多くの方々が残って応援していただいていた。その中にはお子さんもいらっしゃるので「ごめんね」という気持ちだ。初めての打ち上げでは、やはりこういうこともあるのだなということを実感した。
まずは原因究明に全力をつくし、できるだけ早く打ち上げに臨みたい。
なんの異常が起きたのかは、現時点では特定できていないが、異常の検知をトリガーに補助ロケットの「SRB-3」への着火信号が送られなかった。
異常が発生した部位は特定できていないが、可能性としては、ロケットの第1段の制御用機器本体か、その他の制御機器。まだ分からないが、どちらかの可能性がある。また、異常の検知自体が誤検知だった可能性もある。
ロケットが打ち上がる際には、安全状態を確保するため、異常が検知されると自動的にエンジンが停止する仕組みになっている。 そういう意味では今回は、安全確保のシーケンスが正常に動作して安全に止まったと言えると思う。
失敗ということばをどう解釈するかは人によるとも思うが、ロケットというのは安全に止まるよう設計されており、その設計の範囲の中で止まっている。 設計の想定の中で自動的に止まったということ。 こういった事象は打ち上げの際には時々起こると思うが、ロケット開発の立場ではこうした事象を失敗とは呼んでいない。
100分の1秒単位でシステムが動作を続けていた中で、どのタイミングでなにが起きたのか、組み立てて考えながら原因を究明していく。 過去の例でみると、システムで不具合が起きた場合は、ある程度の究明はわりと短時間でできていた。今回もそうなることを期待している。
燃料の抜き取りは17日午後に行い、接続配管などを取り外すため、VABに戻すのは夜8時から9時ごろになるのではないか。 「LEー9」エンジンは、こうしたケースで打ち上げが中止された場合に、次も使えるよう想定して設計されている。システムから「止まる」というコマンドが送られて、そのとおりに止まっているため問題は無いと考えている。 点検は必要だが、異常がなければこのまま使えるのではないかと思っている。また、着火しなかった補助ロケットにもついても使えると思っている。
通常、ロケットを一度外に出してから組み立て棟に戻した場合、燃料を充填する前であれば、数日以内に打ち上げられる。燃料が入っていても、さらにもう少し日にちをもらえれば打ち上げられるというイメージだ。 まずは原因を究明し、どう対応するかが分かれば、具体的な打ち上げ日も見えてくると思う。
まずは今回の原因がどこにあるかはっきりさせ、皆さんにお伝えした上で、評価してもらいたい。
Q.「H3」打ち上げが中止となったことへの受け止めは?
Q.具体的にどういった不具合が起きたのか?
Q.どの部分で異常が起きた可能性があるのか?
Q.搭載していた衛星に影響は?
Q.トラブルで中止となったが、打ち上げの失敗ではないのか?
Q.原因究明のスケジュールは?
Q.ロケットの機体はこのあとどうする?
Q.次の打ち上げはいつになる?
Q.今回の打ち上げ中止は「H3」の信頼面に影響があるか?
会見者:JAXA「H3開発責任者」 岡田匡史プロジェクトマネージャ
冒頭発言要旨「何らかの異常を検知した」