20
世紀を
代表する
画家 パブロ・ピカソの
油彩画「
青い肩かけの
女」の
下に、
別の
人物を
描いたとみられる
描き
込みがあることがわかり、
所蔵する
愛知県美術館は「ピカソの
制作プロセスの
一端が
かいま見える
貴重な
発見だ」としています。
「青い肩かけの女」は1902年、ピカソが20歳の頃、いわゆる「青の時代」に描いた油彩画です。
この時代の作品は、下層から別の描き込みが見つかる事例が複数報告されていて、愛知県美術館は去年5月からアメリカの2つの美術館とともに、光の波長ごとに撮影ができる特殊なカメラを使って調査していました。
その結果、絵の下に別の人物を描いたとみられる描線があることが分かったということです。
見つかった描線は、人物が首を曲げてうつむいているように見え、これは「青の時代」のピカソが頻繁に描いたポーズとして知られています。
この時代のピカソは貧しかったことから、愛知県美術館によりますと、一度使ったキャンバスを再利用して、その上から「青い肩かけの女」を描いたと見られるということです。
また、見つかった人物像の背中にあたる輪郭線を利用するようにして「青い肩かけの女」を描いていることもわかり、愛知県美術館の副田一穂主任学芸員は「ピカソが当時どのように絵を描いていたかはつぶさに分かっているわけではなく、制作プロセスの一端がかいま見える貴重な発見だ」と話しています。
「青い肩かけの女」は来月21日から愛知県美術館で展示されます。
ピカソと「青い肩かけの女」
パブロ・ピカソは1881
年にスペイン
南部に
生まれ、
その後フランスで
活躍した20
世紀を
代表する
画家です。
造形の革命とも言える美術表現、「キュビスム」を提唱するなど、91歳で亡くなるまで絵画芸術に新たな地平を開きました。
今回調査が行われた「青い肩かけの女」は、ピカソが「キュビスム」を提唱する前の20歳の頃の作品で、深い青の空間を背にうつろな表情でたたずむ女性の姿を描いています。
この時期のピカソは、親友の自殺をきっかけに生と死、貧困といった主題に打ち込むようになり、青を基調としたその作品群から「青の時代」と呼ばれています。
「青い肩かけの女」は、ピカソが生涯みずからの手元に置いたあと、孫に受け継がれていましたが、当時の東海銀行がおよそ14億円で購入し、1992年の開館にあわせて愛知県美術館に寄贈されていました。
「青の時代」のピカソ作品では近年、その下層から別の描き込みが見つかる事例が複数報告されていて、愛知県美術館も2014年からさまざまな手法でこの絵の調査を進めていました。
今回の発見について、愛知県美術館の副田一穂主任学芸員は「ピカソは現在では『天才』や『大巨匠』としてわれわれから遠い存在のように感じてしまうが、彼がどのように筆を運んだか、その息遣いが今回の発見からは感じられ、ピカソに少し近づくような、新たなおもしろさがある」と話しています。