「多おおくの国くには怒おこっている」 米べい制裁せいさいにイラン大統領だいとうりょう

これを受うけてイランのロウハニ大統領だいとうりょうは５ご日にち、演説えんぜつし、「アメリカの制裁せいさいはイランの人々ひとびとや外国がいこく企業きぎょうに向むけられたものだ。多おおくの国くには制裁せいさいに怒おこっている」と述のべて、国際こくさい社会しゃかいの反対はんたいを押し切おしきって制裁せいさいが発動はつどうされたとして強つよく非難ひなんしました。

そのうえで「われわれは、この一方いっぽう的てきな制裁せいさいを名誉めいよを持もって破やぶり、原油げんゆの販売はんばいも続つづける。ヨーロッパやアジア各国かっこくはわれわれとともにある」と述のべて、制裁せいさいに対抗たいこうする考かんがえを強調きょうちょうしました。

イランは、アメリカの制裁せいさいに反対はんたいしているＥＵい-ゆ-＝ヨーロッパ連合れんごうに対にたいし、制裁せいさいの影響えいきょうを受うけない形かたちで取り引とりひきができる新あらたな決済けっさいシステムを導入どうにゅうするよう求もとめていて、アメリカの制裁せいさい下かでも各国かっこくと連携れんけいを深ふかめることで、原油げんゆ取り引とりひきなどの貿易ぼうえきを続つづけたい考かんがえです。

ただ、国くにの歳入さいにゅうの３さん割わり以上いじょうを占しめるイラン産さん原油げんゆの輸出ゆしゅつ量りょうは年内ねんないにさらに落ち込おちこむと予測よそくされ、すでに通貨つうか安やすや物価ぶっか高だかで国民こくみんの不満ふまんが高たかまる中なか、どこまで制裁せいさいの影響えいきょうを回避かいひできるかは不透明ふとうめいです。

イラン市民しみんからは懸念けねんの声こえ

アメリカによる今回こんかいの制裁せいさいの発動はつどうについて、イランの首都しゅとテヘランでは、市民しみんから先行さきゆきへの懸念けねんやトランプ大統領だいとうりょうを非難ひなんする声こえが聞きかれました。

このうち、60代だいの無職むしょくの男性だんせいは「トランプ大統領だいとうりょうの政策せいさくを受うけて、生活せいかつ費ひはこの３さんか月かげつで倍ばい以上いじょうに跳はねあがりました。きょうから、庶民しょみんの暮くらしは一層いっそう厳きびしくなるでしょう」と述のべ、先行さきゆきを不安ふあん視ししていました。

また30代だいの男性だんせい会社かいしゃ員いんは「トランプ大統領だいとうりょうは正気しょうきではない。言いったことをすぐに破やぶる。われわれの最高さいこう指導しどう者しゃが言いうように、彼かれは信用しんようできない」と述のべて、トランプ大統領だいとうりょうを強つよく非難ひなんしました。

一方いっぽう、10代だいの男子だんし学生がくせいは「アメリカと妥協だきょうする以外いがいに、方法ほうほうはありません。覇権はけん国こくの彼かれらにとって、われわれは何なにでもない存在そんざいですから」と述のべ、政府せいふにアメリカとの対話たいわを求もとめていました。

日本にっぽん政府せいふ 適用てきよう除外じょがいで今後こんごも交渉こうしょうへ

アメリカによるイランへの経済けいざい制裁せいさいをめぐって、日本にっぽん政府せいふには制裁せいさい発動はつどう後ごも適用てきようを除外じょがいし、イラン産さん原油げんゆの輸入ゆにゅうを一時いちじ的てきに認みとめる方針ほうしんが伝つたえられていて、一定いってい期間きかん後ごも適用てきよう除外じょがいとするよう、今後こんごも交渉こうしょうを続つづけていくことにしています。

外務省がいむしょうによりますと、日本にっぽんが去年きょねん輸入ゆにゅうした原油げんゆのうち、イラン産さんは5.5％でしたが、大手おおて石油せきゆ元売もとうり各社かくしゃは、制裁せいさいの発動はつどうを見越みこしてイランからの輸入ゆにゅうを停止ていししたり、別べつの国くにに切り替きりかえたりしていて、減少げんしょう傾向けいこうにあります。

しかし、日本にっぽん政府せいふとしては、エネルギーの調達ちょうたつ先さきの多様たよう化かは重要じゅうようだとして、アメリカ政府せいふに対にたいし、例外れいがい的てきにイラン産さん原油げんゆの輸入ゆにゅうを認みとめるよう求もとめてきました。

ことし６月ろくがつ以降いこう、事務じむレベルで４よん回かいにわたり協議きょうぎを行おこなったほか、９月くがつには河野こうの外務がいむ大臣だいじんがポンペイオ国務こくむ長官ちょうかんに直接ちょくせつ電話でんわするなど、交渉こうしょうを続つづけてきました。

今回こんかいの適用てきよう除外じょがいについて、外務省がいむしょう幹部かんぶは「交渉こうしょうの成果せいかだ」と評価ひょうかしています。

ただ、アメリカ国務省こくむしょうの高官こうかんが、適用てきよう除外じょがいは最長さいちょうで180日間にちかんになるという認識にんしきを示しめしていることから、外務省がいむしょう幹部かんぶは「一部いちぶの元売もとうり会社かいしゃがイラン産さんの輸入ゆにゅうを続つづけていて、引き続ひきつづき適用てきよう除外じょがいとならなければ死活しかつ問題もんだいとなる」としていて、日本にっぽん政府せいふとしては一定いってい期間きかん後ごも適用てきよう除外じょがいとするよう今後こんごも交渉こうしょうを続つづけていくことにしています。

東京とうきょう商品しょうひん取引とりひき所しょの原油げんゆ価格かかく値下ねさがり

アメリカ政府せいふがイランへの経済けいざい制裁せいさいの適用てきよう除外じょがいとして、８やっつの国くになどにイランからの原油げんゆの輸入ゆにゅうを一時いちじ的てきに認みとめる方針ほうしんを明あきらかにしたことを受うけ、東京とうきょう商品しょうひん取引とりひき所しょの原油げんゆの先物さきもの価格かかくは600円えん以上いじょう、値下ねさがりし、およそ２にか月かげつぶりの水準すいじゅんまで下落げらくしました。

５ご日にちの東京とうきょう商品しょうひん取引とりひき所しょは原油げんゆの先物さきものに売うり注文ちゅうもんが出でて、取り引とりひきの中心ちゅうしんとなる来年らいねん４月しがつものの先物さきもの価格かかくの終値おわりねは先週せんしゅう末まつよりも690円えん安やすい、１いちキロリットル当あたり４よん万まん9430円えんとなりました。

原油げんゆの先物さきもの価格かかくが終値おわりねで５ご万まん円えんを下回したまわるのはことし９月くがつ以来いらい、およそ２にか月かげつぶりです。

値下ねさがりの原因げんいんは、アメリカのトランプ政権せいけんが日本にっぽん時間じかんの５ご日にち午後ごご発動はつどうしたイランへの経済けいざい制裁せいさいの適用てきよう除外じょがいとして、８やっつの国くになどに対にたいしてイランからの原油げんゆの輸入ゆにゅうを一時いちじ的てきに認みとめる方針ほうしんを明あきらかにしたためです。

これによって当初とうしょの想定そうていよりも原油げんゆの供給きょうきゅう量りょうが減へらないのではないかという見方みかたが広ひろがり、制裁せいさいの影響えいきょうを見越みこしてすでに買かわれていた原油げんゆの先物さきものに売うり注文ちゅうもんが出でました。

市場しじょう関係かんけい者しゃは「適用てきよう除外じょがいが認みとめられたことで利益りえきを確保かくほする動うごきが出でたが、除外じょがいは一時いちじ的てきなため、当面とうめんの間ま、原油げんゆ価格かかくの高騰こうとうには注意ちゅういが必要ひつようだ」と話はなしています。

いちご農家のうかから不安ふあんの声こえ

アメリカが発動はつどうしたイラン産さん原油げんゆの禁輸きんゆなどの経済けいざい制裁せいさいを受うけて、農業のうぎょう用ようハウスで灯油とうゆを使用しようしている新潟にいがた県内けんないのいちご農家のうかからは不安ふあんの声こえが出でています。

新潟にいがた県けん新発田しばた市しのいちご農家のうか、長谷川はせがわ仙せん一いちさんは６ろく棟むねの農業のうぎょう用ようハウスでブランドいちごの「越後えちご姫ひめ」を栽培さいばいし、この時期じきはクリスマス向むけのわせ品種ひんしゅの収穫しゅうかくが始はじまっています。

今月こんげつ中旬ちゅうじゅんからハウスの室温しつおんを保たもつため灯油とうゆを燃料ねんりょうとするボイラーを使つかう予定よていで、例年れいねん、冬ふゆの間まは１いちか月かげつ40万まん円えんほどの燃料ねんりょう代だいがかかるということです。

ことしは原油げんゆ価格かかくの上昇じょうしょうを受うけて燃料ねんりょう代だいはすでに例年れいねんより２に割わりから３さん割わり程度ていど高たかくなっているということで、今回こんかいの経済けいざい制裁せいさいによってさらに価格かかくが上あがるのではないかと不安ふあんを募つのらせています。

長谷川はせがわさんは「これ以上いじょう、燃料ねんりょうが高たかくなると農家のうかとしては大変たいへんで、いちごの値段ねだんを上あげることもできないので苦くるしい」と話はなしています。

ヨーロッパ各国かっこくやＥＵい-ゆ-は制裁せいさいに反対はんたい

アメリカのトランプ政権せいけんによるイラン産さん原油げんゆの禁輸きんゆなどの経済けいざい制裁せいさいについて、核かく合意ごういに参加さんかするヨーロッパ各国かっこくやＥＵい-ゆ-＝ヨーロッパ連合れんごうは反対はんたいを表明ひょうめいしています。

ドイツとフランス、イギリス、それにＥＵい-ゆ-は、共同きょうどうで、制裁せいさいの発動はつどうに先立さきだって今月こんげつ２に日にち、「イラン核かく合意ごういはヨーロッパと中東ちゅうとう地域ちいき、さらに世界せかいの安全あんぜん保障ほしょうにとって重要じゅうようで、アメリカによる経済けいざい制裁せいさいは極きわめて遺憾いかんだ」とする声明せいめいを出だし、アメリカによる制裁せいさいを改あらためて批判ひはんしました。

ＥＵい-ゆ-は、制裁せいさいを回避かいひしてイランとの原油げんゆ取引とりひきを続つづけられるよう新あらたな決済けっさいシステムの構築こうちくを目指めざしていて、その概要がいようについて近ちかく発表はっぴょうすると見みられます。

中国ちゅうごく「単独たんどく制裁せいさいに反対はんたい」

アメリカのトランプ政権せいけんがイランに対にたいする経済けいざい制裁せいさいを発動はつどうしたことについて、中国ちゅうごく外務省がいむしょうの華はな春はる瑩報道ほうどう官かんは５ご日にちの記者きしゃ会見かいけんで「アメリカの決定けっていに対にたいし、遺憾いかんの意いを表ひょうする」と述のべました。

そして、核かくの不ふ拡散かくさんに有効ゆうこうな核かく合意ごういをイランは履行りこうしてきたと評価ひょうかしたうえで、「中国ちゅうごくは公正こうせいかつ客観きゃっかん的てきで責任せきにんある態度たいどを保たもち、イラン核かく合意ごういを維持いじするための努力どりょくを継続けいぞくするとともに、われわれの正当せいとうで合法ごうほう的てきな権益けんえきを断固だんことして守まもっていく」と強調きょうちょうしました。

また、イランの原油げんゆの輸入ゆにゅうを減へらすのかという質問しつもんに対にたいしては、「中国ちゅうごくは一貫いっかんして単独たんどく制裁せいさいに反対はんたいしている。中国ちゅうごくとイランが国際こくさい法ほうの枠組わくぐみの中なかで行おこなう正常せいじょうな協力きょうりょくは合法ごうほう的てきなものであり、尊重そんちょうされ、守まもられるべきだ」と述のべるにとどめました。

イスラエルは歓迎かんげい

イスラエルのネタニヤフ首相しゅしょうは５ご日にちまでにビデオ声明せいめいを出だし、アメリカのトランプ政権せいけんがイランに対にたいする経済けいざい制裁せいさいを発動はつどうしたことを歓迎かんげいする意向いこうを示しめしました。

この中なかでネタニヤフ首相しゅしょうは「私わたしはずっと、世界せかいを危険きけんにさらすテロ国家こっか、イランに対にたいして、経済けいざい制裁せいさいを完全かんぜんに復活ふっかつさせるよう呼よびかけてきた。制裁せいさいの影響えいきょうでイランの通貨つうかは下落げらく、経済けいざいは低迷ていめいして効果こうかはすでに出で始はじめている。歴史れきし的てきな決断けつだんをしてくれたトランプ大統領だいとうりょうに感謝かんしゃしたい」と述のべました。

専門せんもん家か「イラン経済けいざいに大おおきな打撃だげき」

アメリカによる今回こんかいの制裁せいさいについてイラン情勢じょうせいに詳くわしい慶應義塾けいおうぎじゅく大学だいがくの田中たなか浩一こういち郎ろう教授きょうじゅは「イランは外貨がいか獲得かくとくの６ろく割わりから７なな割わりを原油げんゆに頼たよっているうえ、金融きんゆう取引とりひきでも制裁せいさいを受うけるので貿易ぼうえきにも大おおきな障害しょうがいとなり、イラン経済けいざいに対にたいする打撃だげきは非常ひじょうに大おおきい」と指摘してきしました。

そのうえで、アメリカのトランプ政権せいけんの狙ねらいについて「短期たんき的てきにはイランが交渉こうしょうにつくことを待まっているし、中ちゅう長期ちょうき的てきには、我慢がまんを続つづけるイランを立たちゆかなくし、政権せいけんや体制たいせいの安定あんていに打撃だげきをあたえ、最終さいしゅう的てきには、体制たいせいの崩壊ほうかいを意図いとしている」と述のべました。

一方いっぽうで、イラン側がわの出方でかたについて田中たなか教授きょうじゅは「当面とうめんは挑発ちょうはつに乗のらず、ヨーロッパなど核かく合意ごういのほかの国くにと政治せいじ的てき、経済けいざい的てきな関係かんけいを維持いじしなんとか乗り切のりきろうとしている。そのためには核かく合意ごういの順守じゅんしゅが前提ぜんていになるので核かく合意ごういから離脱りだつするつもりはない」との見方みかたを示しめしました。

ただ、ロウハニ政権せいけんへの影響えいきょうについては「状況じょうきょうを甘あまんじて受うけるのかという批判ひはんはロウハニ政権せいけんに対にたいして当あてられるので、政権せいけんの安定あんてい性せいや難局なんきょくをどう乗り切のりきるのかという課題かだいはますます大おおきく、重おもくなっていく」と述のべ、イラン国内こくないで保守ほしゅ強硬きょうこう派はを中心ちゅうしんに制裁せいさいへの反発はんぱつがさらに高たかまるなか、ロウハニ政権せいけんは難むずかしい対応たいおうを迫せまられていると指摘してきしました。

また、田中たなか教授きょうじゅは、国際こくさい的てきな原油げんゆ価格かかくへの影響えいきょうについて「来年らいねん以降いこうも制裁せいさいが継続けいぞくし、原油げんゆの輸出ゆしゅつが削減さくげん傾向けいこうになるとしわ寄しわよせが発生はっせいし、品薄しなうす感かんから原油げんゆ価格かかくの高騰こうとうを引き起ひきおこすこともありうる」と指摘してきしました。

そのうえで、アメリカ政府せいふが８やっつの国くになどは一時いちじ的てきに原油げんゆの輸入ゆにゅうを認みとめる適用てきよう除外じょがいとし、日本にっぽんも含ふくまれるとされていることについては「180日にちの猶予ゆうよの間まに取り引とりひきができると言いっても、上限じょうげんが設定せっていされていて、猶予ゆうよ期間きかんの先さきは全まったく保証ほしょうされていない」として、楽観らっかん視しはできないとの考かんがえを示しめしました。