暴力ぼうりょくや過度かどな練習れんしゅうやめて！ ユニセフが子こどものスポーツで指針ししん

この中なかで、試合しあいでの勝利しょうりだけに価値かちがある勝利しょうり至上しじょう主義しゅぎは、必かならずしも子こどもの最善さいぜんの利益りえきにはつながらないことにスポーツ団体だんたいなどは留意りゅういするとしています。

そして、スポーツ医学いがくや科学かがくを踏ふまえ適切てきせつな資格しかくを持もつ人ひとが指導しどうし、指導しどう過程かていでの暴力ぼうりょくや過度かどなトレーニング、パワーハラスメントなどを撲滅ぼくめつすること、子こどもの権利けんりを守まもるためのルールの策定さくていや相談そうだん・通報つうほう窓口まどぐちの設置せっちを盛り込もりこんでいます。

さらに、企業きぎょうは子こどもの権利けんりに対にたいする取り組とりくみを考慮こうりょして団体だんたいへの支援しえんを判断はんだんするとしています。

スポーツ界かいではパワーハラスメントや暴力ぼうりょくなどの問題もんだいが相次あいつぎ、ユニセフは今月こんげつ20日にちに正式せいしきに発表はっぴょうし、日本にっぽんの競技きょうぎ団体だんたいや企業きぎょう、学校がっこうスポーツの団体だんたいに実現じつげんを呼よびかける方針ほうしんです。

専門せんもん家か「実行じっこうと普及ふきゅうが重要じゅうよう」

スポーツと子こどもの権利けんりに詳くわしい菅原すがわら哲朗てつろう弁護士べんごしは「多少たしょうの暴力ぼうりょくでも子こどもは伸のびるという体験たいけんをした指導しどう者しゃは、今いまの子こどもも平気へいきじゃないかと思おもいがちで、ブレーキがかかっていない。2020年ねんの東京とうきょうオリンピック・パラリンピックに向むけ、大会たいかい準備じゅんびは進すすめられているが、子こどもを守まもる体制たいせいはまだまだ追おいついていない」と話はなし、スポーツ指導しどうでの体罰たいばつや暴力ぼうりょく行為こういなどから子こどもを守まもる取り組とりくみは、不十分ふじゅうぶんだとしています。

そして「今回こんかいの原則げんそくはぜひ活用かつようしてもらいたい。ただ、あくまで大おおきな方針ほうしんであり、国くにやスポーツ団体だんたい、企業きぎょうなどが具体ぐたい的てきな活用かつよう方法ほうほうを考かんがえなければならない」として、スポーツ団体だんたいなどは単たんに賛同さんどうするだけでなく、具体ぐたい的てきに実行じっこうに移うつし、普及ふきゅうさせることが重要じゅうようだと指摘してきしています。

指導しどう法ほうを見直みなおしたチームでは

子こどもたちへのスポーツ指導しどうの見直みなおしは、各地かくちで始はじまっています。

このうち、大阪おおさか 堺さかい市しの小しょう中学生ちゅうがくせいの野球やきゅうチーム「堺さかいビッグボーイズ」は、中学生ちゅうがくせいのチームが昭和しょうわ60年ねんに設立せつりつされ、少年しょうねん野球やきゅうの全国ぜんこく大会たいかいで優勝ゆうしょう２に回かい、チーム出身しゅっしん者しゃにはプロ野球やきゅう選手せんしゅもいます。

チームの代表だいひょう、瀬野せの竜之介りゅうのすけさんによりますと、かつては目めの前まえの試合しあいでの勝利しょうりを最さい優先ゆうせんに、練習れんしゅうや試合しあいではことあるごとに選手せんしゅに口くちを出だし、エラーした時ときには「アホ！ボケ！と言いってボコボコにした」と振り返ふりかえるように、罵声ばせいや体罰たいばつがあったといいます。

過度かどな練習れんしゅうによるけがや意欲いよくの低下ていかも招まねき、高校こうこう以降いこうも野球やきゅうを続つづける選手せんしゅが少すくなくなる時期じきがあったということです。

選手せんしゅの精神せいしん的てき、身体しんたい的てき負担ふたんを減へらすため、およそ10年ねん前まえからアメリカや中南米ちゅうなんべいなどの指導しどう法ほうを取り入とりいれました。

選手せんしゅみずからが考かんがえプレーすることを最さい優先ゆうせんに、じっくり観察かんさつして最小さいしょう限げんのアドバイスにとどめ、過度かどな負担ふたんがかからないよう、朝あさから夕方ゆうがたまでだった土日どにちの１いち日にちの練習れんしゅうは５ご時間じかん短縮たんしゅくし、試合しあいでは投手とうしゅの投球とうきゅう数すうや変化球へんかきゅうを投なげる数かずに独自どくじの制限せいげんを設もうけました。

指導しどう法ほうを見直みなおしたあとも全国ぜんこく大会たいかいで準じゅん優勝ゆうしょうするなど、小中こなか学生がくせい、およそ150人にんが集あつまる強豪きょうごうチームです。

別べつの野球やきゅうチームから移うつってきた小学しょうがく６ろく年生ねんせいの保護ほご者しゃは「移うつる前まえのチームでは罵声ばせいがあり練習れんしゅう時間じかんも長ながかった。今いまは伸び伸のびのびと練習れんしゅうし野球やきゅうを好すきになっています」と話はなしていました。

堺さかいビッグボーイズの代表だいひょう、瀬野せのさんは「子こどものために勝かちたい、勝かたせてあげたいという指導しどう者しゃの気持きもちが行き過いきすぎると、逆ぎゃくに子こどものためにならない。負まけて悔くやしいという気持きもちは必要ひつようだが、子こどもに無理むりをさせないなかで、最大限さいだいげん、勝利しょうりを目指めざすべきだ。今いまのやり方やりかたが本当ほんとうに子こどもの人生じんせいに役立やくだっているか、立ち止たちどまって大人おとなが考かんがえられたらと思おもう」と話はなしていました。

ユニセフがなぜ？

ユニセフが今回こんかいのような原則げんそくを普及ふきゅうさせたいとする背景はいけいには、アメリカで相次あいついだ体操たいそう選手せんしゅへの暴力ぼうりょくなど、世界せかいのスポーツ界かいで選手せんしゅの権利けんりをめぐる問題もんだいに関心かんしんが高たかまっていることがあります。

日本にっぽんでは来年らいねんのラグビーワールドカップや、再さい来年らいねんの東京とうきょうオリンピック・パラリンピックを控ひかえる中なか、スポーツ指導しどう者しゃの在り方ありかたが問とわれる事態じたいも相次あいついでいます。

ユニセフは「子こどもたちにとって必要ひつようなスポーツが、逆ぎゃくに子こどもを苦くるしめる現状げんじょうが世界中せかいじゅうにある。そういった状況じょうきょうを根絶こんぜつしスポーツを楽たのしめる社会しゃかいをつくっていきたい」としていて、将来しょうらい的てきには「日本にっぽんを原点げんてんにグローバルな原則げんそくを策定さくていする予定よていだ」としています。

「暴言ぼうげん・罵声ばせい」16.1％ 「体罰たいばつ・暴力ぼうりょく」9.2％

全国ぜんこく大学だいがく体育たいいく連合れんごうは、おととし、大学だいがくや短大たんだいの学生がくせい5861人にんを対象たいしょうに、小学生しょうがくせいから大学生だいがくせいの時ときにスポーツで経験けいけんした体罰たいばつや暴力ぼうりょくなどについて意識いしき調査ちょうさを行おこないました。

複数ふくすう回答かいとうで聞きいた結果けっか、「暴言ぼうげん・罵声ばせい」が16.1％（884人にん）、「体罰たいばつ・暴力ぼうりょく」が9.2％（508人にん）、「いじめ」が7.2％（396人にん）、「ハラスメント」が3.2％（174人にん）となっています。

体罰たいばつや暴力ぼうりょくを誰だれから受うけたか複数ふくすう回答かいとうで聞きいたところ「中学生ちゅうがくせい時代じだいの顧問こもん」が55.1％、「小学生しょうがくせい時代じだいの指導しどう者しゃ」が50.6％、「高校こうこう時代じだいの顧問こもん」が46.5％となりました。

一方いっぽう、競技きょうぎ団体だんたいを統括とうかつする日本にっぽんスポーツ協会きょうかいによりますと、暴力ぼうりょく行為こういなどに関にかんする相談そうだんは、平成へいせい27年ねんが39件けん、平成へいせい28年ねんが51件けん、去年きょねんが97件けん、ことしは１月いちがつから９月くがつ19日にちまでの間まで88件けん、寄よせられています。

平成へいせい27年ねんからの相談そうだんでは、小学生しょうがくせいの被害ひがいに関にかんするものが最もっとも多おおいということです。